Photogenic
所沢店
技術で表現する家族の関係性
投稿日:2019/10/16
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PHOTO IS LIFESTUDIO TOKOROZAWA
Photographer:Satsuki kudo
coordinator:Yoko moriya
Write:Volvo
他にも写真分析を書こうと思っていた写真は多数ありましたが、この写真が
その順番に割り込むような形で私の目に入ってきました。
この写真を見た瞬間に私はこの写真について書かなければいけないと思い、今こうしてパソコンを打っています。
私は現在、所沢店の写真を管理しています。
そして、店舗の垣根を超えてカメラマン教育であったり、主題設定などいろんな面で
写真に関わっています。
そのような立場から見て、この写真は最も内容を書き出すべきであり、外に出すべき写真であると判断してここに挙げています。
それくらい、写真の奥の深さを説明するに最適で私も含め真似するべき写真だと思いましたので
この写真の解説を家族写真を撮るにあたっての手順と鉄則、そしてこの写真特有の深いいポイントの2点から解説していこうと思います。
●家族写真を撮るための手順と鉄則
5人家族における家族写真というのは、フォトグラファーが頭を悩ますひとつのコンテンツです。
なぜなら写真というのは写る被写体が多ければ多いほど決めなければいけないことが増えていくからです。
単純にポーズひとつをとってみても、1人と5人では5倍のポージングが必要になりますし、その5人の組み合わせ
配置、バランスなどを考えると6倍、7倍と力が必要になります。家族写真に本当のカメラマンの実力が表れると言っても過言ではありません。
最初にしなければいけないのは、頭の中にその家族の相関図を作成すること
家族写真を撮影する時にまずやらなければいけないことは、家族の関係性を確認することです。
家でのパワーバランス・・・例えばパパさんは撮影に対して積極的なのか、連れてこられた感じなのかとか
子供達身長差はどうなのか・・・お兄ちゃんがママの身長を超えているのではないか?膝に乗ったら親が隠れてしまうのではないか?とか
年齢差・・・上の二人は自立しているけれど、末っ子ちゃんはまだまだママに甘えたい時期だったり。
そういったことを知るためには、まず話をしなければいけません。
カメラマンもそうですが、とりわけコーディネーターが撮影前にどれだけその家族に入り込めているかも重要になります。
そしてカメラマンとの情報共有によって、カメラマンに客体が入り込み、家族写真のイメージを膨らまします。
とにもかくにもこれが成されていないと家族写真はバランスを崩します。
どんなにポーズを綺麗にしていてもです。
その理由は内容と形式の話で説明することができます。
形式というのは、内容によって決まります。
例えばご飯を食べる時、カレーを食べたいから平皿を選択しますしお味噌汁を飲みたいから茶碗を用意します。
食べ物を載せるお皿がお弁当箱しか無かったら、カレーを食べるわけにはいきませんね。
形式を先に決めると内容が制限されることになり、本来望むものと違うものになりがちです。
写真も同じです。
ポーズを先に決めていたら、その家族らしさは制限されます。
つまり家族写真のポーズや構図は、どんな家族かによって決めなくてはなりません。
よく陥りがちなのは「家族写真だからこの場所で撮る」ということだったり「5人家族だからこういうポーズ」という
決まりきった形式で撮影することです。
私たちはその家族を綺麗に残そうとしているのか、ただ写真を綺麗に残そうとしているのか・・・
この回答によって、撮影者のスタンスが決まり、行動と写真が変わるのです。
相関図ができたら、配置を決める
この写真の最大のポイントはこの家族の関係性が細かな技術と小さな判断の連続により増幅され、写真を見た人に伝わるという点です。
家族写真の配置をしていくにあたり、必ず軸になる人を決定します。
多くの場合それはパパさんになります。理由は体が大きいことと、一家の大黒柱だからです。
ところがこの写真はそうではなく、長男が椅子の上に座り最も目立つ場所に陣取っています。
私なんかが家族写真を撮るときは、最初に適当に椅子を置き「みんな好きなところに座っていいよ」といい、自由に座らせます。
理由は、それによって私たちの知らない家族の相関図が見える事があるからです。
こうした場合大抵子供たちが仕切ります。
そしてお父さんが1番高い椅子に誘われればお父さんはお父さんとしての立ち位置がある事が誰が見てもわかり
逆に椅子のない場所など面白いところに誘われれば、お父さんは家でイジられる距離の近い存在であるという事が分かります。
もちろんこの写真の時にどのように撮影したかは分かりませんが兄がこの位置にいるというのはひとつの存在の現れであり
椅子の上にいる事で、未来の大黒柱であることと高くともまだ子供である事の両面が見えるような気がします。
家族の中心的存在であるのかもしれないとも思わせてくれます。
甘えたい年頃の末っ子ちゃんはママさんにぴったりくっつける位置に、ママさんの椅子が一段上なのも
家族を仕切っているのはきっとママさんなのかなと想像させてくれる位置関係と表情です。
家族写真の基本中の基本。全体像は三角形に
家族をどのように配置しようとも、これだけは見逃してはいけない写真のルールです。
これは誰でも知ってることではありますし、大体はこのような形にしようと真ん中の頂点を作ろうとします。
しかし本当に難しいのは頂点を作ることではなく、底辺をいかに平らにするかです。
ここを平らにしないと、どんなに頂点を作ってもそれは三角形ではなく四角形です。
底辺を平にするために必要なことを技術的に言うと
・カメラマンは水平垂直に構える事
・家族全員が、真横に並ぶ事
といったものになると思います。
●この写真の深イイポイント1 ママの足をあえてキツいくらい引いている
これをしていなかったら恐らくこの記事は書いていなかったであろう大きなポイントです。
そうすることで写真が4倍良くなった印象です。
足を引くことによって得られた効果は4つあります。
ひとつは底辺が平らになること。
もうひとつはママさんの足全体がが小さく写ること。もし足を引いていなければ
当然底辺が平らにならずに家族写真のバランスが崩れるのですが、それと同時に
他の人よりママさんの足だけが前に出るため、足が強調され大きく写ってしまうところを
きっちり引くことによって足を小さく見せる効果も併せて発揮しています。
3つ目は、パパさんより一段上に座りながら大きく映らず、パパさんが尊重されている点です。
家族写真の基本的な考え方は「男性は大きく、女性は小さく」です。
なので基本的にはパパさんが一番大きく見えるように配置するのですが、この写真では一番右端で地面に座っています。
いっけんすると小さく写るのでは?と思いますが、実際見てみるとそうは見えません。
理由は色々あり、後述するものもありますが、理由の一つはママさんが足を引いていることによって
ママさんの写る面積が減り、色の濃さも合間ってパパさんの方が印象が強くなるためです。
最後は、かかとがあがってることで足が浮き、膝で体が隠れて体が小さく見える点です。
ママさんの足を引くというちょっとした指示ですが、これだけで圧倒的にに写真の完成度が変わるというのを
この写真を通じて感じることができました。
●この写真の深い所2 直立な人がおらず、全員に細かな指示が行き渡っている
その昔、リー社長がサークルでこんなことを話していました。
「人がバランスを崩している時、最も人らしく写真に写る」
人が直立不動で過ごしている姿はあまり見かけません。
横断歩道で待ってる時も、駅のホームで待ってる時も、真っ直ぐ立ってる人はいません。
面接を受けてる時ぐらいでしょうか笑
ポートレートにおいて、ポーズを指示するというのは、バランスを崩すと言うこととほぼ同義語です。
左の末っ子ちゃんはあえてバランスの悪い椅子に立つことにより、全体的な三角形の維持と
自然とママに寄りかからざるを得ない状況になり、ママの肩に腕を乗せることで、ママの右半身を隠しこれもパパより小さく見せる効果を出しています。
ママさんは先ほど書いたように足をギリギリまで引くことと、頭を少しだけ中に傾ける事でより小さく三角形の頂点に向かってポーズをとっています
お兄ちゃんは文字通り三角形の頂点となるように椅子に高い座っています。
体型や性格、あえてお兄ちゃんを真ん中で一番高いところに置くことで撮影に積極性をもってもらう意味を込めていたりすることもあります。
これがもし椅子ではなくただ立っているだけだったら、バランスは崩れたでしょう。
なぜなら彼はまだ細い為、立っただけでは高さは維持できても幅がママより細く、写真の軸がママに変わってしまいママが大きく見えてしまう恐れがあります。
高い椅子に座り足を高い位置で広げることで彼が大きくなり、バランスを保つ意味があります。
当然彼も首を少し傾げているのですが、なぜ妹側に傾けているのかにも理由があります。
これも同様に比重の問題です。
もしママのほうに傾げていたら、三角形としては綺麗だったかもしれませんが
妹よりママの方が当然大きいので、三角形の重心が左に流れ結果的にママを大きく見せてしまう恐れがある為です。
妹ちゃんはシンプルに場所的に中くらいの椅子に座り、兄の足に寄りかかっています。
寄りかかるだけで自然と真ん中に寄るので、それだけで大丈夫です。
●深イイポイント3 パパさんのポジションが家族の相関図を示している
パパさんをあえてこの場所にした事や、あぐらを選択したことは実はひとつのポイントがあったのではないかと思っています。
それは、パパさんのズボンの色です。
青を基調とした家族写真にありながら、パパさんのズボンはとりわけ色が濃い為目立ちます。
仮にパパさんが真ん中で立っていたとすると、色の濃さが目立ちズボンに目が行きがちになってしまうのではないかと思います。
それをあえて1番右であぐらにする事で面積を減らし、右から左へ青のグラデーションを作ったのではないかと思っています。
また、色の濃いズボンを履いていることにより、ハジであぐらをかいていても目立つ存在となれる事でパパとしての存在感も維持し
ママさんが一段上に座っていても濃さのバランスでパパさんの方が強めの印象になれるのではないかと思います。
あとは、ワイシャツを着ているパパさんにカジュアルさを出すために手のポーズを指示し、真ん中に寄り一体感を見せています。
私はこのご家族とはお話しできませんでしたが、パパさんがこの位置に写っていて違和感を感じないのは、この家族にとって
パパさんがどれだけ身近で重要な存在であるかの表れであり、家族を支えている存在なのだなと思わせてくれます。
●深イイポイント4 みんなの笑顔がそっくり!!
いろんなごたくを並べましたが、これが一番大切だったりします。
家族写真で陥りがちなのが「笑えば崩れ、直せば笑わず」というジレンマです。
「ポーズ崩れちゃったけど、、笑ってるからとっちゃえ!!」という経験、ありますよね。。私もあります。
全員が笑顔でポーズと形を維持しながら写真に写るためには撮影者二人の「当たり前をしっかりとできる」技術が必要です。
特別な能力じゃなくていいんです。それさえしっかりとやれば写真は良くなり、家族は喜んでくれます。
この写真という結果物を作成するに至るには、やはり最初に書いた家族の相関図を作る事。
家族ひとりひとりの立ち位置を規定する事、そして色や形、目の前に広がる何千ものパーツを
家族に合わせて組み立てる作業をし、ここまで作り上げる観察力とバランスを保つ技術が必要です。
撮影という短い時間にここまで深く入り込む姿に私は撮影者へ感服するばかりです。
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