Photogenic
所沢店
感じる道程
投稿日:2017/6/29
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photo by satsuki
cordi by yoko
彼女は緊張していたように思う。
彼女だけではなく、彼女と一緒にいたご家族も緊張していたのだろうと思う。
撮影前にお化粧直しをする彼女を見ながら「ああ、私にもこんな時期があったのだな」なんて思いながら私はその緊張を感じていた。
日々撮影に入る中で私は「その子らしさ」とはなんだろうと度々思う。
それは創り出すものなのか、感じ取るものなのか。
未熟な私にはまだわからないが、こと振袖撮影に関しては、「着物」がその子らしさを表している要素の一つではないかと考えている。
この時代、振袖といっても本当に様々である。
色も昔より増えた。柄も新しいものがたくさんある。
そのたくさんの振袖の中でも、写真館に身を置いていた私の主観ではあるが、やはりピンクや赤などの色を選ぶ子が多いのは気のせいではない。
しかし彼女は違った。
黒に近い紺色。大きめの花があしらってあって、その花は白や金で囲まれている。
そして帯も黒。だが金色の面積も広くまったくいやらしさもない。むしろ紺色の着物を明るく演出している。
「素敵な着物!でも、珍しいな」というのが第一印象。彼女にそれを伝え「友達はピンクとか選んでない?」と聞くと、やはりそうだという。
私が彼女くらいの頃は周りの目を気にしてなるべく人と同じようなものを着たり持ったりしたものだが、彼女は違った。
当時の私に比べて、彼女はきっと「自分らしさ」というものをわかっていたのだろう。
何よりその振袖は彼女に非常によく似合っていた。
撮影が始まると彼女はご家族や私たちの問いかけや呼びかけに笑顔で応えてくれた。
最初はまだ緊張が残っている笑顔、その時々で見せてくれるまだあどけない笑顔。
少女が大人になっていく過程を見ているようで、さながら彼女のドキュメンタリーを見ているような気分になる。
この1枚がシャッターにおさまったのは撮影の中盤だった。
一見着物を写すには難しく思える洋風な部屋。砂の中に入るよう促されると彼女はゆっくりと歩き出した。
表情の見えない後ろ姿。
ピアノに伸びる細い指。
それを見つめているであろう彼女の視線。
この1枚には、彼女の歩いてきた今までの道程が写し出されているように思えた。
彼女は今笑っているのだろうか。
それともただ静かに視線で指をなぞっているのだろうか。
それは彼女にしかわからない。が、この姿勢、背中からは、確かに彼女らしさを感じた。
なぜこうも後ろ姿が印象を濃く魅せるのか?ひとつは光の作用があるだろう。
彼女の正面とサイドから入る光。これが彼女の紺色の着物と黒と金の帯の輪郭を引き立たせている。直接当たっていないからこそ着物の柄も際立つのだろう。
それでいて光はこの空間に広く回っている。砂を含め白を基調とした部屋だからこそ広く光が回るのだ。
そして、やはり、だからこそ、彼女の後ろ姿が印象付けられる。
よく「男は背中で語る」なんて言うが、「女だって背中で語るんだ!」と私は今声を大にして言いたい。
実は、この写真以外にも私が彼女らしさを感じた写真があった。
家族写真である。
カメラや私たちに向ける笑みとはまた違う印象が確かにそこにはあった。
とにかく可愛らしいのである。はにかむように家族と目を合わせて笑いあう。それは嫉妬するほど暖かな時間、空間だった。
後に聞くと、彼女には弟さんがいるらしく、この日は部活で来れなかったそうだ。
つまり、私はまだ彼女の一部を垣間見ただけに過ぎないということ。
まだまだ、もっと、彼女のことを知りたいと思った。
彼女のこと、彼女の家族のこと、彼女のこれからのこと、写真というツールを通して知ることができたらと思った。
今度は、ぜひ弟さんと一緒に、また家族皆様でいらしてくださいね。
お母様も、またぜひ訪問着を着ていらしてください。
皆様とまたお会いできる日を楽しみにしています。
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