Photogenic
所沢店
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写真が写すもの
投稿日:2017/5/20
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Photo by HIRO
Coordinated by Yoko Moriya
小さなかわいいあなたの手。
それを包む大きく優しい母の愛。
今はまだ小さなその手も、いつかは大きくなり、
誰かを優しく包み込むのでしょう。
今はただ無邪気なあなたでいればいい、
その大きな愛の中に。
写真は何を写すのか?
これは写真に携わる者であるならば必ず考える永遠のテーマみたいなものでしょう。
絵の具などを使い、誰かの想像によって作られる絵画などの芸術とは違い、
写真はカメラを通してそこに写るもののそのままの姿が残されます。
そのままの姿が写し出されるからこそ、そこに写るものがあるのでしょう。
それが写真の持つ一つの大きな魅力だと言えます。
学生の頃に友達と撮った何気ない写真。
それはいつでも僕をあの日、友達とはしゃいで遊んだ時間へと連れて行ってくれます。
あの時感じた想い。
写真の中にその想いが詰まっていて、それを時間を超えて届けてくれる。
そのままの姿が残る写真だからこそ、その時の情景が浮かび、その時の想いが呼び起こされる。
いつも見ているものをそのまま残すことができるからこそ、
そこに想いを写真に残すことができるのでしょう。
写真は何を写すのか?
その一つの答えは「想い」であると言えるでしょう。
そんな想いを写し出す写真。
それはその写真に写っている人の想いだけでなく、
そこに込められた周りの人の想いも写し出すものです。
今回の写真は僕にそんなことを教えてくれる写真となりました。
「手と足の大きさがわかるような写真を1枚ずつ撮ってもらえますか?」
撮影も終わりに近づいた時のママさんの一言からこの写真は生まれました。
その一言から感じたのは、ママさんのこの子に対する深い愛情でした。
手の大きさを残しておきたいというのはお願いされることもあるので、
それほど特別なことではないのですが、そこから深い愛情を感じたのには理由があります。
この被写体の女の子はプリンセスが大好きな無邪気な可愛らしい女の子でした。
撮影の3パターンの衣装は全てお持ち込み。
その中の2つはこの子が大好きなプリンセスのキラキラなドレスでした。
「本当にプリンセスが大好きなんですね」なんてママさんと笑いながら話していると、
「本当は可愛いオシャレな衣装とかも着せたいけど、もう少し大きくなったらこういうのも着なくなっちゃうし、今のこの子が大好きなものを残しておいてあげたいんです」
と話してくれたのです。
本当は女の子として美しく残してもあげたいけど、それよりも等身大のこの子をそのまま残してあげたいママさんの愛情がすごく伝わってきました。
そして撮影の最後にも今のこの子の姿を残したいと、手足のカットをお願いされ、
「本当に今のありのままのこの子を愛していて、それを残してあげたいんだな」と無条件の深い愛情を実感させられました。
ママさんの想いを写真で残そう!
そう想い、手のカットに臨みました。
ただ何も考えずに手だけを写すのであればフォトスタジオで撮る必要などありません。
手を記録するだけであればiPhoneでママさんが撮影するので十分でしょう。
わざわざライフスタジオで写真を撮るということは、そこに付加価値を付与できなれば意味がありません。
それがカメラマンに与えられた使命です。
どうしたら価値をさらに付与できるのか、今回の写真の場合そのポイントは
再構築とストーリー性
の2つでした。
【再構築】
最近所沢店で写真の話をする際によく耳にするワードがあります。
それが再構築です。
見慣れたものを見慣れたように見ずに、その被写体に合わせて写真を構成する。
写真大辞典では観察という内容で取り上げられていますが、この再構築というのは写真に非常に大きな可能性を与えてくれます。
冒頭で「そのままの姿が写るからこそ想いを残すことができる」と書きましたが、
再構築を撮影者が行うことで、身近なそのままの姿だったからこそ残った想いの域を脱し、
さらにもっとたくさんの想いが詰め込まれ、そしてそこにストーリーが生まれます。
今回の写真でいえば、見慣れた手をアップで写すという記録的な役割から抜け出し、
ママさんのありのままのその子を残してあげたい気持ちと、
女の子らしく美しく残してあげたいという気持ちを表現として構築することでした。
【ストーリー性】
今回の写真は顔が写らない抽象的な写真です。
ワンポイントの写真主題で抽象化に取り組んだ時に所沢店では、
「前後の動きや、写っていない顔の表情が想像できるストーリー性のある写真」
を抽象化のポイントと考え行ってきました。
ただのイメージ写真になっては意味がなく、
その抽象化している構成要素がその被写体そのものを語る物語のようにならなければなりません。
ストーリー性が生まれることにより、その被写体が持つ雰囲気が写真に滲み出て、
そしてそこに想いが表現されるような写真になっていきます。
今回の抽象化の写真ではそのストーリー性を生み出す必要がありました。
【構成要素】
まずは、プリンセスに憧れる女の子の気持ちを表現するドレスの絨毯。
写真を縦の構図にすることによりドレスの余白が大きくなりドレスに包み込まれるような表現になっています。
それはまるでママの愛情に優しく包まれているように。
小さな手に持つのは3歳の女の子にはおませな香水瓶。
「今日は私もお姫様みたいに綺麗になるわ」なんて言いながらお出かけの準備をする、彼女の楽しそうな表情を連想させてくれます。
女性を象徴する香水瓶には、
本当はキャラクターのドレスでなく女の子として美しく残してあげたいママの想いも込めて。
コーディネーターのようちゃんが準備してくれた、
首から下げた花のネックレスも彼女の女の子な魅力を引き出すのに一役かってくれています。
光は逆光を利用し、前ボケも入れ幻想的な表現に。
まるで夢の中、心躍らせながら王子様が待つ舞踏会に向かう準備をしているように。
そのふんわりとした全体の優しい雰囲気は、3歳の女の子らしい丸みを帯びた手の曲線を表現するのを助けてくれています。
そして、何よりの構成要素は彼女に向けられたママの愛情だと思います。
この写真を撮ることになった理由はこの子のありのままを愛するママの想いです。
決して目には見えないですが、今回はあえてこの写真の一番の構成要素と書かせていただきます。
いい写真とはその被写体がその写真に表れている写真だといいます。
被写体が表れてる写真というのは、もしかしたらその被写体自体だけでなく、
その被写体を見つめる想いが表れることも、被写体が表れている写真になるのかもしれません。
そんなことを気づかせてくれる写真でした。
いつかこの子が大人になった時、
また同じように香水の瓶を持ってもらって撮影をしてみたい。
その時はきっと丸っこかった指はすらっと伸びて、香水瓶も小さく見えるんでしょうね。
いつかこの子のそんな写真を撮れる日を楽しみにしながら。
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