あなたの性格は？と問われると、ネガティブよりかなと答えます。
ネガティブと答えると明るくなれよ！と声を掛けられます。恐らく根暗という意味と混同して使われることが多いからでしょう。
しかしどんなにネガティブな人の中にも必ずポジティブな要素は存在します。
それはまるで光と影のような関係で、お互いに持ちつ持たれつの要素であることは間違いありません。
影がなければ光の存在が危うく、光がなければ影の存在が危ういのです。
私の性質はネガティブですから、おそらくよりポジティブに敏感でありながら、自分のポジティブなポイントを明確に認識していると思っています。
だからこそ私は常々ポジティブを撮影したいと口にしているのだと思います。
自分の憧れであり敏感だからです。
 
ポートレートというものは被写体を映し出している物です。
自分が被写体ならば、自分が自分の写っている写真を見ること、それは自分自身を客観視して、自分自身を認識できるものでもあります。
自分自身の写真を見たときに感じることは、老けたなとか可愛いとか太ったとか目に見える要素が真っ先に情報として入ってきます。
でも幼少期のアルバムを見返してみると、見た目の話は５分程度で終わり、「あの頃はこうだった」、「こんなエピソードがあったよね」と思い出話に花が咲きます。
写真には見える物の記録の側面と、目に見えない思い出などの記録の２つの側面を持っている面白い媒体になります。
つまりこの写真で言う、少年の見ためと、目に見えないこの少年の想像性が見えてくるはずです。
それはこの写真を見て感じた感情であり、深読みしようとする方の思考だと思います。
 
カメラマンは撮影に対する意図があるからこそカメラマンであれる理由です。
そしてその意図と写真の一致をさせる技術がなくては良いカメラマンとは言えません。
私はポジティブを撮りたいと思っているカメラマンです。ポジティブの表現方法は数多くありますが、私は光は暗ければ暗いほど存在感が増すものであると考え、あえて暗めな印象の設定に変えました。
ではこれまで話してきたポジティブはどこに宿っているのか。
それは彼の目です。
目を最大のポイントとして演出するための、この構図にしました。
被写体の彼から発される情報はたくさんあります。例えば立っているだけで子供という点でポジティブを感じますし、元気よく受け応えてくれる言動すべてが情報として発信されます。
男の子特有のふざけ方はいかにもポジティブさを感じますが、普段なら見逃しがちないわゆる普通の表情の瞬間にポジティブを感じたのです。
まずカメラマンは多くの要素の分析と整理を行います、インテリア、光、状況の把握をすると同時に、被写体である彼の情報も分析と整理を行わなくてはなりません。
この写真は来店時に出会った時には撮ろうと思っていないなく、弟が居る兄の自覚を撮影を進めながら感じたからです。
撮影場所の状況を把握するように、目に見えない彼を把握する事、自分の抱くイメージを壊す情報をキャッチしたときに、他の案をもって撮影を臨機応変に行わなくてはなりません。これは哲学用語でいうと否定の否定と言います。
良い意味で自分のイメージを壊さなくてはならないのです。
目の強さをより強固なものにするために、一枚の写真の中に陰影差が必要でした。
よって光源に彼を寄せ顔にだけ光が当たる様にします。すると多くの部分がアンダー奈印象を持つ中で、表情だけに全てを詰める事が可能になります。
そして構図、陰影差が必ず必要なためあえてクローズアップではなく、顔から体のラインを対角線に配置し、目尻を切らない様にぎりぎりでフレーミングをしました。
そして一番大切な意味のある瞳、つまりは彼に対しての動機付与は大きく説明はありません。彼自身の素直な感情が必要でしたから。
このように多くの情報を瞬時に把握と整理を行い、瞬時に判断を下し、結果物を生産するのがカメラマンです。
 
数日後パパさんからメールが届きました。
息子の成長と合わせ静と動が分かる写真が撮れて感激しました。
そのような内容だったと思います。子供らしさは動にあるような認識は一般的にありますが、静がないと動が成立しません。
すると静から見える、心の動がある気がしませんか？