Photogenic
所沢店
For you
投稿日:2020/10/19
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Photo by Aimi. Codi by Rempei.
前回の来店で確か、今度はドレス着ようね、なんて話したのを覚えています。
その時私はデビューして2週間のコーディネーターでした。
彼女は身長も伸びて、弟思いの優しい女の子なのは変わらずでしたが、一層お姉さんらしくなっていました。
疲れを感じるはずの着物撮影でも、笑顔で最後までこなして、心配する私たちを他所に、それ以上に楽しそうにしてくれました。我慢強くて、たくましくて、とても可愛い女の子。
以前より成長した姿で、以前の楽しい記憶を辿りながら、期待に満ちた瞳で私たちを見つめる姿に、奮い立たない人はいないでしょう。
着付け中も、笑顔を絶やさずに鏡にうつる自分を見ている彼女。
そんな彼女のための空間で、紛れも無い彼女自身がリラックスしてくれていました。
hanaのインテリアで引き写真を撮って寄って、ゆったりとしたカーディガンを脱いで花冠とドレス姿になった彼女をどこで撮ろうか、と思った時に、直感的にここだと思いました。
日中はもちろん、できる限りは自然光も取り込んで写真を撮るのを個人的に好んでいます。大体のカメラマンさんはそうだと思いますが。
この日は昼から突然の雨。最近の気紛れな天気にきっといろんな人が傘があったりなかったり、洗濯物干しっぱなしだったりしてどったんばったんしているんじゃないかと思います。両方とも最近の私ですが。
季節は秋をすっ飛ばしてもはや冬。雨もあってすっかり外は暗くなりつつありました。
最初はこの横の窓際で撮ろうかと思って、邪魔になる反対側のライトボックスの電気を消した時、真っ先にこの場所が目に入りました。
場所を案内して準備してもらっている間に標準レンズから望遠レンズにすぐに付け替えて、気がつくとスッとこの場所でカメラを構えていました。
今思い出しても不思議なくらいスッと体が動いていました。
ちょっと猫背になっちゃう彼女に、ほんのちょびっと声をかけて、本読んでいいよ、と伝えると、本の中身が紙ではなく鏡になっていてふふっと笑いを溢す向こうの彼女。
ふわりとウェーブのかかる艶やかな黒髪と胸元のリボン。
薄紫の花冠と手前に置かれたピンクのブーケと円形のオブジェの色味。彼女と私のちょうど真ん中あたりにある青色のドライフラワーは、印象が濃くなりすぎないように右端をビンの反射で隠してながらも、奥の壁の水色と、彼女の黒髪、手前のブルーの棚と調和します。
写真において色味というのはとても魅力的なスパイスになると考えています。
この写真は「くすんだようなシャーベットカラー」の色感図が思い浮かびました。
色味というのは不思議で、自然と統一感を感じて、一枚の絵としての完成度をグッと引き上げてくれます。
手前に置かれた花と瓶とオブジェ、棚の間から隠すように構えたカメラ。
この空間が物語の中の、何気なくて、でも目が離せない、そんな一枚絵になるように。
目線は本の中へ。
そうすることで私の、カメラマンの干渉があたかも無いように感ぜられるから。
私の中の、あなたの中の、完璧で素敵で物語のような‘向こう’の世界だから。
本は綺麗に映るように、あなたの体も、全部中途半端に切らせるようなことはしない。
彼女と彼女の居るその空間を自然に感じる比重で、でも、不要な空白を取り除くように。
頭上にくるであろう、実際には私のカメラのすぐ目の前。
手前に位置する棚を、頭のすぐ上で写らせて、
彼女の素敵な表情と姿へグッと視線を惹きつけて。
彼女の大きな瞳と睫毛が作る、形の綺麗な伏し目とスッと通った鼻筋。ふっくらとした唇。
ふわりと微笑むその瞬間を切る取る。
この日を心待ちにしてくれた1人の女の子を喜ばせたい。
君はこんなに可愛いくて、魅力的で、大切で素敵な1人の女性で人間なんだと、いつでもいいから思い出してもらいたい。
そんな一枚を残すために私たちは在る。
撮って、やはり思います。
その子を、真っ直ぐに、その子のための目で見ないと写真はとれない。
その子のためなんて言い方すると誤解を招きそうですが、単純なことで、
激しいいないないばぁで爆笑しちゃう赤ちゃんもいるし、穏やかな小さないないないばぁでニパァと笑ってくれる赤ちゃんがいるように、十人十色の意味を確かめながら目の前にいる人間の輪郭を探さねばならない。
「向き合う」、使い古され、ありがちな言葉ですが、
それが唯一無二の写真を作ると言うことなんだなと。
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