Photogenic
所沢店
なにを、どう、みせるか
投稿日:2018/11/30
1986 1
photo by volvo
cordi by yoko
写真分析を書くにあたりものすごく悩む時期が続いた。
今までにも「うーんどうしよう。どう書こうか。」と悩むことはあったが、今回はいつものそれとはなんだか違う感じがしていた。
なので、写真分析を書く前に自分がなぜ写真分析を書けないかを考えてみることにした。
すると答えは単純なことに一言で言えた。要は今の私で書けることがなくなったのだ。
この答えは実は薄々と自分の中にずっとあった。
ただ単に目の前にある写真の何が良くて、何が魅力的で、何を伝えたいかは今までもやってきた。だがそれだけならば少しの写真の知識があればできてしまうことだ。
結果、「ただ情報を羅列する」だけの写真分析はどでかい壁にぶつかり、何を書いても似たり寄ったりの文章になっていき、ただ漠然とした不安だけが私の中に残ってしまったのだ。
しかしその状況を打破するヒントをvolvoさんにいただくことができた。
先に述べたことはvolvoさんに相談した際にご指摘いただいたことでもある。そして与えられたことが「コーディ目線の写真分析」を書くということだ。
私はとても単純な人間なので言葉をその通りにしか受け取ることができない。
「写真分析」なのだから、「写真」を「分析」するのでしょう?みたいな。自分でも思う。なんて浅はかな。。。
なので改めて「コーディ目線の写真分析」というと恥ずかしながら新鮮味を感じた。
なるほど!それならば私は誰よりも自分の関わった写真について語れるはずだ!
と、そこまで自信たっぷりに自分の力を語れる気はしていないが少しのワクワク感を感じた。
本題に戻る。
写真に写るこの子は10歳。実は双子ちゃんなのです。
彼女たちはすごく似ているのだけれど好みは全く違う。
1人はガーリーが好きで、1人はボーイッシュなのが好き。写真の彼女は前者だ。
私がコーディに入る時、必ず被写体本人にどんな雰囲気の洋服が好きかを聞くようにしている。そういうコーディネーターは多いのではないだろうか。
私がそれを聞く理由は、被写体本人の好みの要素を取り入れることで本人の意識を「一緒に写真を作る」というところへ引き込む一歩になると思うからだ。
そこに年齢は関係ない。2歳であろうと、7歳であろうと、10歳であろうとそれは同じだ。本人を知り、理解し、共有することで撮影に一体感が生まれる。
しかし好みの要素を取り入れるというのはあくまでベースであって全てではない。
被写体を知った上で、自分がコーディネーターとして彼女自身を表すために必要なものを提案するのだ。
写真の彼女の場合、ガーリーなものが好きという言葉の情報はあったが、私が見るに彼女は「大人」に憧れがあるように思えた。
それはまだ10歳の彼女にとっては伝えづらいことであり、それを伝えることが少し恥ずかしく思っているようにも私には思えた。
そして私は、そんな彼女の今を残すために強弱のついた衣装提案をしたいと思った。
ドレス系が着たいという彼女の意思。それはベースに取り入れる。
ふわふわ!ガーリー!かわいい!!を重視するのであればラメ入りのドレスワンピースにニット系を取り入れる手もあっただろう。ベレー帽などを合わせて彼女の大きい目に合わせてメガネを合わせ、赤系の色を入れてもよかったかもしれない。
だが私は大きめのジージャンを合わせた。辛甘なんて言葉が今はあるけれど(ちなみに余談だが守屋は辛甘系ファッション大好き)、ここでいう私の「コーディに強弱をつける」というのは恐らくそれに近い。
思い切りハードにするわけではないけれど、ただ可愛いというものではなく内に秘めているような印象を与えたかった。
彼女のトレードマークのようなロングヘアは耳にかけ、鼈甲色のイヤリングを見せる。これがあるだけで印象が変わる。かっこいいに近くなるようなイメージ。
帽子は悩んだ。少し面白くいくのであればキャップ系でもよかったかもしれない。だが今回はそれはイメージが違う。面白くはあるけれど!
それを選んでしまうと彼女と私が持つイメージにギャップが出てしまう。ので、グレーのハットにした。鍔が大きいものと悩んだけれど、女優帽にしてしまうと彼女の見せたい部分が隠れてしまう気がした。何より可愛くなりすぎてしまい強弱が弱くなってしまう。
ちなみに、この写真では足元は見えないが、靴は高めのヒールを選んだ。上着を脱いだら裸足になりたい。でも、この上着を着ているときは、強めに。そして、大人に近づこうとしている彼女を足元までサポートしたかった。
撮影が始まった時間は日が傾いてきた頃。所沢店の奥のインテリア、砂のある部屋には強めの西日が差し込んでいた。
Volvoさんがシビアな目で光を見ているのがわかった。ただ光の入りを見ているのではなく、今の彼女を表現するための光と場所を探していた。しびれる。
この時に撮られたもう1枚の写真でvolvoさんが写真分析を書かれているので、もしまだ読まれていない方がいらっしゃったらぜひぜひそちらも見ていただきたい。
西日にも色々な使い方がある。その橙色をフルに使い逆光に撮ったり、壁や床に当たる光を利用したり。
私が上げているこの写真、強い光が壁に当たっているところを選んで撮られた写真だ。
前ボケなどは特にない。必要がないだろう。
一見としてシンプルな写真に見えるが、光を利用するという点で私は「ああー!確かにこういう使い方あるわー!!」と撮影中に一人興奮してしまった。私なら怖くて選べない。
何より、私が彼女で魅せたかった強弱を素晴らしく表現してくれた。
正面から当たる強い光で彼女の影が壁に映り、彼女の印象を強く反映しているように見える。私が表現したかった強弱がよりわかりやすい形で表現されたように思えた。
「可愛い」が好きな彼女、もしかしたらこの写真よりも好きな写真が本人にはあるかもしれない。
だけど、彼女自身が自覚していないような一面を写真を通して伝えることができたら、それはコーディネーター冥利に尽きるというものだ。
コーディネーターという仕事はもちろん洋服を提案するだけではない。撮影全体をコーディネートするのがコーディネーターだ。
これは私が入社してからずっと工藤さんに口を酸っぱくするほど言われていることだ。非常に同意。非常に同意するとともにこれを考えるたびに自分の力不足を痛感する。
撮影に関わるものすべて、何物も蔑ろにしてはならない。常に視野は、広く。
コーディネーターという仕事は果てがない。だからこそ面白いのだと、私は思う。
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