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所沢店
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写真を好きな理由

投稿日:2017/9/9

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Photo by HIRO
Coordinated by Takumi

最近、所沢店のプロジェクトの中で他のメンバーからインタビューをされるという機会があり、
工藤さんからこんな質問を受けた。

「なぜ写真が好きなのか?」

ものすごく単純な質問だ。
写真が好きでこの仕事をしているし、写真が好きだから休日でも写真を撮る。
今までいろんな好きなことを探したり、仕事でも自分が熱中できるものを仕事にしたいと考えてきて、
人生の中で初めてこれは本当に好きだから仕事にもしたいと思えた。
もし一年後に死ぬとわかって、何をするかと考えてもやっぱり写真は撮っていたいと素直に答えられる。
でもなぜ好きかと聞かれると一体なぜ好きなのだろうか?

理由はいろいろあるだろうが、考える中で一つその理由が浮かんだ。
「普段見ている世界を、写真を通して見たことのない新しい世界に生み変えることができる」
それが僕が写真を好きな理由の一つである。
写真を通してそこに新しい世界を生み出すことができるのだ。
絵やデザインとは違って、リアルにそこにあるものを使って写す写真だからこそ、
リアルであるのに普段とは違った新しい世界が生まれる。
写真だからこそ見つけられるものがあり、
写真だからこそ写し出すことができるものがあり、
写真だからこそ伝えられるものがある。
見たことのない世界を自分のファインダーを通して見つけ生み出すことができることが、
写真の面白さであると思う。

僕の大好きな写真家・ソールライターはこう語っている。

「写真を見る人への写真家からの贈り物は、
日常で見過ごされている美を時々提示することだ」


普段、当たり前の日常の中では見過ごしてしまう美しさ。
本当は輝きを放つ見逃された美しさを写真は見つけ出してくれ る。


この子との撮影も正にそれを実感するものだった。
玄関のドアを開け、スタジオに入ってきた彼への印象は中学生になりたてな、
とても可愛らしい子というような印象だった。
年の離れた妹にとても信頼されているお兄ちゃんで、その姿からも優しさが溢れていた。
ママさんはとてもオシャレな方でお兄ちゃんのコーディネートをかっこよくしてくれていたが、
彼はまだそんなことなど関心がないような素ぶりだった。
まだあどけない少年のようなこの子を写真の世界の中で、彼らしく輝かせたい。
中学生になってちょっと大人になった彼の魅力を表現したいと思った。

どうやったら彼の魅力を引き出せるか?
そう思って彼のソロシーンの1枚目のシャッターを切った瞬間、そんな問いは一瞬で吹き飛んだ。
そこに写し出された彼はどこか大人びた雰囲気に溢れ、雑誌の中のモデルのような佇まい。
カメラは彼の内側にある大人な一面をしっかりと写し出していた。
写真は被写体の内側に眠っているまだ見ぬ魅力を引き出す、そう改めて思わされた瞬間だった。
やはり写真は面白い。

あとは見つけ出した彼の魅力に合わせて撮影を進めるだけだった。
この写真はそんな撮影の中の一枚で、彼の魅力にグッと寄った写真にしたいと思った一枚だ。
彼の特徴はなんといっても無造作に伸びた生まれつきのパーマヘア。
それは見た目だけの特徴ではない。
そこに彼に対するママさんの愛が詰まっていたのでそれを活かした写真を残してあげたかった。
カウンセリングの時間 、彼の無造作ヘアをワックスできっちり整えてあげると、
ママさんからあまりきちっとさせないで無造作な感じのままがいいとご要望があった。
きっとママさんはそこに彼らしい美しさを見出していて、そのままの彼を愛しているのだろう。
そこに彼を愛するママさんの愛を感じた。
そんな彼の魅力の詰まった髪型を活かしたクローズアップ写真を撮影することを決めた。

クローズアップ写真ではインテリアなどがあまり入らないため、
画面の中にどんな構成要素を入れ、どうやってまとめるかというのがポイントになる。
構成要素がシンプルになる分、一つ一つが持つ意味が重要になり、
それだけ写し出したい魅力を凝縮することもできるだろう。
今回のクローズアップでのポイントは、彼に対する愛が詰まったヘアスタイルだ。
動きのあるパーマヘアの特徴を生かして彼の魅力を引き出そうと考えた。
ふわっとしたパーマヘアは前後差を作ることで写真の中に立体感を出してくれる。
まず焦点を合わせる彼の目から髪の毛との間に距離を出すために、頬を肩にくっつけてもらう。
こうすることで顔に角度がついて前後差が生まれ、目にはピントを合わせて髪の毛はボカけすことができる。
また顔に角度をつけることで、真正面から撮影するクローズアップよりも動きのある写真にする効果もある。
髪の毛を活かした立体感を出すために、絞りは標準レンズの開放値f2.8に設定し、手前がよりボケるようにする。
フワフワの髪型に隠れた瞳を、髪の毛をかき分けるようにして分け目の間に配置。
あえて片目は無造作な髪の毛に隠れたままで。
彼のまだ隠された大人びた魅力を探し出すように。
優しく手にしたメガネも彼のチャームポイントだ。
メガネもママさんがつけたまま撮影したいと願われていて、彼を表す一つのアイテムだった。
そんなメガネの奥に見える彼の優しい眼差し。
それを表現するためにメガネを下に少しずらしてみる。
光は彼の優しい雰囲気を表現するように逆光気味な光で、少し露出を高め、光が回り込む優しい雰囲気に。
そして最後は彼らしい可愛らしい魅力も残すように、口元は口角の上がった笑みになった瞬間を残す。
コーディネーターのたくみが彼との接点を作り、笑顔を作ってくれた瞬間にシャッターを切った。


見逃してしまう日常の中の美しさ。
それは自分たちの固定概念というフィルターによって見えなくなっているのだろう。
始めは髪型をきっちり整えて撮影を始めようとしていた。
でもママさんにはちゃんと彼らしい美しさが見えていたんだと思う。
だからこそ、彼が持つアンニュイな雰囲気を残し、大人びた魅力を発見することができた。
ママさんは、
「うちの子写真で見ると大人っぽいのに、実際はほんとダサいですよねー笑」
なんて笑いながら話していた。
そんな冗談も笑いながら話せるのはママさんの中にしっかりと彼の中の美しさが見えているからなのだろう。
ママさんが笑いながら話す冗談を聞きながら、なんだかとても心が暖かくなった。
きっと彼に対する愛の深さがあるから、彼の深くにある美しさを見つめることができるのだろう。
ママさんが見つけていた彼の深い世界。
それを知るともっともっと自分も被写体を見つめる深い視点を持たなければと思わされた。

写真は撮影者の認識によって大きく変わる。
どんな想いで被写体を見つめて、どう認識するのか。
それによってファインダー越しに見える世界は大きく変わってくる。
日常の中に見逃す美しさも、固定概念を外しそれを美しいと認識すれば、
見逃さずに捉えることができるだろう。

始めの話に戻るが、写真を好きな理由は新しい世界を生み出すこともあるが、
日常の見過ごされた美しさを見つける視点を教えてくれるから写真が好きなのかも知れないと、
この文章を書きながら思わされた。
それは自分だけでなく、その視点を持つことで写真を見る人に、
自分が見つけた美しさを届けることができるということだろう。

誰かと世界の新しい接点になれる。
やっぱり写真が好きだ。
 

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