「Movie Story 9」  

人々は、よくどこかに旅立ちたいと言います。人生に疲れ、毎日同じ繰り返される日常は退屈でもあります。複雑で緊張し、不安の日常化の中にいる現在の条件とは全く違う、自分自身を武装解除できる場所に旅立たいと思うようになります。ところが、この小さな肉親を楽に受け入れてくれる、そんな場所はここといってありません。こんなに広い世界で、束の間でも私の中を空にすることのできる場所がないというのも本当に寂しいことです。映画で主人公は、疲れに疲れ果てた状態で自分の故郷、小森へ帰ります。

小さな森。。。

小森。。。

帰れる場所があるというのも幸せなことです。少し前に、千葉県稲毛区に引越しをしました。部屋３つに展望が最高な11階のペントハウスです。600万円という驚きの価格とベランダから見える開かれた展望を見て、購入することを決めましたが、実際は、ボイラーが壊れており、床には100個以上の小さな穴があるということを後で知りました。100円ショップで購入した真ん丸いシールを貼り、お皿も新しいものを買い、机も買いました。日本生活10数年。始めて何か私の空間を作った感覚です。いつかは韓国に帰るという漠然とした考えがあり、少しの間しかいないだろうという、無意識が作動していたのか、だいたいの身の回りの物だけを準備して生活を送っていました。

何を買うにしても一番安い物、何を使っても消耗品には変わりない。去年の冬は、あまりコンディションがよくありませんでした。千葉フォレスト店のインテリアのために千葉の蘇我に引越ししましたが、引越しの荷物も解かず、たばこを吸う時も窓も開けず、冷蔵庫の電源も差込ませんでした。

明け方に起き、インテリアに行って、家に帰ってくると、ぼ～っとし、寒いから寝転がると、すぐに眠りに落ちました。もう一度起きてインテリアに行く。そんな。。。ゾンビのような生活を送ったとでもいいましょうか。自然と[私は誰なのか？]ということを考えるようになります。全ての事はめんどくさく、それに比例してやる事は多く、多くの言い訳と弁明の落とし穴でもがきながら1つ思いつきました。

[定着したい]

5～6年前に、チェジュドに居所を設けました。戻る場所、小さな森に対して惹かれたのがチェジュドだったように思います。小さなみかん畑を買い、そこで小さな愛もありました。ところが私の人々、私の仕事、私の欲望は、今いるここにほとんどがあります。目が遠くなったら心も遠くなるというのは事実です。日本で、ライフスタジオで多くの出来事が起き、計画を生産し、希望を消費する出来事が、ここにあります。束の間の間留まる場所で、ここに私は住んでいて、生きていかなければいけない時間と空間です。定着したいという思いで、家を探し今ここでこのような文章を書いています。

人生は、希望と絶望の間の綱渡りのようです。希望が多ければそれだけ絶望の可能性も高くなります。自分の小さな森が切実に必要だということは、それだけ現在の生活が不安だという証拠です。小さな森に入っているということは、再び荒く危険なものの、それくらいダイナミックな森への憧れを増加させます。定着したいという気持ちは何かに疲れているということです。第3の力によって動いているということです。最初に持っていた計画は、文書上にのみ存在するようになります。慣性によって動き、固定観念に頼るようになります。映画、「哭声(コクソン)」の言葉[何が重要なのか]という言葉を忘れて生きていきます。定着するという気持ちは、私にとって慣れない発想です。目の前に見える利益、目標、興味に誘われて生きてきました。快適な寝床は明日のための素材であり、磨きあげ育てて味わうことは目標に合致する時にのみ意味を与えていました。人間らしく生きることがライフスタジオの目標だと話しましたが、肝心の不均衡を解消することに留まる形態が繰り返されました。

リトルフォレストでは、自然から得て、自然を調理して、再度、自然へと帰る素朴な人生に対する物語です。ゆっくり吟味しながら、環境との調和をなす生活... 。まだ、このような人生に対する認識は、[順応]という言葉が先にきます。負けるようで退化するようで、なにか妥協するという感じがあります。20歳になった時から自然に行かなくてはいけないと思いました。ところが、実際はそうできませんでした。自然と共にすると気分が良くなり、何かがありそうですが、それも1日2日だけ泊り、再び自分のいる、この場所を懐かしむようになります。定着したいという思いを、自然と無理やりつなげようとしている感じはありますが、ますますそっちに行っているようでもあり、または到達できないということを知りながら抱くようになる憧れのようでもあります。いつかは帰る自然を、少しでも早く行かなければならないという考えに変わりはありません。稲毛に引越し、心が少し安定的に変化してきていることを感じることができます。体の重心が下に下がる感覚です。もう少し望むなら、愛する人が待っている小さな森だったら、より良いでしょう。

少し前に、韓国でも同じ名前、同じ内容の映画が公開しました。韓国と日本は同じようでありながらとても違います。同じ内容ですが、表現する方式や、日常の瞬間が本当に違います。日本は個人に、韓国は人間関係での問題に直接触れます。荒いかもしれないですが、人の香りが少し出ているということが言えます。日本は静的で韓国は動的です。同じ内容を持ちながら、それぞれの色を持っている二本の別々で同じ映画[リトルフォレスト]をお勧めします。