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MMK⑲これからの「正義」の話をしよう

投稿日:2013/11/18

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これからの「正義」の話をしよう-マイケル・サンデル-

この本を読むのは2回目になりました。

なにが正しくてなにが間違っているのか?を考えさせてくれる本でもあり、自分にはない新しい物事の見方に気づかせてくれる本でもあります。

同じ本を2回読んだ時に、自分の変化を確認できます。高校生の時に見た映画を、大人になってもう一度見た時に印象が違うように・・・・。

この本を初めて読んだ時には、難しい単語がたくさん書いてあって、内容があまり頭に入らなかったような気がします。

結局、なにが正しいのか?がわからなかったからだと思います。

功利主義、自由主義、快楽主義に対して長所と短所はあるが、すべて正しいように思えたからです。

ページをめくるごとに、これらの主義に対して左右される自分がいて、自分の考えていることに対して、本当に間違っていないのか?、と疑っていました。

つまり、考えがない自分を確認したのだと思います。

それでも、きっと考えなければならないことが書いてあるかもしれないと読んでいたことを覚えています。

2回目に読んだ時には、なにが道徳的に正しいのか?という例文に対して自分なりの考えを持てるようになったことが私の変化だと思いました。

例えば、自由市場主義についてこんな話がありました。

「医師免許の有無に関わらず、誰に手術を依頼しても自由であるべきだ」と自由主義者は言います。

これは、第三者に危害が及ばない限り、互いに自主的な契約を結ぼうとすることは、個人の自由であるという考え方からこのように判断しています。

本当にそうなのだろうか?と私は思いました。

理由は、命を失う可能性が高いからです。人の命を扱うことは、免許という形で誰かに認められた特別な権利と能力を持った人が扱うべきではないかと思います。

命を失うということは、言い換えれば、自由を失うという解釈ができるため、私はある一定の基準もなく自由に人の命を扱うことには反対だと思いました。

このように曖昧なことに対して自分の中での考えがはっきりしたことは、はじめて読んだ時にはなかったことでした。

そして、自分が敏感に反応した文章もはじめて読んだ時とは違っていました。

たくさんあるのですが、私がもっとも反応したのは『第5章 重要なのは動機ーイマヌエル・カント』です。

読み終わった時に、気持ち悪いぐらいに文章に線が引かれていました・・・。

『人間はみな尊敬に値する存在だ』『人間には理性の能力と自由の能力があり、この能力は人類共通のものだ』

『人間は自由に行動し、自由に選択する自律的な存在でもある』

『自律的な行動とは、自然の命令や社会的な因習ではなく、自分が定めた法則に従って行動することだ』

『人間は理性的な能力だけではなく、感覚や感情に反応する生き物でもある』

『つねに理性的に行動できるとか、自律的に選択できるわけではない』

『最も平凡な人間の理性をもってしても、最も難解な哲学をもってしても、自由を論破することはできない』

カントの考えには、人間の良い部分と悪い部分を認めた上で、人間(自分)そのものを尊重している言葉がたくさんあります。

私にとってこのような考え方は説得力があり、同意することが多かったのです。

その中で、カントは自殺がなぜいけないのか?について具体的な考えを書いていました。

他人を殺すのは、相手の命をその意思に反して奪うことだが、自殺は本人の選択だという考えが一般的であるかもしれません。

しかし、カントは殺人も自殺も違いはないのです。

カントの考え方に従うと、人間そのものを尊重し価値があるものだから、殺人はいけません。

カントのいう『人間そのもの』には他人だけではなく、自分も含まれているのです。

だから、自殺も同じ意味で、苦しい状況から逃れるために自分の人生を終わらせようとするのは、手段として自分を利用していることなのです。

『自分を単なる手段として利用すべきではない』のです。つまり、自分を尊重し価値あるものとして扱っていないことになります。

だから自殺はいけません。

よく「自分を大切にしなさい」ということを聞くが、言い換えれば「自殺はいけません」と言っているようなものだと思います。

それは一体どういうことなのだろうか?と疑問を持っていました。

親しい人が、自殺をすると言ったらもちろん必死に止めるとは思いますが、なぜだめなのかが分かりません・・。

私はどちらかというと、自由主義的な考え方でした。自分は自分のものであるから、自分が納得するのであれば、どのように生きようと自分が決定できると思っていました。

だから、自殺に関しても、冷たい考え方かもしれませんが、自分が望むのであれば仕方ないこと、だと思っていました。

思っていたというより、自分の中で納得する理由がわからなかったから、自殺は仕方がないと考えていたのだと思います。

本を読んでいてそう思いました。

では、幇助自殺はどうなのだろうか?とあらたな疑問が出てきます。

ひどく苦しんでいる末期患者の場合、痛みを長引かせるよりは、死を早められるようにしてあげるべきなのだろうか?

死の自己決定権を認められる時もあればそうでない時もある・・。としか私にはわからない・・・。

こうした物事に対するジレンマがたくさんあります。正しく生きたいと望んでいるが、なにが正しいのかがわからない。

だからこそ本を通じて、一つの物事に対して、様々な視点で何が正しいかを考えさせてくれるきっかけが必要なのではないでしょうか。

時と場合によって、功利主義の考えが正しい場合もあるし、自由主義の場合もあるし、快楽主義の考えの場合もあると思います。

重要なのは、『一つの哲学の考えを全うし生きること』ではなく多様な哲学を知ることで、実は自分の考えが正しくないかもしれない違う角度で物事を見てみることなのかもしれません。

 

 

 

 

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