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books*萩原朔太郎詩集

投稿日:2013/2/10

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孤独。

序盤の詩には、青が多く、月影の景色が多かった。

憧れ、欲望。

時が進むにつれて、変化してゆく。

手にすることができない。悲しみだけが残る。

自己を省みて、繰り返すことのない情景へと変化してゆく。

 

 

 

印象に残るもの、共通したものは、序盤よりも多くない。

しかしながら、変化をしていた。

数々の詩集の中に、ただ、めずらしく、ぬくもりを感じるものがあった。

夜の情景がほとんどであった中に、光があった。

全編を通して、はっきりと昼の情景は、これだけのような気がした。

だが、そこには景色とは相反する悲しみがあった。

 

 

桜のしたに人あまたつどい居ぬ

なにをして遊ぶならむ。

われも桜の木の下に立ちてみたけれども

わがこころはつめたくして

花びらの散りておつるにも涙こぼるるのみ。

いとほしや

いま春の日のまひるどき

あながちに悲しきものをみつめたる我にしもあらぬを。

 

日本の情景、そこに或る自己と感情。

著者は語る。

 

生命には成長はない。

人の老いて行くことをたれが成長と考へるか。

老いは成長でもなく退歩でもない。

ただ「変化」である。

一の港から他の港へ、船が流れて行く潮の変化である。

然り!

生命はただ変化である。

 

詩人としての、詩を通しての、生命倫理を語る。

この文章があるからこそ、詩を通して一貫した筆者の思考を想像し、より伝わることがある。

 

人は一人一人では、いつも永久に、永久に、恐ろしい孤独である。

とはいへ、我々は決してぽつねんと切りはなされた宇宙の単位ではない。

我々の顔は、我々の皮膚は、一人一人にみんな異なって居る。

けれども、実際は一人一人にみんな同一のところをもつて居るのである。

この共通を人間同士の間に発見するとき、人類間の「道徳」と「愛」とが生まれるのである。

この共通を人類と植物との間に発見するとき、自然間の「道徳」と「愛」とが生まれるのである。

そして我々はもはや永久に孤独ではない。

私のこの肉体とこの感情とは、もちろん世界中で私一人しか所有して居ない。

またそれを完全に理解している人も私一人しかいない。

これは極めて極めて特異な性質をもつたものである。

けれども、それはまた同時に、世界の何ぴとにも共通なものでなければならない。

この特異にして共通なる個々の感情の焦点に、詩歌のほんとの「よろこび」と「秘密性」とが存在するのだ。

この道理をはなれて、私は自ら詩を作る意義を知らない。

 

詩を思ふとき、私は人情のいぢらしさに自然と涙ぐましくなる。

 

自分が何者であるか。

意義。定義。道理。

 

桜の下で流した涙は、彼のものだけではない。

全てではないとしても、散りゆく花びらに思うことも、そうだ。

人が普遍的に抱える孤独を、

共通として表現することによって描く、救い。

絶望だけを残したのではなく、そこに思うのは、詩人としての生き方を通して伝えたい命だったのではないだろうか。

 

 

詩の表現は素朴なれ、詩のにほひは芳醇でありたい。

私の心の「かなしみ」「よろこび」「さびしみ」「おそれ」その他言葉や文章では言ひ現はしがたい複雑した特種の感情を、私は自分の詩のリズムによつて表現する。

併しリズムは説明ではない。

リズムは以心伝心である。

そのリズムを無言で感知することの出来る人とのみ、私は手をとつて語り合ふことができる。

 

一日。

たくさんの詩を読んだ。

たくさんのリズムがあった。

深く入ってくるものも、落ち着かないものも、それぞれにあった。

 

答えが欲しいわけではなかった。

こうしたら、こうなる、という本には疲れていた。

ただ、ひとりの人の中に埋もれるだけで、人生というものを考える。

写真を通して。わたしを通して。

 

どういうものでありたいか?

 

意義を確認していた。

 

空を見て、海を見て。

 

どれだけたくさんの人の共感を得たとしても、

隣の人の心に気がつけないということは悲しいことだと思った。
 

 

「彼が生きていたらロックをしていたと思う。」

その言葉をふらりと見つけて、ただ、この人の中に入った。

本というのは、本を残すというのは、すごいことだと思う。

そして、わたしは何も残したくはない、そう言っていた。

 

 

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