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下関店
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*Photo 11月*
投稿日:2010/11/30
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寒くなると、ダメなんです。
からっきし夏女のわたしは、寒くなるにつれどこまでも考えすぎる傾向にあります。毎年。
何を表現したいのか、写真とは何なのか?
なぜ写真を選んだのか?
なぜここに来たのか?
まー、ずいぶん考え、ずいぶんフォトジェニックも出しておらずで。。。
9月から色々と考え過ごしてきました。
昔撮った写真を引っ張り出したり、
マニュアルのカメラに出会って買ってみたり、
山に登ってみたり、
写真家の本を読んでみたり。
写真と向き合う時間、自分と向き合う時間。
秋って、しんみりしみじみです。。
少しずつではあるけれど、なんとなく見えてきたもの。
Kanonちゃんが感じさせてくれたこと。
長くなってしまったけれど、2010年の今日の日の思い出にしたいと思います。
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パッヘルベルのカノン。
優しい光の粒が降り注ぐようなオルゴール。
その音が奏でるメロディーが聞こえてくるようだった。
ライフスタジオの撮影は一時間という時間をかけて行います。
その時間を長いと感じるか、短いと感じるか?
感じ方はそれぞれだと思いますが、
わたしにとって、その一時間は、彼女たちが生まれ、過ごしてきた時間を少しでも感じたいと思っています。
一番新しいところの時間を共に過ごし、彼女たち自身を表現させてもらう時間。
正直、あっという間です。
今、この時間を、どのように感じ過ごしていたかでその人自身を物語るような一時間にしたいと願い、集中し、夢中になり、惹かれ楽しんでいます。
この撮影のスタイルは、昔、オーケストラで交響曲を演奏していた、あの時の感覚と似ているなと、最近思うようになりました。
4つの楽章から成り立つ交響曲も1時間くらいの演奏時間でした。
一つのテーマがあるものの、それぞれの楽章はテンポも強弱も雰囲気も違い、そのメロディーの動機や背景などを理解をするのにも時間をかけ、心で感じそして楽器で表現するような時間でした。
演奏中はずっと、強いff(フォルティッシモ)で演奏するものなんてなくて、時には小さく奏でてみたり、休符があったりと、1時間の中で喜びや悲しみ、怒りなど、音楽の中にも物語がありました。
撮影の1時間も、こどもたちのメロディーを感じ、ハーモニーを探し作っていくような時間です。
特に3歳くらいまでの子は自分の世界をより持っているように感じるので、いつもいつも強弱もテンポも書かれていない、まっさらな楽譜を持っているような気分になっています。
撮影のときはお着替えなどをして雰囲気を変えたりもしますが、そのときの気分やコンディションによって1時間の中で表情や仕草も変化していく、リアルな人間性が表れること、これもライフスタジオの写真の魅力でもあると思います。
この1枚を撮影したのは撮影を始めた序盤でした。
彼女は初めて訪れた場所がどのようなところなのか探るように、黙々とひとりの世界にいるようでした。
何を話しかけても何を見せても反応しない姿に、ご両親は「笑わないね、笑って笑って」という言葉をかけました。
しかし、わたしはこの「笑って」という言葉をどう受け止めればいいか微妙な気持ちになってしまいます。
笑ってほしい気持ちはもちろんあります、もちろんです。
楽しんでもらいたいという気持ちが1番です。
でも、初めての空間で唐突に笑ってと言われても、わたしには見ず知らずの観衆の前で「歌え」と言われるくらいに無茶振りのような気がしてならないのです。
心が楽しければ、無意識のうちにハナウタを歌うように、笑顔も同じ様な反応ではないでしょうか。
笑うことが正解であって、笑わないことは間違いとかでもなくて…言葉で表そうと思うと難しいですね。
でも、ただそこに存在し生きている、それだけは間違いない真実です。
もっと感じて欲しい。
もっと見つめて欲しい。
笑って、という言葉に対して、
「kanonちゃんのテンポに合わせるからね」、そう言いました。
それからは、両親も、コーディネーターも彼女を静かに見守ってくれました。
しんとした空間の中、彼女はハイハイをして、そしてひだまりの中でとまりました。
寒い冬が訪れる中、彼女にだけそそがれた太陽の光の温度を感じているようにも見えました。
その繊細な姿に、光で、フレーミングで、彼女だけのハーモニーをつけてみる。
切り取った瞬間、わたしは、よし!と確信をし、その彼女だけが持っている美しさにわたしの心まで浄化されたような気持ちになりました。
この1枚を生み出せたことで、
この写真にたどり着くまでのカットで、
撮影が始まってからの彼女の不安から、興味、そしてこの1枚で少しずつ出てきた安堵感、その移り変わりが表現できたように感じます。
転換部とも思えるこの1枚、
彼女だけのメロディーが聞こえてくるようでした。
モニターいっぱいに大画面で見るこの時の彼女の姿は、本当にきれいでずっと見ていたくなるのです。
きっと、わたしが表現したいのは、こういう瞬間なのだと改めて感じました。
わたしの想いに理解をしてくれ、見守ってくれた両親と、そしてコーディネーターに感謝したいです。
もちろん、撮影に関するご両親の願いもあると思いますし、1時間でこどもたちの全てが全部分かるはずはないとも思います。
でも、こどもたちには求めすぎず、お互いに理解しあいながら、1時間を大切に過ごしたい。
その為に、いつもどおりの姿も、ちょっといつもとは違った感じの雰囲気も出せるような空間づくりをしたいと思います。
kanonちゃんは、最後のシーン、それはもうかわいい声を上げて笑っていました。
きっと、楽しくなったんだろう、わたしたちを受け入れてくれたんだろうと、いっしょに楽しみました。
最高の笑顔でした。
わたしは幸せでした。
1時間という時間ではありましたが、kanonちゃんを感じることができました。
こどもたちは色んな姿を見せてくれます。
みんないっしょではないところが本当に楽しい。この時間の中で、また改めてお子様や家族を感じてもらえれば嬉しく思います。
どんなハーモニーを奏でよう。
メンバーは、子どもたちと、そしてそこにいるお父さんお母さん、わたしたち、空気も何もかも全部でです。
激しいメロディーがやってこようとも、かすかな音しか聞こえなくても、即興の中でも感動を生み出せるように、時にはメロディーラインを誘い出すように、
もっと基本を深く学び、知識と経験を増やして自分の表現を磨いていきたいと思っています。
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