引越し...
 
新所沢-鷺宮-下井草-蒲生-松原団地-草加
そして、千葉へ・・・。日本で7回目の引越しになる。
草加以外のところでは短い期間だったけれど、それぞれ思い出がある。
 
ベビークロージェットの事務所兼ウンジョンの部屋だった新所沢は異邦人だった私を慰めてくれた。韓国での出会いが続いて再会したウンジョンは子犬のようだった。仕事を終え帰り道に買ってきたマグロとサラダ、揚げ物、そしてビールを片手に、リビングに居座ってライフスタジオと日本での生活について話し合った。日本に来たばかりの時、まだ不安で満ちていた私を支えてくれた人。テラスで夜空を見上げていると必ず付いてきて絶えずに話しかけてくれた夜を未だに鮮明に覚えている。ウンジョンはそんな人だった。子犬のように愛嬌があって心暖かい人。人の気持ちを読める人。
 
鷺宮には会社と関係のある人たちが住んでいる社宅があった。お家の契約が残っている期間だけ私が使うことになっていて、当時（今もそうだけど）韓国人に興味を持っていたスタッフが一緒に住んでみたいという要望があって、２DKの部屋を分けて使うことになった。その人が大内あかねだった。今は塩崎あかねになっている人。あかねという人は生まれつき自分から「人」に入る能力のある人と言っても過言ではない。人見知りもせず私を「オンニ〜」と親しく言いながら、優しく近づいてくるその姿に心を許すしかなかった。「ライフ人」に選ばれるべき人であり、そのように生きていこうと努力する人である。6年が経ってもその姿勢は同僚に、そしてお客さんにも変わらずである。私にとって日本人と同居するのは初めてのことだったけれど、今思うとあまり焦ったりはしなかった記憶である。言葉もうまく喋れなくて壁に日常会話用の日本語を貼って一緒に読み上げたり、パソコンの翻訳機を使って映画、ドラマ、本、そしてライフスタジオについて語り合ったりもした。当時は恵比寿店で撮影を始めた時期でもあったので共に共感するところがたくさんあった。人、愛、感情、感性を語る内容は論理的でなくても、正確な文法を使えなくても通じるという俗説を私も経験したのである。あかねと私の誕生日は１日違い。もちろん彼女の方があからさまに若いけれど。（笑）ライフスタジオの中でも人脈派の彼女は誕生日パーティーを企画して新大久保の「ハンサラン」というお店で多くの人を集めて誕生日を祝ってもらったのを覚えている。日本での初めての誕生日だった。いつも積極的でポジティブなエネルギーを持っている人に近づき、関係を結んでいくあかねはライフスタジオを愛し、ライフスタジオが愛する人だ。
 
下井草での暮らしは日本語学校を通いながら「日本での生活とはこういうものだ」ということを知っていく過程だった。東京の下町で、町の人々、通勤の様子、お店の雰囲気やメニューなどを一つずつゆっくりと学んで感じる時間だった。蒲生と松原団地で過ごした時はライフスタジオにより深く入る時期だった。日課はサークルや会議に参加し、士官学校を参加し、草加店の運営が始まった。そして、ライフスタジオのいろんな人に出会い、たくさんの人が私の家を行き来した。そうして本格的にライフスタジオが私の人生の一部になってきた。そして、ここ4年間草加のコリアンタウンと呼ばれるURマンションで過ごし、今引越しの準備をしている。
 
草加での生活は語りきれないほど色んなことがあったけれど、李社長・朴社長・ウニョン・ソラと共同体を作った生活だった。最初からそれを心描いた李社長の意志もあったけれど、思ったより過激で言葉通り「白く燃え上がった」労働と人生が一致した時期だった。言葉で表現すると「共に」「幸せ」という言葉がふさわしい。ライフスタジオにより深く入ることで私の目と耳が開かれた。だけど組織である以上時列で冷静に走りがちな私をリラックスさせてくれたのは食事とお酒と歌だった。それらを共にした人たちと、帰り道李社長と語り合った無数の会話は一言では言い切れない時間だったし、存在だけで頼もしい味方になってくれるウニョン夫妻とは「隣の住民」という言葉がぴったりだし、お酒の世界へ紹介してくれた７階の朴社長の家は彼だから出来た事だった。思い出は過ぎ去り、記憶の中で薄くなっていくだろうけれど、なるべく鮮明に覚えておきたい理由は人々への「感謝」の気持ちがあるからだと思う。「疲れて、弱くなりそうな私の心と体と精神に活気を吹き込んでくれた最大の同期付与」になった時期だったからだ。そして、今。その全てに未練を持たずに、さらに前に進むためのスタートラインに立っている。明日に対する覚悟は、昨日より良い今日を願いながら、環境と条件を自らの手で開拓して行く姿勢で挑みたい。