Photogenic


青山店
scrollable

ぐっとくる

投稿日:2021/11/20     更新日:2021/11/20

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Photo&Write by Reiri

Coordi by Mayu Nishi

 

@AOYAMA

 

青山店で撮影をするようになってから、10ヶ月が過ぎました。

ライフスタジオの1号店。最近のライフスタジオと比べれば、少し小さくて可愛いこのスタジオは、様々なカメラマンによって本当に様々な写真が撮られ続けてきた場所です。

私自身は、昨年青山店への異動が決まってから初めて訪れた空間だったので、個人的な新鮮味はありました。しかし、毎日撮影をしていくこの10ヶ月の中でそれもすぐに馴染み、徐々に『慣れたように』使ってしまいます。

経験というものの悪い側面で、安定的に、言い方を変えれば無難にまとめてしまう撮影は、格別悪いものが露呈することはない代わりに『ぐっとくる1枚』を遠ざけてしまうような感覚がありました。その日の光、その日の被写体のコンディション、その撮影へのご家族の想いやご要望、トータルでの時間配分まで含めて、あくまでも商業写真館としてやらせてもらっている以上、全てをなるべく上手く回していこうとすることは大切です。しかし、基本的に不器用な自分にとっては色んなことのバランスを取ろうとするには慣れも必要で、慣れと共に安定しますが、安定と同時に停滞します。

悪い意味で保守的だとよく言われてしまうのですが、慣れたやり方をわざわざ崩して、その分何かに皺寄せがいくことを恐れています。なおかつ、色んなカメラマンが色んな試行錯誤を重ねて来た青山店という空間は、何処からどう撮ればどうなるか、というのがこの15年の写真の数々ですっかり検証されているものだから、ともすると選択肢を狭めて安定的な方に流れてしまいがち。それはつまり、その方が楽だから、そうしてしまうという自分の怠惰でもあります。

そんな怠惰を自覚しているのなら、たまにはバランスを崩してでも、冒険をした方が良い。何かひとつでも、挑戦していく気概を忘れない方が良い。良い写真を撮りたいという撮影者としてのシンプルな欲求に従って、ファインダーの中の四角い世界をどう仕上げていくか悩みながら集中するほんの数分間を、大切にしなければならないと思っています。

この撮影において、怠惰な私にそうさせてくれたのは、指名してくださったことへのプレッシャーでした。

正確に言うならプレッシャーという表現には若干の語弊もあるような気もしますが、とにかくこの撮影は『写真』にこだわりたい気持ちがありました。

毎年いろんなライフスタジオで撮影をしてくださっているこちらの彼のご家族とは、2年前に千葉フォレスト店で初めて出会い、その時の写真は撮影者としてちょっと嬉しくなるような、ちょっと良い写真撮れたなと思ってしまうような、自分の中でも記憶に残る撮影でした。とは言え、あとから振り返ってみれば条件や環境に恵まれた部分もあり、ライフスタジオ最大級の広さを誇る千葉フォレスト店での晴天の日、という撮影条件は、カメラマンにとって大きなアドバンテージだったのだと思います。

あれから2年経って、今回は青山店でのご指名。再会したママさんは「前に撮ってもらった写真が良かったので」とにこやかに仰ってくださり、その言葉こそが怠惰な私を奮い立たせました。何しろ、冒頭でも触れた通り青山店はライフスタジオの中でも小さな空間で、この日は薄曇りで、そして子どもたちはそれぞれ成長して新たな魅力を見せてくれていて、……様々な条件と環境が前回の撮影とは異なっていましたが、『写真』を理由に指名をしていただけた信頼に報いたい、と思うごく当たり前の使命感が、私をファインダーの中に集中させました。

多少の緊張感を、家族写真ときょうだい写真を撮影していく中の賑やかさで馴染ませながら、青山店という慣れた環境を丁寧に使っていくように意識します。

光を作って、レンズを変えて、ゆっくりコミュニケーションを取りながら進めていく時間は、心地良い緊張感を伴った撮影の楽しさを私に思い出させました。被写体の存在に集中して、その美しさを表現する為にシャッターを切る、そこまでに何をどう組み合わせて構成していくのかを考える時間は、ワクワクする。

彼自身は、以前の撮影から2年経って、そこそこ思春期に差し掛かる雰囲気もありましたが、パパさんママさんから

「ほら、あの時の写真撮ってくれたひとだよ」と言われて、

「…人は覚えてないけど、写真は覚えてる」と言ってくれました。

恐らく、今回の私のアドバンテージと言える部分はここだったのでしょう。前回私が良い写真だと思えたものが、彼らにもそう思ってもらえたという一致。そして私は、彼の素敵なところを知っている。とてもかっこ良い、素敵な雰囲気を持った男の子だってことを私は知っていて、その感情を丁寧にファインダーの中に反映させようと試みます。

じんわり滲む曇天の光の中で、露出の確保と柔らかいとろけるような質感が欲しくて、85mmの単焦点レンズを使いました。f1.6まで解放して、彼の存在感ある瞳にフォーカスしていきます。普段使いの私物の眼鏡は、彼のパーソナリティではあったものの撮影においては少し障壁になる部分もありましたが、顔に角度をつけて傾げてもらうことで瞳の印象を損なうことなく収まりました。彼の存在を立体的に際立たせる、この角度が正解でした。

青山店という空間を淡く滲ませる、ごく浅い被写界深度の世界。何処から撮ればどうなるか、ということがわかっているからこそ、滲ませてとろけて、そしていちばん印象に残したい部分を演出的に表現することが、できました。ぐっとくるこの瞬間まで付き合ってくれた彼に、感謝しています。

余談ではありますが、実は彼は1歳の時にも青山店に来てくれていて、同じ場所で写真を撮っていました。

多少のインテリアの変更こそあるものの、同じ場所で、同じような光で撮られた1歳の彼の写真をバックアップから引っ張り出して、モニターの時にみんなで見ました。撮影者こそ違えど条件も環境もほぼ同じ、なのに、(本人の成長も含めて)写真はまるで違っていて、やっぱり改めて写真って面白いなと思います。

 

ほんの少し、撮影者が集中した時に、写真は変わる。

まだまだ、青山店での撮影は楽しめそうです。

 

 

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それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
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