Photogenic
青山店
モノクロ・イメージ
投稿日:2021/8/20     更新日:2021/8/21
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Photo&Write by Reiri
Coordi by Misaki Nakagawa
@AOYAMA
ご要望は『モノクロの家族写真』でした。
そしてここ最近、原本にモノクロの写真を入れていなかったことに気付きます。
写真編集の機能が誰でも気軽に使えるようになってきた昨今で、カラーの写真をモノクロに変換することは簡単です。しかし、モノクロで撮影された写真をカラーに変換することは容易ではなく、理由なきモノクロは75カットの中で悪目立ちをします。
「なんでモノクロなの?」と。
モノクロの写真には、モノクロである理由が必要です。
敢えて色を排除して、光と影のグラデーション、白から黒への濃淡で写真を構成し、表現するということ。
自分としては、それはそんなに簡単なことではなくて、だから無意識に、特に家族写真というシチュエーションでのモノクロは避けていたのかも知れません。
今回の、お客様からのご要望、というのはきっかけのひとつ。「モノクロの家族写真を撮って欲しい」、撮影者としてそのご要望の中身を汲み取ろうとするならば、モノクロの特性とそれが与える印象がお客様の中でどのような想いと重なっているのかを推察し、効果的に反映されるような写真を撮るべきでしょう。
それは、誰でも気軽に使える編集機能でカラー写真から変換したようなモノクロではなく、ただ言われたから撮ったというような受動的なモノクロでもなく、光と影で表現するひとの姿が美しく残せるもの。
肉眼で見る色彩豊かな世界から、敢えて色という要素を排除して表現することで際立つ『何か』。それが、モノクロームの特性であり、お客様が撮って欲しいと思うような印象を与える美しい写真に必要なものなのだと思います。
マタニティの家族写真での、モノクロ。
まずは光。この日は天候が悪く、自然光はあまり入って来ていませんでした。ライトをつけて、光が届く範囲を確認します。複数人で構成することを考えて、白をベースにしたモノクロ写真にすることに決定。
次に、影。ご家族は、白いシャツと濃紺のパンツで合わせて来てくださっていました。シャツの質感が飛んでしまわないように、影の入り方に注意を向けます。光源に向き合う形になるママさんはいちばん光源から離して、マタニティの丸いお腹のラインをシャツの影が描き出してくれるように。
密着しない形から始めたのは、モノクロに関係なく『家族にとって居心地の良い距離感』を少し意識したからです。手を伸ばせば触れられる、お互いの存在感を近くに感じてはいるけど接触している訳ではない、そのくらいの感じ。密着したひとかたまりではない分、高低差で三角形の配置を意識して全体のバランスを整えます。
そして、少し自由に動ける空間があったからこそ、もうすぐお兄ちゃんになる男の子の仕草が生まれました。まだぽっこりしたお腹をぺろんと出してくれた、その動きはこちらからの指示ではありません。でも、私たちがママさんのお腹にフォーカスした指示をあれこれ出していた流れで、何だか自然な感じにお腹を出してくれました。
彼のその仕草から、家族の和やかな空気が生まれて、『居心地の良い距離感』は『家族の空間』になります。その瞬間を、ちょっと特別に、印象的に抽出する効果を担ったのが、『モノクローム』という表現でした。
もうすぐお兄ちゃんになる、男の子の無邪気な仕草と笑顔。それを見て綻ぶパパさん、ママさんの表情。お腹の中の小さな命の存在が『家族』の中で待ち望まれていること、変化を目前にした『今』の家族のカタチ、……
そういう、言葉で説明してしまうとちょっと無粋な、この空間に溢れる人間的な温かさ、みたいなもの。それは、敢えて色という情報を無くすことで、不確かで主観的な、でも美しい風景として、イメージから想起させる記憶を抽出したような1枚になりました。
モノクロの写真には、モノクロである理由が必要です。
理由を明確に描き出すには、その特性とそれがもたらす効果、見る人に与える印象を、把握しておかなければなりません。それはひとつの技術であり、撮影者の力量が表れる部分でもあります。
綺麗な光と影で描く世界はシンプルで美しく、温かい記憶を抽出したようなドラマチックな1シーン。
撮影者として目指すべきところは、そんなモノクロームのイメージです。
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