Photogenic
新横浜店
JOY,
投稿日:2020/6/20
2777 6
Photo&Write by Reiri Kuroki
Coordi by Masaaki Ara
@Shinyokohama
この時、シャッターを切りながら、彼女の魅力を語る写真になったと、そう思えました。
天真爛漫で、ソーシャルディスタンスもお構いなしに抱きついてくれる、愛嬌たっぷりな2歳の女の子。
そんな彼女の、たくさんたくさんある魅力の中の、特にこの『2歳』というミラクルな時期の魅力を抽出した写真です。
世間では『魔の2歳児』なんて言いますが、2歳と言えどもひとそれぞれです。
そりゃあもう、何がそんなに気に入らんのよ、ってレベルでぎゃんぎゃん泣き喚いて絶賛イヤイヤ期な子もいれば、赤ちゃんがちょっと伸びたくらいのフォルムなのに自らポーズを決めてくれる子もいたりします。
集中しちゃうと手元しか見ません、とか、靴下は絶対脱ぎません、とか、お気に入りのタオルが75カット全部の写真で写り込んでますね…とか、とにかくずーっとずーーーっと走ってます、とか。
色んな2歳児にお会いしてきましたが、彼らを見ていると、大人が思っているより色んなことを感じながら、それを出そうと悪戦苦闘しているんだろうな、なんて思います。
感じていること、を、どう処理したら良いのかはまだわからないから、試行錯誤、色んな形で、主張していこうとしている。
そんな、愛おしい2歳たちの撮影は、もちろん一筋縄ではいきません。
悪戦苦闘と試行錯誤はこちらも同じ。彼らは自分たちの感じていることに対して。私たちは、彼らのそんな姿をどう表現していくかに対して。
そういった点で言えば、彼女は比較的、『しっかりした感じの2歳さん』だったかも知れません。
新横浜店の玄関で初めて出会った彼女は、おかっぱヘアがよく似合う、まあるいほっぺの女の子でした。泣いた後だったらしく、鼻からはちょっと鼻水が垂れていて(レディのそんな話してごめんね……)、ぽっこりしたお腹の辺りの服をぎゅっと握りしめていました。
その、あまりに『こども』な感じのビジュアルに、まずぐっときてしまいました。(笑)
でも、自分の足でしっかり立って、真っ直ぐ私を見上げる彼女の眼は、何とも言えない雰囲気がありました。
多くの場合は、2歳くらいであればパパさんママさんに抱っこされて来店することが多いように思います。抱っこされながら、パパさんママさんの声のトーンや表情を介して、その場やそこにいる人を『だいじょうぶ』なものとして認識していくような、そんな過程を踏んでいるように思うのですが、彼女の場合は、自分の足でひとりで立って、自分の目と感覚で私たちを認識してくれているように感じました。
実際に、彼女のリアクションはとても素直で、荒さんの繰り出すパフォーマンスにそれはよく笑ってくれました。愛嬌があってサービス精神が旺盛な彼女は、私たちの黄色い歓声を受けては色んなことをやってくれて、それはそれは楽しそうに、撮影の時間は過ぎていきました。
この写真は、そんな撮影の後半、71枚目の写真です。
3着目の着替えをして、小物も変えて、さすがにそろそろお疲れ気味な彼女に対して、荒さんは直接的に笑わせるようなパフォーマンスから、彼女の動きを誘発させるようなアシスタントにシフトチェンジしました。
新横浜店の一角にある格子に誘導して、格子越しに覗き込むような仕草を見せると、彼女はそれを真似します。それから、格子にぶら下がるような要領で屈み込んで、伸び上がり、格子をつかんだまま大きく背中を反らしました。
その動きは、きっかけこそ真似っこでしたが、彼女自身が自ら展開させた『ひとり遊び』の動きでもあります。
私たちからの刺激を受けて笑うことによる楽しさ、とはまた別の、自分で遊ぶ楽しさ。自分自身の内面の楽しさを楽しむ時の、少し集中した表情こそこの時期の、『2歳』の魅力。
彼女は前述の通り、愛嬌があってニコニコの笑顔がとっても可愛い女の子でした。そういう写真ももちろん抑えていますが、敢えて私が『彼女の魅力を語る写真』として選ぶのはこの1枚です。
私たちの存在が気にならなくなり、彼女自身が自分の中で感じる楽しさを楽しんでいる、そういう『2歳らしさ』のある写真。
彼女の特徴である、まあるいおかっぱとほっぺた、反り返るお腹のフォルムをいっぱいに収めて、動きがわかるように左手ギリギリでフレーミングします。横顔の輪郭と頬の丸みをなぞるハイライトが彼女の魅力を語り、ちょっぴり出てきてしまったベロは、彼女の感じている楽しさを反映しているようでした。
私たちの存在が気にならないくらいに受け入れ、干渉からは離れ、自分で感じる楽しさを、楽しむ。
それこそ、いわゆる『自然な感じ』と言えるでしょう。
そういう瞬間にこそ、顕れるその魅力。
あなたの、あなたらしい、そのままの魅力を表現できたと感じる時は、撮影者として病みつきです。
やっぱり、撮影はやめられない。
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