Photo by Yuki

Coordinate by Momo

 

 

 

 

 

 

望遠レンズの200mmで何を撮ろう。

探るところから始まりました。

 

 

 

「200mmの挑戦を彼でしてみたい。」

「部屋の外、パソコンが置いてある隣の部屋の隅っこから覗くように撮りたい。」

 

 

まずコーディネーター（ももちゃん）に伝えました。

遠く、声が届かないような距離から撮るわけですからカメラマンの存在はほぼ消すに等しいわけです。

 

この様に撮ろうと思う。

この様な雰囲気にしたい。

 

 

それを伝えると彼女からも返ってくることがあります。

 

じゃあこんな声掛けをするね。

こんな仕草が合うと思う。

 

 

 

こうやってお互いが被写体を見て感じた世界観を載せて。

そうやってわたしたちの写真はできています。

 

ライフスタジオの撮影において「アシスタント」というワードはふさわしくありません。

「コーディネートター」。

コーディネートする。それは一つの答えをともに探るということであり、共に表現していくということ。

 

 

一人では完成させられない世界観をふたりでなら。

それが少なくともわたしたちのあり方です。

 

 

 

望遠200mmに挑戦しようとおもったときに改めて望遠レンズの特性を考えました。

 

・画角が狭く圧縮効果がある

・それにより遠近感を打ち消すことができる

・ボケやすい

 

これら特徴にさらに陰影差をつけるなどの方法で肉付けしていくことができます。

 

 

彼にあってなんとなく彼の世界を考えた時彼に合った望遠の使い方は何だろうか。

と感じました。

 

 

人懐こくてキラキラした世界を持っている彼。

彼と彼の世界の調和。そしてそんな彼の世界をのぞくような遠さ。

近さと遠さ。

 

 

それを今回のテーマにしようと考えました。

 

 

まず彼とその周りのものの調和です。

標準レンズで彼を同じ比率で撮ろうとすると背景を引き寄せる効果がなくなるのでもっとたくさんの雑多な情報が入ってきます。白樺のやぐらの上。奥のベッドの足の部分。

望遠レンズを使うことで周りは彼に引き寄せられます。いらない情報が引き算され自然と視線は彼に向きます。

 

また望遠の効果で背景がぼけて調和していること。また彼との距離感を打ち消していることで彼と、その彼の世界に一体感が生まれます。

彼はその世界の住人であり、自由に、気ままにそこにいる。

 

 

 

 

 

そしてもう一つ乗せたかったのは彼と私の距離感です。

彼の世界は調和していて彼にとって近い。

けれど私と彼の世界は遠い。

 

そんな不思議な感覚をこの写真に載せたかったのです。

まぶしいものは遠くに感じる。

うらやましい存在は遠くに感じる。

素敵なものは遠くに感じる。

 

 

そんな感覚です。

 

 

私は部屋の外に出て限界まで距離を撮りドアも少し閉じて彼と距離をとりました。

 

 

そしてももちゃんが部屋の中で彼と遊びます。

 

「片足上げてみて」

「寄りかかってみて」

「ゆっくり落ちないようにしゃがんでみて」

 

 

この瞬間私の存在はありませんでした。

 

 

そして

 

 

「しゃがんで向こうを見て。何がみえる？？」

 

 

彼が彼の世界から私を見つけた瞬間でした。

「見つかっちゃった」と言うかのようなこの仕草といたずらな笑み。

 

 

前ボケというよりも私と彼を隔てるものの一つとして、インテリアの一つとしてドアをすこしいつもより多めに入れました。

 

 

 

望遠の特性。

私の存在を感じさせない物理的な距離感。

被写体を感じて、コーディネーターと作る世界。

コーディネーターの声掛け。

 

 

全てが乗せられてこの一枚は切られました。

 

 

 

私が見つけた彼の世界。

彼へ続く道。

まだ遠いその世界から手招くように、こちらをうかがうように彼はあちら側から私を見つけて笑っているのです。