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shinyoko photo 85

投稿日:2016/6/24

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「タイムマシン」



 
人生の、いちばん初めの記憶はどこだろう。
 
そう思った時、私が思い出すのは、可愛がってくれた祖父の手です。
あたたかくてごつごつした手で、祖父は私の手を握り、一緒に階段を上っている。壁には、うさぎや象のイラストが描かれている。この階段を上れば、デパートの屋上に出て、10円だか50円だかでぎこぎこ揺れるだけのパンダの遊具に乗せてもらえる。
祖父の手は、私の手をしっかり握り、よたよた階段を上る私を引っ張り上げながら、一段一段、ゆっくりと上らせてくれる。握られた手は、少し痛くて、力強くて、あたたかい。
 
恐らく、2才になる前のことだと思いますが、私の中でのいちばん古い記憶はこんな感じです。
これが本当に自分だけの記憶なのか、今となっては正直なところわかりません。祖父は私が3才になる頃に亡くなり、彼の顔や一緒に出掛けた場所、孫を可愛がる溺愛振り等は、後々写真を見返したり、祖母や母から聞かされたエピソード等で『知っている』という知識だけで構成されている部分も多いです。
それでも、朧げな記憶が写真によって補完されることで、こうして覚えていられることは、とても嬉しい。
カメラを向けられると、いかめしい顔つきになってしまう祖父。写真を見ただけでは、ただただ気難しそうなこの爺ちゃんが、私にとても甘かったことを、とても優しかったことを、私は知っていて、あのごつごつした手の記憶と相まって、彼の笑顔を難なく想像することができるのです。
写真の価値というものは、もう過ぎ去ってしまって変化してしまって、もう見ることはできなくて、もう会うことはできない、そんな瞬間に立ち戻らせてそれを見せてくれる、会わせてくれる、そんなタイムマシンのような素敵な魔法のようにも思えます。
 
自分の人生で、色んな人と出会って別れて、泣いたり笑ったりしながら過ごしてきた時間の積み重ねがあって、今の自分がいます。誰もが、この世に生きているありとあらゆる誰もがそうであり、その誰もが、過ぎ去った過去には戻れません。ただ、時折、写真を見返して、再確認したりもします。自分がどんな人たちに関わってもらいながら、時間を積み重ねてきたのか。どのように、変化してきたのか。あの時の自分の姿。そこに一緒に写る、『あなた』の姿。その空間。その関係。
過ぎ去った時間を振り返り、再確認し、思い出すことができる。それが写真の力でもあり、価値でもあると、思うのです。
 
生まれたばかりの『あなた』を見詰める、母の瞳の深さを、20年後に見てもらいたい。
母になったばかりの『あなた』が触れる、娘の足の小ささを、20年後に思い出して欲しい。
そして私は、ただただ真摯に、その空間を構成したい。眼差しのあたたかさを、触れる足の柔らかさを感じられる、想像できる、思い出せる。そんな写真を記録する為に。
その記録は、いつか遠い未来で、朧げな記憶を補完する。
 
『ひと』の人生の、その積み重ねられていく時間の一部を、確かなものとして未来に残したい。
人生の、最初の記憶。その、記録。
 

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

人生の写真館ライフスタジオという名前に込めた想い。
それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
家族の絆とかけがえのない愛の形を実感できる場所として、
人を、人生を写しています。

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