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読書⑦『インサイド・アップル』アダム・ラシンスキー著を読んで その①

投稿日:2012/8/16

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『インサイド・アップル』アダム・ラシンスキー著を読んで①

 

この本は、昨年亡くなったスティーブ・ジョブズの自伝ではなく、これまでアップルの持つ知名度と浸透度と反比例した「組織としてのアップル」が書かれた本である。

組織としてこれほど研ぎ澄まされ、世界中で愛されていながら、およそ誰も社内でのシステムを知りえない、という企業のあり方がここに詳らかになる、という触れこみに大いに期待値が上がりこの本を手に取ったのだが、久しぶりに1ページも飛ばさず、どころか1ページ1ページを大事に読んで読破した1冊であった。

これまで、ジェームズ・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー2」、フランクリン・コヴィーの「7つの習慣」、リカルド・セムラ―の「奇跡の経営」、そしてピーター・ドラッカーの「経営者の条件」等の本を読んできて、自分なりのリーダーシップや経営者の理想像などが見えてきた所であったが、本書で客観的に浮き彫りになった企業としてのあり方、最高責任者としてのジョブズ本人が、どの本にも書かれている共通した成功した企業の持ち得ている長所や、リーダーの長所とはあまり関係がないという発見。これをどのように解釈したらよいのだろう。

結局アップルという企業は、「偉大なる企業」をも超えた「超・偉大なる企業」なのであろうか?それとも「どの企業とも頂点から細部に至るまでが全て違う突出した頭脳と集中力と美意識を兼ね備えた単一の企業」という既存のカテゴリーには何一つ当てはまらない企業なのだろうか・・・。

今、理想とされるリーダーはトップダウン形式ではなくボトムアップだとされているが、ジョブズは極端なまでのトップダウンによって細部までも管理していた。企業内ではすべてがチームに分かれており、チーム同士が何をしているのかは知る由もないし、互いに箝口令が敷かれている、内部にも外部にも秘密厳守によって全てが保たれている企業である。社内の透明性が叫ばれている昨今においてである。

これは、著者による言葉によってもより明らかになっている。

―権力が腐るものだとすれば、成功は広がる。成功はリーダーの資質を際立たせる。ジョブズがおそろしく生産性の高いキャリアの最終段階に入ると、その個性に含まれる互いに相容れない多くの要素が、アップルの経営システムとなった。-とある。

あの巨大な企業がこの傑出した個性のもとでどのようにバランスを取りえていたのだろうか。

この本の出る前にすでに出されているジョブズの自伝では、彼の傷つけた人たちにも触れているし、本書でも、彼に傷つき会社を去った人の話も出てくる。

結局、強烈な個性も、類まれな才能と突出したカリスマとによってすべてが偶像化され「愛される人」となるのであろうか。

凡人である私には到底解らないが、少なくとも、自分の中ではスティーブ・ジョブズが否定的に捉えられたりしたことはないし、ウィンドウズでいらつくことはあっても、マックでそのような思いは抱いたことはない。

本書はかなり密度が濃いのでこの①では、本の全体における印象を述べさせてもらった。

②では、アップルとライフスタジオとを比較しつつ企業について考えたことを述べたい。  つづく

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