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水戸店
読書③『サムスンの決定はなぜ世界一速いのか』吉川良三著を読んで
投稿日:2012/7/12
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『サムスンの決定はなぜ世界一速いのか』 吉川良三著 を読んで
サムスン。今電気店に行ってテレビ売り場をざっと見てみると必ず日本製品と同様に並んでいるブランド。
「韓国製品も頑張ってるな~。」と思いながら、最近目にすることが前よりも多くなったこのブランドを 頭の片隅に置くという
程度に認識していた。
この感覚こそが今や置いてけぼりをくらってしまっている日本、および日本の電化製品製造に対する間違った私たちの
認識、感覚であった。
今から18年前、開発部長として身を置いていた日本鋼管から、サムスン電子の常務に引き抜かれた著者は衝撃の事実を
述べている。
日本の大手電機メーカーは、世界に於いても押すに押されぬ存在であると今に至るまで思い込んでいたが、
2010年の時点で、パナソニック、ソニー、東芝、日立、富士通、NEC、三菱、シャープの大手8社の営業利益の合計は
約8327億円。それに対し、サムスン1社で1兆2800億円。
日本大手8社が合わさってもサムスンに全く水をあけられていたという事実。しかもそれを全くしらなかった自分。
この現状が今の日本であると思う。
なぜ 日本がかつての栄光の座を明け渡すことになってしまったのか、この本は日本人と韓国人の特性と比較しながら
分かりやすく、しかも衝撃的に教えてくれている。
2000年ごろから、世界の産業構造は「国際化」から「グローバル化」へと大きく変化していったが、そのずっと前から
サムスンの李社長はその流れを読み取っており、著者を招くなどして会社を大きく方向転換させることに成功した。
しかし、日本は充分な対応ができていなかったどころか、それだけ大きな変化がおきていることに
気付いていなかったとしか感じられないと著者は述べている。
IMF危機が起こった時に、韓国は以前のように日本に追随していくことをやめた。
そして、この危機をどう乗り越えていくかを真剣に考え、これまで目標にしていた日本企業の在り方を研究し、
“日本とは違った道”を進んでいくことを決意した。
なぜなら、日本の企業は産業構造のグローバル化にまったく対応できていないのを知ったからである。
日本では、新興国をコストを抑えられる生産場所としか考えていなかったのに対して、
韓国では、新興国をただの工場ではなく、市場として捉え、それぞれの地域の文化に合わせた“地域密着型ものづくり”
をするようにシフトしていったのだという。
新興国の経済規模が巨大化していくことで、世界経済がグローバルな戦いに移行していくことをすばやく理解し
行動に移した韓国。遅れをとった日本。なぜこのように韓国ではすばやい意思決定がなされ、
そして行動に移すことができたのか、新興国を「巨大市場」と捉えた狙う世界に於いて「トーナメント戦」が
繰り広げられているのに対し、日本では未だ「リーグ戦」を行っていたのだという。
国内の企業同士で、前回は買ったけれど今回は負けたと小さな枠の中での競合を続けていた日本。
かたや 決定の速さが最も重要となる負けたら終わりの「トーナメント戦」に参加し勝ち上がった韓国。
なぜこのような違いが出たのか、両者を知る著者だから言える気質の違いをこう分析している。
● 日本では「石橋を叩いて渡る」という慎重さが尊ばれているが、韓国では腐っている橋でも渡り、渡り終えた後には、
その橋を壊してしまうような感覚を持っている。
とにかく大事なのは、先頭を走る事に尽きる2番手では駄目である。石橋を叩いて安心して渡れたとしても、
すぐに2番手3番手が追随してくる。
韓国では、石橋ではなく腐った橋ならそれを最初に渡り、振り返った時にまだ橋が崩れ落ちていなかったら
叩き壊して誰かが追随してくることのないようにする。
こうした考えでなければ グローバルな戦いで勝者になることはできない。
● 結果がどうなるかを慎重に考える日本、「始めたら半分終わったも同じ」感覚の韓国。とにかくすぐに始める。
もし結果が悪ければ方向転換すればよいという考え方。
デメリットもあるが、結果がどうなるかを考えようとしないからこそ、決定は速くなる。サムスンのスピードは
驚異的な成長を考えてみてもデメリットを補ってあまりあるものである。
多大な時間をかけて失敗の可能性の少ないやり方を見出しても、それを実行に移した時には、
すでに状況は変わっている場合も珍しくない。
なるほど~。である。あらゆる場面に於いて、わが社でも社長始め韓国人スタッフと一緒にいて感じてきたことは
こういうことだったのかと、本当に納得してしまった。
最後に心に残った著者の言葉とサムスンの李社長の言葉を記したい。
【卵の殻を自ら割れば 命を持った鳥になるが、他人が割れば目玉焼きにしかならない】
【次の10年のために苦しむことが創造経営なのである】
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