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水戸店
読書① 「格差社会の衝撃」を読んで
投稿日:2012/6/10
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「格差社会の衝撃」リチャード・G・ウィルキンソン著 を読んで
この本の面白いところは、不平等、所謂格差社会を、健康と結び付けて考えているところにある。
目の付け所、切り口の目新しさに惹かれ 読んでみようと思ったのだが、読んでいくうち、
これこそが、実は今本当にこの時代に必要な分析と論理であると感じた。
健康は、単に私たちの体の状態を表すものではない。
社会全体の社会環境の質を推し量るバロメーターでもある。
この本が書かれる基となった「先進国における健康や寿命に影響する主要な要因を
明らかにしようとする研究」。
この研究は今まで20年程行われてきたものだという。
これにより、人間の寿命と健康が、社会環境や社会構造と深くかかわっているという事実を
浮き彫りにしていった。
冒頭にある一文は衝撃的である。
―不平等な社会ほど 健康水準が低く、暴力的で 信頼感に欠け、
社会的結束力が弱い―
病気は、人間が環境と摩擦を起こすことから始まる。
環境が人間にとって満足のいくものであるときに、人々は健康的であるのと対照的に
環境の方が人間より勝った時に、病気が姿をあらわす。
病気は 人間と環境との関係がうまくいっていない事を知らせている。
環境によって引き起こされるストレスが病気の大きな一因と考える。
では 環境とはなんであろう。
それが、この本の中では、社会的地位の低さ、いわゆる所得格差であり、
不平等な社会であるといっている。
不平等は 社会関係や低社会階層の問題や、家族の機能に及ぼす影響を通して
それがストレスや健康に及ぼす影響に至る。
不健康や、早すぎる死をもたらす個人レベルでの心理社会的リスク要因を考えた時
慢性的ストレスの原因となっているのが、社会的地位の低さであるという。
実際の物質的生活水準の低さというよりも
「見下されているという感覚」「自分自身の環境や仕事を自分で決められないという
従属感」そして社会的連帯が弱く、友人がなく孤独で社会的ネットワークが弱い
という環境。
社会的地位が低い環境が家庭環境に及ぼす影響も大きい。
ストレスの原因は自尊心を傷つけられるとい事でもある。
社会的地位の低い環境においては、軽蔑され見下されていると感じる機会が多く、
人々の尊厳や自尊心を傷つけている。
子供のころの経験は、ストレスに対してどう対処すべきかという知恵を基礎を
作る。
だから 誰もが育っていく過程で、価値ある存在として認められ
尊重されていると感じ、友達を持つ必要がある。
大人になってから 自信を持てるような基礎を作っておくことがすなわち
ストレスへの対処を持ち得る事である。
筆者はこう語る、
もし現代社会の問題を解決するために前進したいのなら、
不平等は社会を蝕むという曖昧な理解で済ますのではなく、
我々は不平等からどのような影響を受けているのかを もっと徹底的に
理解する必要がある。
もし我々が 先進国で主観的な生活の質を改善したいのなら
我々はもはや 物質的消費水準ではなく社会の在り方に注意を向ける
必要がある。と。
私たちは個人的には 大きな社会、大きな経済活動とその影響に
抗う術を持たないが、小さな社会、コミュニティーの中から 大きな社会へと
広がりをもたらすことはできうると思う。
結局いかに正しく子供を愛し育てていくか という小さなことからすべてが
始まっていくような気がした。
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