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『圧縮とは何か』
投稿日:2016/10/17
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photo by volvo
この写真を説明する為に最も書かなくてはならない事は「圧縮とは何なのか」という事になるだろう。
例えば有名なビートルズのアビーロードの写真は横断歩道が大きな要素として存在しているが
ライフスタジオの写真の構成要素の中で誰でも思いつく単語を挙げろと言われれば
最も最初に出てくるのが「前ボケ」と「圧縮効果」だ。
圧縮の意味は様々ある。
この写真のように被写体以外の部分を極力排除し被写体にフォーカスを当てる事や、望遠レンズを使って
前ボケや背景を利用して被写体を浮き上がらせるように撮る手法、あるいはその二つの組み合わせなど。
私はこれらの圧縮効果が最もその効果を表している状態を言葉で表現するならば「集中している状態」だと考えている。
昨今の圧縮効果があると言われている写真を見ているとたまに疑問が浮かんでくる時がある。
それは「なぜ被写体を切るのか?」に対する懐疑的な見方を拭えないからだ。
圧縮写真の多くは被写体の一部をフレーミングからはずす、いわゆる「切っている」写真が多く見受けられる。
具体的に言うと頭部と足だ。
確かに被写体に集中させ、よりインパクトを強める為の圧縮効果としては頭の上にある隙間や足の下にある隙間を取り除く事は一つの手段としては間違っていないし、多くの圧縮写真はそうあるべきだ。
しかし私の考える圧縮効果の本来の意味は被写体に「集中」させる事であり「被写体を切って大きく写す」事ではない。
この二つは似ているようで全く違う意味合いを持っている。
圧縮効果の目に見える部分だけが取り扱われ現象だけを真似する事は、初めてスノーボードをやる人が
ブランドのアイテムを揃えれば滑れると思っている事と同じだ。
この二つを混合してしまうと圧縮効果=トリミングという構図ができあがり、切らなくてもいいものを切ってしまう可能性がある。圧縮効果の最も注意しなければいけないのはトリミングの意味付与できない事によるお客様からの声にある。
お客様に伝わらない圧縮効果は余計な不安を起こし、説明できないトリミングは小さく無い問題を引き起こす。
この写真は着物写真でヘアセットの形状によってどこで切るかは変わってくるが
トップに飾りが付いている事から切らない方が無難と考えた。(もちろん写真によってはトリミングしているものもありますが)
では、トリミングをせずに被写体に集中させる為にはどうすればいいか。
この写真には2つの核心部分が隠れている。
一つは頭の部分と靴の部分が同じくらいの幅である事。
もう一つは写真がグラデーションになっている事だ。
頭の部分と靴の部分が同じくらいの幅というのは横幅の事だ。
パッと彼女を見たとき、上から下まできれいな一直線でほぼ同じ横幅になっているのがわかる。
できるだけ上下の隙間を減らす事は必要だが、切らずとも被写体に集中できるのは
写真を左右に2分割したときに左半分を綺麗に被写体である彼女が埋めているからである。
また、それを際立たせているのは首の角度だ。
彼女はただ下を向いているわけではなく少し斜めに首を傾げているが
これによってできるのは顔の面積の低下と髪型が見える部分の増加だ。
彼女はとても綺麗な輪郭をしていた。
ありのままを撮っても大きな問題はなかったと思うが、もし自分をプロだと認識するのならば
「より良く」という思いが彼女の輪郭をより際立たせた。
そして顔の輪郭に締まりが出ると女性らしいラインが出来上がり、それと同時に左半分が
彼女で埋め尽くされている。
二つ目のグラデーションに関しては、写真の重心の話になる。
サイドからのシンプルな光によってできる影が作り出すグラデーションは、被写体を左に寄せてできた視覚上
「何も無い」空間にライティング上「何かを置いた」状態にし、光で作られた「インテリア」となって左右のバランスを対照的にする。
つまり、画面を2分割したときに、左半分を被写体である彼女が、右半分を光(影)がそれぞれ隙間なく埋める事によって
トリミングをせずとも画面いっぱいに広がっているように見え、圧縮効果が表れていると説明ができるのではないだろうか。
こんな力説をしてはいるが、いつでも実践できるわけではないのが心苦しい所ではある。。
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