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京都桂店
Discovery
投稿日:2016/7/31
1109 0
photo:volvo
codi:takako
SOKA photo
神秘的が意味することは日常から脱皮して新しい事を体験しながら
あるキラキラと輝くものを心の中で残すことだ
これは草加店の新しいインテリアのコンセプト『神秘』を説明するひとつの文章だ。
神秘的という言葉を聞いて自分だったら何を思い浮かべるだろう。
ディズニーランドで新しいアトラクションに出会ったとき?それとも顕微鏡で細胞分裂を見たとき?
私だったら今話題の東洋のマチュピチュ、竹田城の雲海を想像する。
雲の上に浮かぶ崩れた廃城は生で見た人にしか体感できないそれこそ神秘を目の当たりするに違いない場所だろう。
まぁ、行ったことはないのだけれど。。
それでは意味がないので行ったことがある話をすると、私が家族旅行でロンドンに行ったとき
空港を降りた時に胸に入ってきた空気で感じた妙な高揚感は今でも鮮明に思い出す事ができる。
地下鉄が進むにつれて次第に太陽を浴びていき、明るくなると同時に見えてくる赤レンガのアパートは
線路沿いを永遠に続くかと思うくらいに連なる情景があった。この風景を目の当たりにした時
私は胸がなんだかかゆくなる思いがしたのを覚えている。
「神秘的」という言葉に話を戻してみる。
神秘的という言葉を辞書で引くと『 普通の認識や理論を超えて、不思議な感じのするさま』と書いてある。
撮影において神秘的な状態とはなんだろう。
いつも着ない服を着てモデルのようなポーズをとる非日常的動作の事だろうか?
あるいは西洋風のインテリアに包まれて非日常的背景を従えることだろうか?
私はこう思う。
辞書的な意味の「普通の認識や理論を超える」とは、主観的に見てみれば新たな客観に出会うことであり
「不思議な感じのするさま」とは新たな客観によって自分の中に新しい主観が生まれる現象ではないだろうか。
ロンドンの風景に魅了された時に現れた高揚感は、風景が神秘的だったからというだけではなく
神秘的な風景という客観を取り入れ、自分の中の日常的な日本の風景という主観とそれとが出会い
自分の予想もしてなかった感情が現れる事ではないか。
核心的なのは
「神秘的な場所や物そのものが神秘的」
ということではなく
「神秘的な場所や物に出会う事で自分の中に新しい感覚や感動が生まれる事」
こそが神秘的なのだ。
前置きがものすごく長くなってしまったが、撮影しに来てくれる人達にこの感覚を体感してもらいたいというのが
草加店の「神秘的」というインテリアコンセプトの本質だと私は考えている。
この写真を今回選択した理由は、この写真がまさにインテリアや衣装といったライフスタジオの神秘を浴びて彼女の中に新しい感覚が生まれているその瞬間だからだ。
彼女の性格は、一言で言えば「やんちゃ」である。
着物の撮影が終わり、緊張感も抜けてきたピークに着る事になったドレスは
彼女の内面的な性格を抑えるには器が小さくソファの上を飛び回り、車を乗り回し、スカートを捲り上げる仕草は
私たち撮影者に対して彼女を枠にはめてはならないという警鐘とも取れるくらい自分を表していた。
私はその時点でいわゆる「ドレスを着ています」というポーズは彼女には不釣り合いであり、させるべきではないと判断した。
しかし、一方でただ彼女らしさをあるがまま撮る事もベストではないと感じていた。
なぜなら私たちのコンセプトは「神秘的」であり、新しい自分に出会う事だからだ。
必要な事は彼女にとって「いつも通り」の姿と「森にたたずむお姫様」という神秘的なコンセプトの融合だと規定する事だった。
すべき事を規定したら準備をしなければいけない。
彼女が別の場所で遊んでいるうちにレースのカーテンをバックにひき、ソファをそれとなく配置する。
神秘さを増すために緑を多く配置し、どのように切り取るかを決定する。
イメージの統一は写真を作り上げる上で最も重要なキーワードだ。
原本の中にはいくつかのシーンの最初があると思うが、そのシーンの最初の一枚に実力が出ると言ってもいいぐらいそこにイメージしているものが出る。
上部に配置されている酒瓶たちも、森のドワーフ達が夜の晩餐に備えて備蓄しているものだと設定してみるのはどうだろう。
森の中にあるソファはレースに包まれ、木の隙間から強い日差しが入ってくる朝方と設定したら、鳥のさえずりが聞こえてくるようではないか?
私にはそう見えるけど・・。
イメージは固まった。しかし、実際に彼女がここにどのように入ってくるかはわからなかった。
「座って欲しい」というお願いはしたが、その通りにはいかない。
実際にはうつぶせに「ドン」と寝転がった。
でもそれを座り直させる事は彼女を「枠にはめる」行為になって
背伸びをさせてしまう事になりかねないから
座り直させる事はせず「膝で立って」という言葉に修正した。
彼女は「座って」という言葉より「膝で立って」という言葉の方が自分にしっくりきたようで、すんなりと起き上がってくれた。
その瞬間、彼女をこちらの世界観に誘う事ができると思い、「帽子を触って欲しい」というお願いをした。
この掛け声は意外に彼女にきいたようで、彼女は自分がドレスと帽子を身に付けて
この「forest」の中で物語の主人公であるという自覚をしたような表情を一瞬した。
帽子を触るそぶりをしてくれたが、私は帽子を触る前にシャッターを切ることを選択した。
理由は帽子を触る前の方が自然で朝日を浴びているようなイメージに合致したからだ。
このイメージを表現するにあたり重要なポイントを担っているのは半逆光の光である。
神秘的な雰囲気を出すならば光は斜め後ろからの半逆光が適切であると判断する。
理由はレースを抜けてくる拡散した光は写真全体を明るいイメージにする事と、被写体を覆うように光のラインができるからだ。
ただの逆光ではなく半逆光な理由はコントラストを保つためである。逆光では光が拡散し過ぎて全体的に色の薄い感じになってしまう。
構図上の隙間は特に気をつけた。
レースは伸ばすと三角形の形をしているので、ただ背景に敷くだけではアンバランスさを強調するだけになってしまう。
だからレースの覆いきれない部分には緑をうまくくるように配置した。
右上の少し曖昧な部分は前ボケで同じように植物を入れる事で一枚の印象として統一感を狙った。
こちらの撮影者としての準備はインテリアの構築段階から始まっていて
最大限に準備をする事が来てくれた人たちに思わぬ発見をもたらすのだと思う。
彼女にとって撮影に来たという事が神秘的な体験であったと感じてもらえたら嬉しいし
その瞬間を一枚の写真として残す事が私達の仕事だと感じている。
私はライフスタジオや自分の担当する撮影が、参加する人にとって少しだけ特別で、
帰る時には来店時に持っていなかったものが胸に残っていればといつも願っている。
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