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伝える   見えるものよりも見えないものを

投稿日:2016/8/31

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伝える
見えるものよりも見えないものを

photography by LeeHyeYoung
written by sonoka


皆さんは何か挑戦したいものや、取り組んでみたいものがあるときどうしますか?
私は一度やりたいと思うものが心に生まれるといても立ってもいられずに時間が何時であろうと本屋さんに向かいます。そして自分の関心のある分野の本を何冊か手に取ります。定期的に本を読む習慣のない私はこうやって自分の「時」が訪れると本を読みます。こういう性格なもので自分の関心のある分野の本ばかりを見てしまうのでとても偏ってしまうように見えるかもしれませんが、不思議なことに分野が違くても内容が繋がっていたり、他の分野でも当てはまることを多く見つけられているような気がします。本も写真も意識をして何かの関心を抱いた状態で見ていると驚くほどの発見や深さがあることを感じます。小学生のときからファッション雑誌しか読んでこなかった私が、ライフスタジオに入社し、哲学の本を読んだり、デザインの本を読んだり、生き方についての本を読み、本にはいろんな人の考えを知りながらそこに楽しさを感じている私は誰かの書いた文章の中に自分の姿を見つけていたことを知りました。たまたま出会った本の中に不思議と今生きている私の悩みに答えを見つけるようなときもありました。そうやって他人であった誰かの本を通してみんな同じ「人」なんだなと感じるようになりました。プリクラやお洒落をなものの写真、お洒落をした自分たちの写真ばかりを残してこようとしていた私が、家族や子供たちの写真を撮影するようになり、目にははっきりとしたカタチとして見えない関係性や愛を表現しようとする世界に触れることで写真に測りしれない想いと計算と考えが付与されているものもあるのだということを知るようになりました。
と、まあそんな私なのですが、そういうことを発見していくとの面白さを少し知れたように思います。街を歩いていて、自分の目に止まるちょっとした落書きや絵、誰かのポエム、写真に対しても「なんで自分はこれに惹かれているのだろうか?」と考えるようにもなりました。一体何を伝えたかったのだろうかとふと手を止めて見てしまうもの、一体何を考えて、何を思い、何をこの瞬間に見つめていたのだろうか、頭の中はどんな構造になっているのだろうかとその作者の頭の中が無性に気になってしまいます。
それが写真であるならば、私には見つけられないような角度から撮影されているものや技術的にどう表現したのだろうかと私の表現スキルにはないものであるからという時もありますが、一番は形として見えないものである「心」や「関係」イメージとしてしか存在しない「言葉」で表現されるような世界が見えるに写真に出会った時に私はその一枚の魅力に惹かれているように感じます。私の言う「見える」とは明確な形を持たないものが形をもったものを通して感じられ伝わってくるということです。見ている私が感じるということは、撮影しているカメラマン自身はそれを被写体に「見ている」のです。目に見えないからといって表現できないことはありません。まず撮影するカメラマンが「感じている」ということは、確実に見ているのです。集中して見ているカメラマンの心にそして自分が見てとらえた被写体を表現しようとする誠実な想いに私は考えれば考えるほど心を奪われてしまします。スタジオで写真を見ていても75カットの流れの中で、同じように気になって見入ってしまう写真に出会うことがあります。

ここに私が選んだ1枚の写真があります。顔や表情はあえてフレームの中に入れられていません。カメラマンはどんな想いをどんなイメージを私たちに伝えたかったのでしょうか。
イメージカットとはみなさんどんな写真であると思いますか?
私はイメージカットとはカメラマンが何を大切にしていて、何に集中し、何を表現したったのかが一番凝縮されているカットだと思います。それはカメラマンの被写体に対する愛でもあり誠実性の表れです。スタンダードな撮影はどのカメラマンでもできます。そのカメラマン自身が投入されて現れてくるところは、どう被写体を動かし、どれほどの表情を出すことが出来るのか、もう一つはイメージカットであると思います。見えないものを伝えるために表現するには集中が必要です。そして被写体を自由に動かし表情を出すためには自分が被写体の中に深く入っていかなければできません。そのカットを作りだしていくための過程が感じられるカットは、考えれば考えるほどその奥の深さに驚かされてしまいます。

この1枚の写真を見たときにみなさんは何を感じますか?
私の心を掴む部分は、「カーテンをそっと握る彼女の手」、透けている「白いレースのカーテン」、そしてそのカーテンの部分に降り注ぐ「光」です。その部分を見ていると、目には見えないですがその子の本心に触れたような気持になります。顔や表情がこの写真には含まれていませんが、その部分を見ているとその子が感じられ見えてくるのです。その子が持つ雰囲気や優しさが。この写真を撮影したカメラマンは私たちに対してそこに集中してほしかったのではないでしょうか。お顔や表情がすべてではなく、その子をほかの視点からでも表現し、皆さんにもその小さな見逃してしまいそうな美しさに気づいてもらいたくて75カットの写真の中に1枚プレゼントとして入れたのではないかと私は思います。イメージカットとはカメラマンからのサプライズプレゼントだと私は思っています。プレゼントを送ろうとしている人以外は中に何が入っているのか知りません。プレゼントをもらう人が喜んでくれるよう、驚いてくれるように準備をしていきます。それと同じで美しさの再発見もしくは新発見をしてもらうために表現方法を考え、集中し、被写体に深く入りながら作りあげていくのです。
目に見える姿だけでなく、目に見ないその人らしさやその人の心を想像させ伝えることろに焦点を当てて撮影をすることが私は何よりも重要であると思います。そうやって写真を表現するために、時には笑顔に注目することもあるだろうし、仕草や動きにスポットを当てることもあるでしょう。その人の心や性格、それ自体は目に見えないものですが75カットの流れの中で現れるように構成していくことがカメラマンからその被写体に向けられた誠実さだと思います。何百回何千回と撮影をして、どうしてそうとるのかを深く考えることもなくシャッターを切りつづけるのではなく、ちょっとした指の動きや仕草、表情の微妙な変化にも集中し、どう表現するのかを毎回考えて作りあげていくことこそ、私たちカメラマンが忘れてはならないマインドだと改めて感じました。




 

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