Photogenic
青山店
一斤のパンが教えてくれた、本当のご要望。
投稿日:2025/11/13     更新日:2025/11/13
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photo:gomei
codi:morita
書いた人:gomei
お客様から伺ったご要望は、とてもシンプルなものでした。
「パンを食べている写真が欲しいです」。
ただ、その言葉の奥には、実際に写真を撮る者として感じ取れる“もう少し深い意図”が潜んでいることが多く、今回もまさにそうでした。
当日のお子様は、好き嫌いがはっきりしているタイプで、普段の食事でも食べられるものとそうでないものがあると伺っていました。
でもパンだけは特別で、大好きで、きっとそれなら食べてくれるはずだとご家族も期待されていたようです。
“食べてくれたら嬉しい”という、日常の中で生まれた親としての願いが、その一言には含まれていました。
そして何より印象的だったのは、お持ち込みいただいたパンが「一切れ」ではなく「一斤丸ごと」だったことです。
普通に考えれば、食べている写真を撮るだけなら、一切れのパンで十分成立します。
それでも一斤を選ばれたということは、きっとそこには“姿として残したいイメージ”があるのだろうと感じました。
小さな子どもが、自分の顔と同じくらい大きなパンにかぶりつく姿。
それは、誰が見ても思わず笑顔になるかわいさを持っています。
ご家族が本当に求めているのは、その“サイズ感のギャップが生む可愛さ”なのではないかと、強く思いました。
実際、その場にいた全員の頭の中に、おそらく似たイメージが浮かんでいたはずです。
正面から、まっすぐパンに向かっていくかわいらしい姿。
その王道の一枚は、もちろんしっかり撮りましたし、ご家族の期待通りの写真になったと感じています。
しかしそこからさらに一歩踏み込んで、この子だからこそ撮れる表情やストーリーを引き出せないかと考えました。
撮影準備は複雑ではありません。
パンの高さとお子様の顔の位置を合わせてあげるだけで、自然と“かぶりつく姿勢”が整います。
そのために低めのテーブルを用意し、つかまり立ちのポーズでパンと向き合えるようにセッティングしました。
この段階で、お子様自身がパンに意識を向けやすい環境ができ上がります。
そして、ひと口パクっといった瞬間に気づきました。
食べることに対してとても真剣な表情を見せるタイプだということ。
ただかわいく食べるのではなく、ひとつのことに集中する時のまっすぐな眼差しが印象的でした。
この“食べることに向けられたまなざし”を残さずに撮るのはもったいない。
その考えから、この写真では“真剣にパンと向き合う横顔”をテーマとして捉えることにしました。
光の設定も、テーマに合わせてシンプルに整えています。
半逆光になるように配置し、自然光に+LEDを足すことで陰影をコントロールしました。
横から柔らかく入る光が、瞳の立体感を自然に引き出し、頬の丸さや質感もやさしく浮かび上がります。
背景は大きくぼかし、主役以外の情報をそぎ落とすことで、視線が迷わない構図にしています。
シンプルですが、余白の力を使うことで、この一瞬の表情がより際立つように意識しました。
そして決めるのは、“パンにほっぺがちょっと押されるあの瞬間”。
柔らかいパンに、同じくらい柔らかいほっぺがそっと沈む、その一瞬にだけ生まれる表情があります。
呼吸を合わせ、静かに待ち、自然な動きにそっとシャッターを添える。
こういう時間が、子ども写真の魅力だといつも感じています。
今回の一枚は、ただ「パンを食べている姿」ではなく、
ご家族が無意識のうちに願っていた“うちの子らしさ”そのものが形になった写真だと思います。
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