Photogenic
青山店
Because…
投稿日:2022/5/20     更新日:2022/5/20
2200 4
Photo&Write by Reiri
Coordi by Gomei
@AOYAMA
極めて主観的で感情的な撮影者。
自分のことをそう理解している私には、自分の写真が『本当に』『良い』のか、という点において、いつも確信を持ちきれない。
良い写真が撮れた、と思いながら、分析を書こうといざキーボードを叩き始めると、その写真に対しての論理的なプロセスが自分に欠如していることがわかる。
だから、書く。苦手でも、書く。きちんと言葉で整理して、直感的に撮ったかもしれないその写真に、私の直感が何故そう働いたのか、という根拠を確認する。本当は、撮る前に考えないといけないのだから、せめて撮った写真をきちんと分析しよう、と思う。
さあ、何を撮りたかったんだ?
冒頭の通り、私は主観的で感情的な撮影者だ。そして、その主観や感情は、写真表現において撮影者が『わたし』である以上、また被写体が『ひと』である以上は、必要な要素ではある。ただ、それが独りよがりになってしまったら、きっとそこには『本当に』『良い』写真は生まれない。
写真は自由で良いと思う。ただ、普遍的なものは絶対にある。誰が見ても『美しさ』として感じるもの、とか。その要素。そういうものは、基本的には踏まえていくべきなのだと思う。
ただ丁寧に光を見て、被写体を見て、その空間を見て、バランス良く画面の中に配置して、その被写体の最も美しい瞬間にシャッターを切れば良い。最も美しい光がきちんと被写体に当たっていて、写真の四隅の中に無駄な構成要素がなく、全てがその為にあつらえたかのようにそこにあるように。
わかっちゃいるが、それが、すごく難しい。だから、こうしてずっと写真を撮っていられるのだと思う。
この写真がその域まで到達しているかどうかはともかく、目指しているのはそういうところ。
被写体の彼女は、照明付きの鏡の前に座っている。白熱灯のオレンジの光が当たる彼女の横顔は、横に流しただけの長いウェーブヘアの無造作感と相まって少し印象的に際立つ。手に持ったブラシがこのシチュエーションを補完して、ストーリー性を持たせてくれた。
使用したのは85mmの単焦点。標準のレンズよりもやや開放にして、その柔らかなボケ感で棚の小物の雑多感を軽減する。カメラと彼女の間にはガラス戸が1枚挟まれていたが、木枠の影とガラスを隔てて僅かに霞むような質感の変化が、彼女との距離という空間の奥行きを表した。
物理的に1枚のガラス戸を隔てたことで、撮影者が被写体へ干渉する影響もややマイルドになった。撮影者の指示を受け被写体は動き出す、しかしその動きの中で、撮影者の存在を忘れる一瞬がある。指示を受けての動きが自然とその人の動きになる瞬間。鏡の中の自分を見つけた彼女の表情が私を忘れた、その瞬間がシャッターチャンスだった。彼女の動きと表情と、その空間のストーリーが一致した瞬間は、彼女の魅力を語る為にその空間が整った瞬間だったのだと思う。
だから、私は撮りたかった。
青山店は小さな店舗で、見たこともないような目新しいものが生まれるような余地はあまりない(……と、思う)。劇的な変化や斬新さといったような派手さはないけれど、丁寧に見渡すことができる空間だ。
少し、シャッターを切るタイミングが変わってきたように思う。準備をして、丁寧に、その瞬間を待つ。その僅かな数秒が、ちょっとずつ写真を変えてゆく。
主観的で感情的な撮影者が、その主観と感情をきちんと技術で表せるようになるには、もう少し勉強が必要かもしれない。論理的なプロセスを身に付けたら、きっと今よりももっと、写真は楽しい。
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