PhotogenicAoyama

thinking of you,

投稿日:2021/9/20

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Photo&Write by Reiri

Coordi by Tiara Suzuki

 

@AOYAMA

 

ライフスタジオの写真は、75カットという枚数でお渡しさせていただいています。

その75カットは3パターンで構成されていて、例えば家族写真ときょうだい写真、それぞれの子どもたちのソロ、というように、最大3回の衣装チェンジをしながら撮っていくので、色んなバリエーションでの写真が撮れるというところはライフスタジオのひとつの魅力なのでしょう。

75カットの原本に多彩な変化やストーリー性のある展開を持たせること、は、ライフスタジオの撮影者の命題のひとつだと思っています。

 

とは言え、カメラの前に立つのはモデルではなく、普通の子どもたちです。遊びたい盛りだったり、思春期に入って撮影自体に乗り気でなかったり、そんな色んな心情がある生きた人間たちに対して、撮影者の一方的な思惑なんて開始3秒で崩れ去る、というようなことはめちゃくちゃたくさんあります。

そう、『一方的な思惑』なんて、ライフスタジオではあんまり意味を持ちません。撮影は、カメラマンとコーディネーターがいて、被写体である人がいて、その人の家族がいて、みんなそれぞれ撮影に対しての想いを持っていたりもします。

だからカメラマンは、色んなバリエーションの75カットを撮りたいとか新しい写真への挑戦をしたいとか、悩んだり考えたりしてこそ良い撮影者だと思いますが、それを一方的に押し付けてはいけないのです。

私たちの写真は、楽しい遊びの空間の中で、被写体である人たちが自分の新たな一面を知ることができるような、そんな美しさを表現する写真でなければならない。だから、カメラマンの独り善がりでは、成り立たない。

私たちの写真は、その人を写すもの。その人の存在がそこにあって初めて写真になるものだから、被写体であるその人に対して、撮影者は真摯に関係性を構築していかなければなりません。人は、色んな面を持ち合わせているものだから、一方的な見方だけでは足りません。

リラックスして、楽しんで、肩の力が抜けてゆくようなその時の、その人の佇まい、雰囲気、美しさ。何が好きで、何が楽しくて、自身のことをどんな風に思っているかとか、家族にどんな風に想われているかとか。その空間にある、そういう色んな要素に気付いて、拾い上げていきながら、その空間の環境や条件に合わせて組み立てて、表現していく。

ライフスタジオの撮影とは、写真とは、多分そういうもので、そうでありたくて、だから私は、ここでカメラを持っています。

 

 

例えば、この写真の場合。

実は、この日の主役は彼の弟。

パパさんママさんは、数年ぶりのライフスタジオでの撮影を楽しみにしてくれつつも、やんちゃな弟くんがちゃんとできるかが心配な様子。「お兄ちゃんはカッコ良くやるんだけどね〜」「写真好きだしねえ」なんてお話をされていました。

兄である彼は、それなりに思春期なお年頃ながら、素直な笑顔を見せてくれる少年でした。

ママさんからのご要望は「シックな感じよりポップな明るい写真が良いなぁ」。

この日の天気は雨。ライトを使いながら、明るい楽しい感じの写真が続きます。

家族写真ときょうだい写真を終えたところで、主役の弟は着替えに入り、兄のソロを少しだけ撮る流れになりました。はしゃぐ弟から離れて、兄のスイッチが入るのを、感じました。

その時、私の中で蓄積されていた色んな要素が、彼の写真をこう撮ることを決定づけたように思います。

少しだけ、の兄のソロはほんの数枚。そのわずかな枚数で、この日この時の彼の魅力や美しさを印象的に記録したい。

彼自身は、ポージングも上手で写真も好き。カッコ良く撮られたい気持ちもある。

ママさんからのご要望である『シックな感じより明るくポップ』には大胆に反するけれど、これまでの流れで明るい楽しい雰囲気の写真は撮れていて、ここで敢えてローキーな写真が入ることで原本の流れにぐっとメリハリがつく。

自然光があまり入らない天候、意図したライティングを阻害する光の干渉をなくして、光がなぞる彼の横顔に集中できる。

そしてファインダーを覗いて彼を見た時、自分の感情は「ああ、かっこいいな」と感じ、沸き立った。だから、シャッターを切りました。

 

どうかな、と、カメラのモニターで彼に写真を見せたら、

「ああ、うん、かっこいいね」と言って、少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、彼は笑いました。その顔を見て、この写真はひとつの正解だったと感じます。

ポップな写真というご要望に意図して反した分はドキドキでしたが、75カットの写真をモニターで見終わった後のママさんからも、とても嬉しいリアクションをいただきました。

人に真摯に向き合って表現しようとすることは、いつもとても難しい。たったひとつの正解はなくて、一瞬で通り過ぎてしまいそうな美しさに瞬時に反応できるようにアンテナを研ぎ澄まして、自分の中の技術を精一杯駆使して、追い縋るようにシャッターを切ります。いつも悩みながら、考えながら、感じながら。

 

だからこそ、毎日がとても、刺激的です。

 

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