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投稿日:2015/4/30
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何度もこの場所で撮影しているが、この一枚が気になるのはなぜだろう?
この被写体の女の子は、沢山の笑顔、可愛らしい仕草も見せてくれたのに、撮影初めのこの一枚が気になるのはなぜだろう?
撮影のはじまり、女の子は緊張していた。
お互いに一定の距離感を保ちながら、刺激しすすぎないように相手を観察する。
私は少し身を潜め、この子がどんな子なのかファインダーを覗きながら考えをめぐらせていた。
まだ、どんな子かもわからない。しかし少しのことで泣き出してしまいそうな緊張感があった。
その日は曇りで、時間帯も15時半の枠と、決して自然光が沢山入るわけではなかったが、外が見える解放的な窓のそばにたってもらった。
ママから離れると不安になるので傍にはママについていてもらった。
自然光だけでは光が足らず、補助光にライトボックスを置いた。
コーディネーターの三代川さんが、棚の上のほうにある、うさぎのインテリアを指さし「うさぎがいるよ!」と言った。
うさぎを探す女の子。
不安の中うさぎを探す女の子・・・不思議の国のアリス!
そんなことを考えながら、被写体の女の子とアリスのイメージを重ね、シャッターを切った。
ふたたび疑問に立ち返る。
何度もこの場所で撮影しているが、そのなかで一番気になる写真なのはなぜだろう?
まず色味がいつもと違う。曇りの日であること。少し高めであったその日の湿度。15時半という時間帯。
曇りの少し青みがかった自然光は、女の子の少しの不安を際立たせた。
自然光とライトボックスの光が混ざりチラチラと不思議な陰影を被写体につくっている。
手前の前ボケのグリーンは暗く、そこから漏れる窓からの光は、森の中の木漏れ日のようでもある。
足を踏ん張り、手に持った宝石箱をわしづかみにしている。その力のこもった様子からもその子の緊張が伺える。
目に入ったアイキャッチは、不安の中にも、うさぎを探す少しの好奇心が見える。
撮影が進むにつれ、この女の子と私たちの距離はぐっと縮まり、沢山の笑顔、可愛らしい仕草、思いもよらぬ表情を見せてくれた。
でもその中で私が一番気になるのは撮影の初めのこの写真。
それはなぜか?
それは、初めに見せた緊張と少しの好奇心を持ったこの表情もこの子のもつ姿だからだ。
私は笑顔を撮影したがる。
子供の笑顔を待ってしまうこともある。
笑顔は無敵だと思ってさえいる。
しかし、この時、この瞬間、この子の表情も姿もとても愛らしく感じた。
75カットのストーリーの中で、はじまりの緊張から最後の活発な笑顔まで、沢山の表情が残せたことがとても印象深い撮影だった。
私がこの一枚が気になるのは、だからこそかもしれない。
初めの緊張があってこそ、その後の笑顔が際立つのだ。
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