フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

表現

投稿日:2015/11/30

1033 1

photo by Kaori Kobayashi
cordi by Manami Saito
in YokohamaAoba



[表現力は人の魅力を最大限に写しだす力]

私たちは毎日≪はじめまして≫や、何か月、何年ぶりに再会する≪おひさしぶりですね≫を繰り返しながら撮影を通して人と接し、たくさん笑って、時には泣いて、感情が揺さぶられる日々の現場で“写真を撮る”という一つの行動を繰り返しています。
 
変わらない写真を撮るという行為で、同じ人などいない、“人”を撮っています。
それは揺るがないものであり、毎日を同じようには過ごせない現場の中、私たちは変わらないカメラという機械を用いて、目の前の大切な相手と向き合っています。
いつまでも忘れてはいけないことは、私たちは、人の写真を撮っているという事。
相手の存在、魅力、すべてを100%知ることは出来なくても、それを知れば知るほど、近づけば近づくほど、私たちはその“表現”を模索します。
伝えたいものを表現する≪力≫、すなわち技術や知識の発展は必ず相手に伝えたいことを伝えるうえで必要不可欠なものであり、私たちの表現の幅を発展させていく新たな課題でもあると思います。
人を撮っているという事、そしてそれゆえに、変わらない機械で写真を撮る私たちは、その無機質なカメラで、あたたかい“人”という存在を写し撮る、その表現を最大限に広げていくことが必要になります。
基盤があってこそ、技術は生かされ、技術のみでも、感情だけでも表現は成立しないことを私たちは知っていると思います。
ここのフォトジェニックには、その考えや思いが詰まった文章や写真がたくさん載っているからです。そしてその挑戦、その探究心、発展意欲はとどまることを知りません。
なぜなら私たちは撮影して達成感を繰り返しながら、また新しい出会いを、大切な再会を繰り返しているからです。
大切な思いを忘れずに、では、今、私はカメラで何を写したいのかを考えます。
写したい表現は目の前にいる被写体により様々で、相手の魅力を発見するたびに、その表現に見合った自分の技術を欲します。
しかし、いくら他人の撮影や写真を真似ても、その技術が本当にその相手を表現するために適切でなければ、強い違和感のみが残ってしまいます。
適切な表現で、自分が今できる知識や技術を最大限使って、相手の魅力を写しだすという事。それはいつまでも終わりのない作業です。
私たちは、写真の知識を深めるために、様々な主題を用いて、業後に練習をしたりします。
その時に挑戦したのが、色味の調整、光の組み方、そしてソフトフィルターの有効な使い方の練習です。
この日、日が落ちて真っ暗な室内で、オレンジの明かりを一灯だけつけて、彩度を落とした設定にし、ソフトフィルターで撮影をしました。
練習したものを最大限に利用し、彼女の魅力を表現します。
暗い印象になりがちなこの設定で、ぐっと彼女に寄り、ふと表情がゆるんだその瞬間にシャッターを切りました。ソフトフィルターの効果で、影が出来て暗い印象になりやすいライティングを優しく写しだし、影がある大人な印象を残しつつも、淡い女性らしさを表現することが出来ました。
私は何度でも確認をします。何故、写真を撮っているのか。何のためにカメラで人をのぞくのか。何度でも、何度でも繰り返し、そのたびに、私はもっとこの機械で、人の魅力を撮る、あたたかな表現を広げていきたいと感じると思います。
そうして繰り返すことに終わりはなく、だからカメラを手放すことが出来ないのだと感じます。
シンプルに、考えます。私が出来ることを、最大限、相手に返していきたい。喜んでほしい。もっともっと、表現力を広げていけるように、進んでいきたいと思います。
 

この記事をシェアする