フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

寄り添う

投稿日:2015/1/31

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Photo by  kaori kobayashi
Coordinaite by  ryo takahashi
in Yokohama Aoba
 
 
「“知らない”ものは、撮れない」


写真を撮るようになり、よく質問されることがあります。

なぜ、写真をやっているのか。写真で何を伝えたいのか。何を表現したいのか。
 
私は写真という方法で、自分の存在意義を見出したいという思いと繋がって、何か自分が出来ること、与えられるものを、一瞬でも、少しでも、目の前の大切な人に何かを残せる自分でありたいと願い続けています。
その瞬間が未来に届くことで変わるもの、変わらないもの、蘇るものが人生にはたくさんあります。
その可能性や力を、写真という“形”に込めて、届けられる自分でありたいと、常に考えています。
 
では、具体的にその家族や目の前の大切な人たちに伝えたいものや残したいものを≪写真≫で表現するためには、何が必要なのでしょうか。
 
写真技術、コミュニケーション力、観察力、イメージ力・・・

必要なものを上げればきりがないと思いますが、すべてにおいて共通していることは

“知る”ということです。
 
相手を知る、技術を知る、イメージを知る、それらを知る方法を“知る”。

相手を知って、表現したいイメージが確実に頭の中で再現されなければ、それは偶然が呼び起こしてくれない限り、結果物として写真を生み出ることは難しいです。
イメージも何もかもすべて、自分が知っている範囲でしか表現は出来ません。
もっと多彩に表現がしたいと思えば、まずは知ることからつなげていくしかないのです。
幸せを表現したいと、感情だけで表せたのであれば写真に技術は必要がないことになりますし、技術だけで幸せを表現できるのだとしたら、幸せという確かな正解のないものを、無理やり形にあてはめてしまわなければいけないことになります。
どちらも必要であり、同じものなど存在しない。だからこそ、一つずつ知っていくことがまずは必要なのです。
表現したいイメージを、まずは再現するために必要なのは写真の、イメージの分析です。
なぜ、この写真が好きなのか。なぜきれいだとかんじるのか、魅力があるのか。
そしてそれを再現するために必要な方法を探り、形を変えて目の前の状況にあてはめて、頭にある「知っているイメージ」を目の前の「自分が知っている被写体のイメージ」とリンクさせ、そこにしかない表現を確かにしていくことが必要です。
目の前のお客様に対して感情を最大限表せるようになるために、型にはめないで、新しくそこにしかない形を自らつくっていけるようにならないといけないのです。
それでもおおもとになる主軸のイメージは“知っているもの”でしかなく、そこからしか広げることはできないのです。知らないものは、頭にも浮かばないのです。
感動してもらうために。必要なものはたくさんで、感情はとめどない。
よくばりになっていては何もつかめないのであれば、確実に一歩ずつ、自分に必要なものを固めて、見直して、そしてまた新しい形を作っていく過程が必要なのです。
ただその一枚に集中するのではなく、その過程を楽しみながら、“一枚”に思いを込めて整理していきます。
その瞬間、そこにしかない形が出来上がります。
その達成感を繰りかえし感じる中で、自分の“知っている”物が増え、どんどんと世界が広がっていき、表現も見える物も、広がっていくのです。
知ることで、自分の中の疑問を線でつなぎ解決していき、また次へと進んでいく。
写真という、わかりやすく目で見て表現できるもので、正解がないからこそ、その繰り返しをつづけていきながら追求し、果てしなく世界を広げていけるものなのだと実感しています。
まだ一歩。先は広く、その先をどう広げていくのかは自分次第。
そのために、ひとつずつ着実に結果として残し、目の前のものを大切に出来る自分であり続けたいと思います。
 
 
 
 
お年頃な二人は普段は喧嘩も良くするとのことで、昔の幼いころのようにぎゅーってしたり、べたべた遊ぶのは、少し気恥ずかしいものです。
それでも初めての場所で安心を与えてくれるのも、また互いの存在で。
一人よりも、やっぱり二人。
二人だけの空間を表すために、その互いの距離感を大切にしながら二人だけの空気をつくる一枚の画が頭に浮かびあがりました。
青葉の広い空間を利用し、普段はあまり写らない空間も細部まで写るように被写体を配置し、“青葉店”の店舗で撮影したというイメージを残しつつ、緑の前ボケを入れることで余分な部分を隠すことと、奥行きの表現を可能とし、撮影において自分の存在が写真の中に写りこまないように、二人には細かいポーズの指示はしないで、撮影しました。
ここまでくる過程において撮影しながら出来上がった空間の中、ふたりはいつもの“ふたり”の空気を取り戻していました。だからこそ細かな指示はここでは必要なかったのです。
一言、二言の声掛けと、あとは二人がどうするかの予想。ぴたりとあてはまりました。
 
 
意図しながらも頭の中のイメージの再現を細かくしていくことで一枚が成り立っていきます。
 

75枚をつなげながら、一枚に込める思いを強めていくこと、確実に表現していくこと。
そうして「幸せの表現」と定義されるフォトジェニックの一枚が生み出されていくのだと感じます。

これからも、振り返りながらも一歩ずつ確実に世界を広げていきたいと強く思います。
あてはめず、知っているものの形を変えながら新しいそこにしかない表現を生みだしていくこと。
今年はもっと広い世界に触れられるよう、写真を通して人と寄り添えるように、自ら進んで、可能性を広げていける一年にしたいです。

 
拙いですが、まずは、これが、一歩です。
 

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