フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

唯一無二

投稿日:2015/8/31

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Photo by volvo
Coordinate by yatsu

Lifestudio No.2, URAYASU



「精神の最も普遍的な特質は多様性である」

というモンテーニュの言葉にもあるように、あるがままの姿や美しい瞬間はどんなに同じ場所で撮影をしようとも多種多様であり、私達は常にその多様性を認めその人にしかない美しい瞬間を探し記録していくことが求められます。 場所や、インテリアはいつも変わりません。ただ変わるのは撮影者や被写体といった「人」の部分です。こうした変わらないものと変わるものをかけあわせた時、現れる写真は必ず「唯一無二」のものとなって出てきます。

しかし撮影とは被写体の個性ともいうべき多様で特殊的な部分を「写真を撮る」という均一的の枠の中に閉じ込めることです。その代表的なものが先述した撮影場所やインテリア、あるいはそのスタジオの文化であったり、撮影者の撮り方などです。

この均一的な枠はあまりにもその色が強すぎると、多様な個性はそれはちょうどチームプレイに徹するあまりに個性を無くしたスター選手のように特色を無くしていきます。そしてこのどちらに転ぶかを選択するのは被写体ではなく撮影者です。いわゆる型にはめることも、被写体のあるがままを撮影することも、撮影者自身の選択によって成されていくことになります。

ということは被写体の多様性を抜け目なく写真に捉えるには被写体が自由を得ることが重要になってくるように感じますが、例えばウサインボルトが世界最速の称号を手に入れることができるのは100 m走という競技があるからに他ならないように、均一的な部分がなければ多様性は活かされることができません。いつものスタジオ、いつものインテリア、いつもの撮り方という均一性があることによって初めて多様性が発揮される土台が作られることから、同じ場所で撮ることがよくないのではなく同じ場所であったとしてもその被写体専用の空間に作り上げることが必要であり、重要になってくるのはバランスです。

私はこの写真のような撮り方を良く行います。しかし同じ写真になったことは一度も無いと思っています。

それはもちろん被写体の個性によるところもありますが、被写体のその時の感情や表情、ポーズによって露出や画角、構図などを再構築するようにしています。

 

私たちの撮影方法に取り決めはほとんどありません。75枚の原本を作るということで大きな枠は作られている以外に大きな決まりごとが

ないのは、撮影者も被写体と同様に多様性を持った人間であるからです。これは被写体だけではなく、一緒に来てくれた親御さん、あるいは私たちの人生の中で起きる様々なコミュニケーションも同じです。相手の個性と同様に自分の中の個性、つまり確固たる軸を持っている事が必要であり、軸を持っていながらも相手の個性を認める事が重要になります。認める事で相手も認めるようになり、合意が得られます。この合意においては外のルールや決まりごとなどは関係がありません。だから決まりごとが少ないのだと考えます。

ライフスタジオにおける撮影とは、多様性と多様性、つまり「人と人」が互いを尊重し認め合うことによって「唯一無二」の写真が出来上がる事だと、私は思います。

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