フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

motion

投稿日:2015/1/31

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Yokohama Aoba No.99
Coordi by Kaori / Photo by Kudo

人を被写体にした写真とは、「生」なるものである。

私たちは毎日写真を撮っています。
その被写体となるのは、「人」です。
「人」を被写体としているということは、「人」をテーマにした写真を撮っているということです。
「人」をテーマにしているということは、写真の中で「その人が誰であるのか」を表現するということです。

「その人自身」を表現するのに、誰にでも当てはまるポージングやパターン化した撮り方では、
「その人」を表現することにはなりません。
「その人自身」を表現した写真は、カメラ目線の写真かもしれませんし、もしかしたら笑顔の写真かもしれません。
それはお客様は喜ぶ写真なのだと思います。
だけど、「その人自身」を表現するときには、いつも誰もが見ている表情だけではなく、
ふとした瞬間に現れる、普段は見過ごしている表情を美しく表現する必要があります。
そうすることで、家族は被写体である「その人」の生をより鮮明に感じることができると思うのです。

ポージングをして止まっているだけの写真では、その表情を引き出すことは困難です。
その人の眼に見えるアイデンティティとは、動いたときに現れるものであると思います。
「動く」ということは、被写体の自発的な意思が含まれます。
そのため、「動きと動きの隙間」や「静が揺らいだとき」に、その人のアイデンティティである「生」を感じられるものになるのです。

大きな動きでなくてもいいかもしれません。
何かを自分の意思で行うこと。
何かを見ようとしたり、何かを触ったり、匂いを嗅いだりすることは、
自分の五感を使って自分の意思で確かめようとすることです。
歩いたり、後ろを向いたりすることは、自分の意思でそこへ向かおうとすることです。
年齢が高ければ高いほど、初対面の人の前で興味本位で自由に動くことが少なくなります。
「人」をテーマにした写真を撮ろうとすると、そういった状況で「その人自身」を撮ることは難しくなります。

しかし、私たちも「人」です。
自分の意思で行動をしている「生」ある人間です。
だから、私たちは自分たちの意思で条件を変化させることが必要となってきます。
その条件が被写体の動きを誘発させることです。
被写体を固定せず、動きを誘発させて、その隙間を撮っていくこと。
これが被写体を動かすことになり、こうすることで「生」の在る写真を撮ることができると思うのです。

私たち撮影者は「人」として、被写体である「人」に対し向かい合い、動き、動かし、
「その人」を表現していくこと。
「生」を表現すること。
これが私たちの価値のひとつであると思うのです。

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