
彼は人差し指の爪に詰まっている何かを、爪を使ってカリカリカリ・・・と音が聞こえるかのようにほじくりだそうとしている。
彼の目に映っているのは人差し指の爪だけだ。
一眼レフカメラなどで用いる、接写向きに設計された写真レンズの「マクロレンズ」というレンズがあるが、
まさにマクロレンズをつけたかのような近い距離で,爪の何かに焦点を合わせている。
周り存在はぼやけて見えていないし、気にしていない。
私の存在も、アシスタントの存在も、今自分が撮影されているという事もきっと忘れている。
つまり彼は爪の何かに異常に集中している。
そして私自身も彼を集中させるために、何も言わないし、彼を見つめ淡々とシャッターを切る。
そして、爪の何かが取れる。顔をあげて私達の存在に気付く。周りを見渡しどこなのかを確認する。
映画館でエンドロールが終わり、真っ暗だった映画館がパッと明るくなった瞬間のような感覚なのだろう。
爪の何かが取れて、ほっとして日常に戻る。
何かに集中するというのはこういうことなのだろう。
私はこの写真を見つめ、何かに集中しなければと思った。
それはなんなのか?
お客様。従業員。他人。自分。写真。インテリア。売上。いろいろあるだろうけど、つまり今はlifestdio水戸。
そしてそれはなぜか?
集中すると何かが変化するし、何かが達成されし、何かが成長する。
彼の爪から取れたのはただの垢かもしれないし、お菓子の食べかすだったかもしれないし、もしかしたら価値のある宝石だったかもしれない。
私が集中した先には何が得られるのだろうか。
そんなの誰もわからないが、正しいことに集中したら正しい答えが得られることを信じよう。