
夏の暑さを本格的に感じる朝、
爽やかに彼女はスタジオに現れた。
2歳という年齢は、1歳の赤ちゃん期を過ぎ、
そろそろ自我が芽生えてくる微妙なお年頃。
どんな子なんだろうと、
どきどきしながら撮影に入る。
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しかし彼女はカメラの前でも全く物怖じせず、
スタジオの中にあるいろいろなものに
目を輝かせていた。
フランスパンをかじる真似をしたり、
ふと近づいてカメラのを覗き込み、
レンズフードすら彼女のおもちゃと化してしまう。
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その瞳はきらきらと印象的で、私はそんな彼女の一瞬一瞬をひとたりとも逃したくはなく、
夢中でシャッターを切った。
アシスタントの用意した帽子やスカーフも身にまとうことに全く抵抗がなく、
むしろ、女の子である自分を楽しんでいるかのようだった。
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彼女のいきいきとした佇まいは私達を夢中にさせた。彼女にその意識があったかは全く定かではないが、カメラマン、アシスタント、被写体である彼女との間に一体感のようなものを感じた。
彼女の持つ輝きを必死で追いながら、時には少し誘導しつつ、とても濃密な1時間であった。
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この1枚は、ポーズや表情を指定したものではない。彼女らしい仕草と、いきいきとした視線、そして彼女の存在感を際立たせる、黄色の配色が、マッチした瞬間を切り取ったに過ぎない。
しかし今でも、その存在感は私の心に残り、また少し、大きくなった彼女に会いたい、その瞬間を切り取ってみたい、と願望に刈られる。
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カメラマンが被写体の存在・表情を恋をするように見つめる、その感覚を大切にしたい。