
写真を撮る上でバランスが大切だということは言うまでもない。
もっとも、ひとことでバランスと言ってもその捉え方は様々だ。
色や明るさのみならず、重さや強さ、硬さ・・・たくさんの要素が一枚の写真のバランスに関わってくる。
窓の前に立つ少女。
セットの構造上被写体の真正面からアプローチすることはできないので、背後の壁面に対して若干左斜めからのアングルでアプローチすることになる。
必然的に壁面の水平線に歪みが生じ、それが写真に流れを生み出す。
左から右に移動する流れ、そして屋根の重み。
全体的に右に偏りがちなバランスを補う要素・・・それは視線。
少女が画面左に顔を向けることによって、右への流れを食い止めてはいないだろうか。
屈託のない彼女の笑顔がこの写真の均衡を支えている。
そして、それを補うように全く同じ向きに力を加えているのが、傍らにあるカゴ。
白を基調とした背景の中で被写体と同色のカゴがまるで彼女に同調するかのように左への勢いを作ることによって初めて写真全体の均衡が保たれている。