フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

一緒に

投稿日:2017/12/31

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Photo by Lisa
Coordi by Suzuki
 
3兄弟の末っ子。
この日はお兄ちゃんたちが来ていなかったので彼女は少し心細かったかもしれません。
慣れない着物ということもあり、最初は緊張していました。
笑顔こそ見せてくれるものの、心からの笑顔というより最初は少し無理して笑顔を作ってくれていたのかもしれません。
私たちとの会話を通して徐々に慣れてきて、最終的には心からの笑顔と彼女らしい自由な姿を見せてくれました。
 
初めての人の前で見せる建前の彼女の姿から、チラッと覗かせる本当の彼女の姿。
7歳ともなると、学校でも敬語に触れるようになり、高学年の先輩児童や大人との距離の取り方を自然と学ぶようになります。
その為、建前が使えるようになることは悪いことではなく当たり前で成長の証かもしれません。
 
2シーン目、徐々に慣れてきた彼女。
光と影を使い彼女の持つ2面性を表現する為に順光を選択しました。
影は建前の彼女を表し、光は本当の彼女を表し、
影の中で、光が差した場所からチラッと覗かせる動作から、
本来の彼女の姿が覗き始めた様をこの1枚に表現しました。
光と影を分かりやすくする為にモノクロを使いました。
 
彼女の前にスッと植物を持ってきたのは鈴木さんです。
急に課題を突き付けられたように、一瞬これをどう活かそうか、どう切り取ろうか戸惑いましたが、撮影を通して彼女の姿を観察していたので、今回のイメージが湧き、葉の裏を覗いてもらう動作を呼びかけました。
そして前に置いたものが植物であると分かるよう、葉脈を写すようにかなり絞りました。
 
撮影は人と一緒に作り上げるものだということ、鈴木さんから教わりました。
この写真も鈴木さんが植物を用意してくれことから生まれたものです。
そして被写体の彼女の存在があったからイメージができたのです。
 
この写真だけに関わらず、大切なことはほとんど鈴木さんから教わりました。
鈴木さんと一緒に過ごしたこの1年があって、この写真があります。
 
 
 
ちょうど1年前。
2017年1月より私は草加店への配属が決まりました。
 
当時所沢店で働いていた私はこのメンバーで働く所沢店が大好きでした。
撮影も楽しかったし、撮影以外の時間もずっと笑っていました。
もちろん注意を受けることもありましたが、基本的に所沢店のスタッフは皆優しく、社暦の近い同僚も居たのでとても居心地が良かったです。
 
そんな所沢店を離れ、新しいメンバーでの草加店。
挨拶は交わしたことがあるものの、どんな人でどんな撮影をするのか、よく知らない先輩方。
緊張しないわけがありません。
 
店長は鈴木さん。
鈴木さんは、私がライフスタジオのスタッフで一番最初に会った人です。
面接時に駅までの送り迎えをしてくれ、緊張しないようアドバイスをいただけたので、リラックスして面接に臨めました。
今、私がライフスタジオにいるのは鈴木さんのお陰かもしれません。
 
入社してからも全体会議などで会う機会はあり、会議で司会をする鈴木さんの姿しか知りませんでした。
私が入社して驚いたことの一つに全体会議がありますが、私の経験したことのある「一般的な会議」とは大きく違います。
レクレーションがあったり、皆真剣に個人をプレゼンしながらも、ボケ要素を取り入れていて、会議のようでお祭りのように感じました。
そうした中、私の知っている鈴木さんは、変な格好でボケながら司会をする人でした。
 
表面的なことしか知らないまま、昨年の年末に鈴木さんにお会いしました。
2017年の草加店で何がやりたいのか、このメンバーで働くことになり、今どんな気持ちなのか尋ねられました。
よく考えれば、相手のことを知らないのはお互い様で、私だけが鈴木さんや他の先輩方を知らないのではなくて、鈴木さんも他のみんなも私のことを知らないのでした。
不安を持っているのは私だけではないと、当たり前なことに気付き、一緒に頑張っていこうと思いました。
 
しかし、いざ草加店が始まってから最初はうまく溶け込むことができずにいました。
撮影中もカメラマンに合わせ、指示に従うだけ、カメラマンが作った雰囲気にリアクションをして乗っかって楽しんでいるだけ。
それは顧客に寄り添っていなければ、スタッフにも歩み寄っていなかったような気もします。
草加店の先輩方は写真に対してこだわりが強いと勝手に決めつけ、撮影の流れはカメラマンに丸投げしていました。
自ら行動を起こさず、自分を撮影に投げ出さないことで、常にある程度の距離を保っていたのかもしれません。
 
そんな日々の中、先輩方に言われることがありました。
「一緒に撮影を作っている気がしない。」
「普段のリサちゃんらしさが撮影に出ていない。」
 
一緒に作るってどうやるんだろう、と思いながら
ある日、先輩同士のペアで撮影しているところを見ました。
息の合った撮影で、二人で盛り上げながら空気を作って、二人で被写体を動かしていました。
 
コーディネーターも一緒に撮影を作っていいのだと、
作らなくてはいけないのだと、そこでようやく気付いたのです。
 
それからは、2月から始まるカメラマン教育を目標にアシスタント技術を徹底的に鍛えていただきました。
頭で分かってはいるもの、いきなりは実践することができません。
鈴木さんにはたくさんたくさん怒られ、厳しい言葉もいただきました。
叱ることが簡単なことではないこと、過去の経験から知っているつもりです。
感情的になってはいけないし、理論がないと無茶苦茶なことになるし、叱ることで相手に嫌われるかもしれないし、言い方ひとつで伝わり方は変わってきます。
鈴木さんは厳しさを私の為に、恐れず与えてくれました。
 
しかし分かってはいても、当時は毎日のように怒られて落ち込む日が多かったように思います。
悔しさをバネに、認めてもらいたいが為に、なんでもやるようになりました。
たとえ失敗したとしても鈴木さんはチャレンジしたことを褒めてくれました。
日々成長を実感し、多くの鞭と少しの飴を与えながら鈴木さんが私を育ててくれ、涙の数だけ強くなれたと感じます。
 
2月の写真教育には間に合いませんでしたが、見送られたお陰でアシスタント技術においては胸を張れるようになりました。
自信がつくと余裕も生まれ、素直に子供が可愛いと思え、今ではどんな子も我が子のように愛しく思います。
それが撮影に表れ、自分が主体的に撮影を作りながら、時にはカメラマンに撮らせるかのように被写体を動かすことができるようになります。
 
そしてついに5月から始まった写真教育。
毎日のように鈴木さんが一緒に撮影に入ってくれ、練習にもたくさんお付合いいただきました。
写真の技術面然り、カメラマンとしての心構え然り、1から10まで教わりました。
いや本当は20.30.40…とまだまだ教わることはあったのかも知れませんが。
途中で伸び悩み、結果としてなかなか表れてこない時にも、鈴木さんは私を諦めずに指導してくださいました。
写真のことで悩んだり、躓く度にどんどんネガティブになっていく私に対して、
いつも鈴木さんが言うことは「写真を楽しめ!」ということでした。
 
自分で写真を作る楽しみを
自分で見つける新しい発見を
写真を通して広がる価値観・世界観を
 
「こうしなければいけない」という固定概念が強い私を軽くしてくれたのはこの「写真を楽しめ!」という言葉があったからです。
まだまだ私の頭は固いですが・・・
 
また、この言葉は写真を撮ること自体を楽しめ!ということでもありますが、
撮影全体を楽しむことも意味すると解釈しました。
 
コーディネーターと一緒に空間を作りあげ、一緒に写真という結果物を作りあげることで撮影はもっと楽しくなること、コーディネーターをやっている時に気付き教わった筈でした。
撮影を楽しめば、被写体も楽しくなるし、コーディネーターも、自分自身も楽しくなり、写真にも表せるのです。
今度は私がコーディネーターも巻き込んで、時には巻き込まれて一緒に撮影を楽しみシャッターを押す時なのです。
 
鈴木さんから教わったことを次に引き継ぎながら、今後も写真を、撮影を楽しみたいと思います。
 
 
 
 
 
草加店に来れて、良かったです。
 
 
 
この1年、一緒に歩んで、時には一緒に走ってくれて、ありがとうございました。
 
ここから先の道は、しっかりと、自分の足で。
 

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