フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

remember

投稿日:2017/12/31

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photo fujita 
coordinator tanaka

彼とは初めて会ったのは6年も前で、そのときは赤ちゃんでした。
今は6歳。もうすぐ入学の年になります。 
一年に一度来ていただいていましたが、私はなかなか会う機会が持てずこのときは久しぶりの再会でした。写真を撮りたいと予約をくださり、撮影の希望があるのはたいていの場合ママさんなのですが、こちらのご家族はパパさんが写真が好きでブログも書いており、よく話してくれる方でした。スタッフのことを覚えてくれており、私が撮影に入らなかったときも「藤田さんによろしくお願いします」と言って下さっていたようで、たなちゃんがそのことを教えてくれました。
予約の入った段階で、彼のことをよく知るたなちゃんと一緒に、彼に再会できるのを喜んでいました。

彼がまだ赤ちゃんの時にパパさんから言われたのは「笑顔はよく撮れるので、仕草を撮って欲しい」ということでした。
初めて言われたことなので、とても記憶に残っています。
言われたときは「なるほど」と思いつつ、「さて、」とも思いました。
どう撮ろうか、頭をフル回転させました。

写真といえば笑顔というイメージは強いです。
現に、笑顔の写真を欲しがる方は多くいます。カメラを向けるとぎこちなくなってしまう子が多いからだと思いますが、ご家族が写真に残したい、と思うのはやっぱり心から笑っている顔です。だから私たちはまず先にお子様の心を掴むための練習をします。
でもすぐに自然に笑える子であれば、確かに笑顔を引き出す難しい努力はあまりいらないのかもしれません。彼もやっぱりよく笑う子でした。
そのままとれば普段の写真に、背景と光、衣装が加わった具合になるでしょう。
笑わせることはできるとすると、次に必要なのが動きをつけること、そしてそれを「形にする」ということです。

このときは特に仕草などの希望はありませんでしたが、やはりよく笑う子でしたので、笑顔ばかりでなく普段見られない一面も撮れたらと思いました。
赤ちゃんの時と違うのは、自然に仕草は出てこないという点です。
むちむちな手や足が動くだけで赤ちゃんは可愛いものですが、これぐらいの年齢になると少し動いたぐらいでは形になる仕草は出にくくなります。

仕草の写真というのは言い換えると自然な写真ともいえます。
ライフスタジオに来ていただく方で「自然な写真が欲しい」という人は多くいます。
そのため私たちカメラマンはよくよく考えなければなりません。「自然な写真とは何か?」というのは何度も議題にあがるテーマです。

子供がまだカメラを意識しない年齢であれば、コーディネーターと遊ぶことで仕草自体は結構出ます。年齢が高くなってくると、大人を気にしない自由奔放な子はあれこれ遊びますが、カメラを気にして固くなってしまう子も少なくありません。
また自由に動いていたとしても、カメラに背を向けていたり、ずっと何かに集中して変わり映えがしなかったり、背景がなにもなかったり、光がなかったりと、不都合な部分も色々出て来ますので、完全に動きを被写体に任せるというのも少し違います。

そこで行う作業としては、自然な動きをどうやって被写体に負担なく行わせるかということではないかと思います。
しかしただただ動きを引き出してシャッターをきるスナップというわけにもいきません。スナップは、被写体の動きを中心に考え、瞬間を逃さないよう拾ったものです。お客様の求める「スナップではないが自然な写真」との違いは、余白や副主体の使い方にあるのではないかなと思っています。それが形にするということではないかと考えます。

少し前にブログで、被写体をインテリアのストーリーに組み込むことを書きました。
ストーリーへの組み込むというは、その空間を取り入れて世界観を作ることです。
空間を取り入れるとは写真の中に副主体をつくるということと考えています。
この場合の副主体は左のテーブルです。
テーブルを副主体にするためには横の構図にする必要がありましたが、横の写真というのは空間が多く入ってくる分整理する範囲が広くなります。
そのため余計なものが入らないようはじめから場所を整えておく必要があり、部屋の空間によっては全身の横写真を撮れる場所が少し固定されます。頭の中にあったのは、どうすれば、バランスよく彼の全身とインテリアをおさめられるかなということでした。
彼のコーデは全身のイメージが固まっていたので、全身で撮りたかったのです。
彼の全身のコーディネートを潰さないように、またカラフルな色の多い2階のインテリアから浮かないように…とどこに位置させればいいのか考えました。
テーブルは固いイメージながらもガラスのおかげで重たくはなりません。色味も2階の中では落ち着いたものなので、静かな存在感を持ってくれます。
彼の座った椅子の意味合いも、テーブルと他の椅子があることで意味が出てきます。

次にポーズですが、ほどよく肩に力をいれない、抜け感のあるポーズというのは、モデルではない素人には難しい芸当です。抜け感といっても腰を入れる、肩を下げるなど、やることが多くあります。それをつくるためにどう指示するのかも知恵の必要な部分ですが、もうひとつ私が昔教わったのは「ポーズが完成する前にシャッターをきる」ということでした。彼がサングラスをかけてテーブルに手を置く前に撮ったのも、それがあったからでした。 

仕草を引き出して、あとは形にするというのは、カメラマンが写真の中で主役である被写体と他の要素を融合させる作業が必要なのだと思います。

ちなみにサングラスはポーズの完成する直前にたなちゃんがかけてくれたものでした。
そのおかげで写真の中に、左の副主体に負けない被写体の存在感が出たと思います。
照れて笑ってしまった口元もなんだかニヒルに見えます。。
サングラスやコーディネートのイメージに合わせてクールなイメージのポーズもいいと思うのですが、カメラでも画角の中でもないどこかを見ている顔、手、少し動きが欲しくてちょっと頑張って曲げてもらった足、少し微笑んだ口元、100%全部指示をしたわけではなく彼に任せて、どう切り取るかは私に任せてもらって完成したこの一枚がナチュラルでお気に入りです。
クールな格好ながらもまだまだ子供らしくて可愛いのですが、赤ちゃんだった彼が少年になったかっこよさも入った写真になったなと思います。



 

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