フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
贈り物
投稿日:2017/5/31
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Photo by Shie
Coordinated by Lee younseong
写真を見る人の写真家からの贈り物は
日常で見逃されている美を時々提示すること
Coordinated by Lee younseong
写真を見る人の写真家からの贈り物は
日常で見逃されている美を時々提示すること
この間ある写真家の写真展へ足を運び、ここ数年ほど日常という美しさについて考えているところに出会った言葉でした。
私達は写真で何を残し伝えていくのか、、、
この場所にいればどこかで悩み考える場面があると思います。
このご家族とは半年前に一度会っていて、その時はママさんと上のお子様の2人で遊びにきてくれ、下のお子様はまだお腹の中。
ママさんは元気いっぱいに動くお子様を時に叱りながら時折、愛おしい表情で見守っている姿が美しくとても印象的な方でした。
お子様が人前で恥ずかしながらも元気いっぱいに遊ぶその姿はいつもの光景なのでしょう。
笑みがこぼれリラックスしながら見つめる姿に、その日常の風景が浮かびました。
2度目に会ったのは、半年後で下のお子様が生後1ヶ月の時でした。
その時はパパさんも遊びに来てくれて家族4人で。
ワチャワチャと元気に楽しく進む撮影に常に笑うご家族と私達。
常に笑い声が飛び交っていました。
興奮が冷めあらぬ中、中盤で今回メインである下のお子様のソロのシーンという所で、
泣き出してしまったお子様。
その時、自然と近寄り安心させてあげようとお子様を抱きかかえた姿は前回見た表情と変わらないものでした。
表情から読み取れるものは沢山あると思いますが、1つに気持ちと繋がっているという事があります。
自然と出たその行動と表現から、きっと普段もそんな姿や表情でお子様を育ててくれているのだろうと思います。
しかし、その思いや気持ちを伝えているママさんの姿を自分自身で見る事は中々出来ません。
ここで私が重視したポイントは、リラックス空間を作ることでした。
何故ならば、馴染みのない場所でよく知らない人達との大人同士の関係は複雑なもので、赤の他人となると更に複雑。
相手の表情や言葉、仕草などからその人が考えている事を読み取ろうとしますが、その読み取り方は人それぞれで、深読みする人もいれば、言葉の解釈の違いがあり話が変わってきたり、無関心さを表立てに意思疎通にならないなんて事もあります。
もちろんそれだけではなく、素直に接してくれる人や理解しようとしてくれる人など様々です。
色々様々多種多様、それが人です。
そんな中で共通している要素の1つに、自分のリラックスできる空間では自然な表情を出せて、気持ちも安心している余裕から楽しめるという事があります。
そこから関係を深められる事が多いという事。
記念写真館のように決まったポーズや表情で数枚撮影する方法では残せない表情でもあります。
元々壁が無く素直に向き合ってくれるママさんの人柄と楽しい雰囲気の中、この瞬間で自身ができる事を精一杯考えた時に、リラックスする空間を作ると同時に、前々から考えていた日常というものを惹き出し美しく残すことでした。
よく日常とはつまらないものだとか平凡な日常など、日常というものに対してマイナスなイメージを持つ言葉が存在しますが、本当にそうでしょうか?
もちろん毎日同じことの繰り返しで変化のないように思える日々が続く事もあると思います。
ただ少なくとも私達はそのように感じている事を写真を通して残すのではなく
また日常を日常としか見ていなかったものや何かに縛られている固定概念を崩していく必要があります。
時間の流れの中でその人の思いや考え、誰かと共に経験してきたものなど様々なものが含まれ作らる日々。
そこで育まれるもの失うもの。
自分がいて誰かがいてくれるから作られる存在。
人生とは人と共に生きると書いて”人生”です。
そう考えると日常とはその人が選択してきた、かけがえのない宝物のように思うのです。
自然な姿を残して欲しいという言葉の中には、この日常から通づるものも感じます。
そんな日常という存在を美しく残し贈ろうと考えました。
この写真にはもう1つ光と色というポイントが含まれています。
肉眼で、見えないものまで表現するには、沢山の要素があると思いますが、この写真は光と色に重点を置き、伝えたい事をシンプルに伝えられる手法を取り入れています。
まずホリゾントに布団をひき、そこに被写体であるお子様を寝かせてもらいました。
広く何もない空間のホリゾントは邪魔をするものが少なく、容易に被写体以外の人も被写体に近づけるというポイントがあり、どんな時間帯でも光を作る事が出来、シンプルに伝えたい事を伝えるのに打って付けです。
また、色という存在は人に与える印象を変えてくれる効果があります。
暖色系の心理的効果は、暖かさや優しさ、リラックス感や嬉しさ、時間を長く感じるなどがあり、その中でも赤というのは情熱や愛という印象を与えます。
カメラの設定はオートではなく太陽光に設定し、前ボケにはすこし赤色のイスの反射光を利用し、ママさんの気持ちという目に見えないものを光と色に込めて表現しました。
彼がこの写真を見返した時、何を感じてくれるのでしょうか。
日常の風景はいつかは忘れ去られてしまうかもしれない日々でもあり、平凡で毎日同じような繰り返しに思えるかもしれない。
しかし、日常の中で生きるからこそ気づかれない驚きや感動がある。
それに気づき美しく残し、贈ること。
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