フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
感情
投稿日:2017/3/30
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大人になるにつれて子どもの頃に感じた感情は薄れていくものです。
しかし大人になって、記憶になかったはずの小さい頃の写真をみると、
なぜかその時の悲しかったり楽しかった感情を思い出すことができるような気がします。
自分がどんな子どもだったのか
どれだけ育ててもらってきたか
言葉だけでは伝えきれないものを
写真は伝えてくれます。
もし、感情を未来の誰かに伝える手段を考えたときに
その時感じていたことを文章を書いたり
言葉で伝えたりもできますが、
それらはどうしても伝え手の感情や主観が入ったものになってしまいます。
その点、写真は客観的にその瞬間の出来事や感情を残すことができる方法だと思います。
そんな写真をとるために、私が意識したことは2つあります。
まず一つに、カメラマンが被写体に対して先入観を持たないことです。
カメラマンは被写体のイメージを考えて撮影します。
そのイメージがカメラマンの考えた一方的なものでは
撮られた写真もただ被写体に演技をさせたものになってしまいます。
そして被写体はやらされる恥ずかしさや違和感を感じます。
私は写真を撮るときまず最初にすべきことはまっすぐに被写体へ向き合うことだと思います。
大人の撮影であれば、事前にお話をしっかり伺ったり打ち合わせを重ねることで
その人を知っていくということができます。
しかし、私たちが向き合う子どもという対象については単純なやりとりでは
分かり合えない難しさを感じます。
それは子どもがまだ未完成な存在であること、もっと言えば私たちの考えるよりも大きな感情を持っているからです。
例えば、大人は相手にとって正解の答えを探しながら話しますが、
子どもは自分の思いを1番端的な方法で伝えます。
たとえこちらの指示と違う動きをしても、それはその子なりの答えであり、間違いではない。
泣いたり笑ったり黙ったりコロコロと変化する行動とその感情の意味を読み取るのは大人になってしまった私たちには難しい。
だから私はいつも撮影のときは自分がその年齢のときどんなことを考えていたのか思い出しながら、
多分こういうことを伝えたいんだろうなと考えながら接しています。
そして二つ目に、そのとき感じたものをすぐ写真に反映させなければならないこと。
ただのスナップ写真と表現された写真の1番の違いは、カメラマンの意図があるかどうかだと思います。
コロコロと感情が変わる子どもをそのまま撮影するだけでは子どもの動きや表情もただのバリエーションになってしまいます。
なので、子どもが発信する感情を理解した上で、どうすればその子の思いに近づけるか、
もっと理解するにはどんな質問を投げかけようか考えながら撮影します。
この写真は被写体を理解しイメージを引き出して、それに合わせた表現ができたと思った1枚です。
◯被写体のイメージと表現
7歳という年齢は世間的にはまだ守られるべき子どもですが、
内面は大人と変わらない感情をもっていることに気付かされます。
自分の意思は有っても、相手が大人であればそれを出すことを躊躇したり、考えを合わせるようなことができる場合もあります。
だからそれに合わせて大人の様に撮るのではなく、
大人の前では見せない普段の7歳らしい姿も残したいと考えます。
この子に会ったときは、とても聞き分けも良く大人の言うことも理解してくれるお利口な7歳という印象を受けました。
なのでそういったかっちりと光を組んで、視線の指示もしてというような撮影は容易にできました。
そうすると、私の中にこの子がよりこの子らしく振舞う姿を撮りたいという願望が芽生えました。
そのために、少し離れたところから観察します。
なにが好きでなにが苦手か、ベッドで遊ばせてみたりしても、写真を意識したきっちりとした感じはありました。
もっと夢中になれるものはないかと探したとき、お花屋さんになりたいと話してくれたことを思い出しました。
ジョウロを渡せば、はしゃぐわけではないですが、わくわくした様子がありました。
それは、ジョウロという新しいおもちゃを手に入れた高揚感ではなく、
自分の将来の理想像があってそれに近づけた嬉しさだったのではないかと思われます。
ジョウロがあれば、お花屋さんになれる。
たくさん髪飾りをつければお姫様になれる。
たくさん練習すればもっともっと上手になれる。
そうやって子供が未来を想像する心には疑いも不安もなく、
憧れや何をしようかという想像や前向きな感情が溢れます。
そんなところが子どもの持っている1番の純粋さだと思います。
未来に対する純粋で前向きな感情をずっと覚えていてほしいと思いました。
被写体の内面を残したい場合は直接あまり声をかけることは止め、
被写体自身がなにかに気づいたり感情に変化が起こる瞬間を察知して撮影しました。
なにか動作をする姿ではなく、動作をしようと思いついた瞬間に
本人として無意識な表情やその変化にその人特有の表情や柔らかさが出ると感じるからです。
何かを感じても、頭で考えそれを表情や言葉に出すころにはもう感じたものは古くなり、
そんな感情表現には人に見られる意識や計算が入っているものです。
被写体の感情が入った写真を作るためには、被写体が何かを感じるのと同じ瞬間に
カメラマンも何かを感じてシャッターを切らなければなりません。
人の写真を撮る上で1番大切なものはその人と感情を合わせること。
カメラマンの技術は、ただ撮る人というのを抜け出して、被写体の1番の理解者になっていくこと。
写真は撮るものではなく、一緒に作っていくものなんだと教えてくれた撮影でした。
photo by noro
witten by noro
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