フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
いつの間にか
投稿日:2016/7/31
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photo by Yumiko codi by Kazumi
“いつの間にか”心を開いていた。
私はいつもその“いつの間にか”という過程を大切にしている。
心を開くっていったいどんなこと?
友達であろうと、恋人であろうと、家族だろうと、
誰しも「よし!心を開こう!」と思って心を開くのではない。
いつの間にか自然と素になっていた、笑っていた、会話が弾んでいた…。
意識することのない、その“いつの間にか”。
「こんなふうに撮りたい」「こうして欲しい」etc…
写真を撮っていくうえで自分の思い描いているイメージがあります。
もちろん、それがうまくいくこともあれば、そうやって自己を縛りつけるが故、
相手を真剣に見ることを放り出し、焦り、苛立ち、
対する人への心が閉ざされていると勝手に思い込む…。
日々の撮影には時間が限られているので、ずっと待つこともできないでしょう。
それでも私はできる限りの時間を費やし、コミュニケーションを図り、
相手を知り、相手を想い、自分を知り、自分をさらけだし、自分の想いを伝えたい。
心の扉はとてもデリケートで壊れやすい。
だからこそ強引にこじあけてしまったり、簡単に鍵をあけようしたくないのです。
写真の彼女は恥ずかしがり屋で、
とても緊張していて、とても不安そうで、手を握ると少し熱くて。
それでも懸命に私たちに応え、まっすぐに向きあってくれました。
泣くことはなかったので、表情は少々固くとも撮影を進めていくこともできたでしょう。
だけれど、彼女の“いつの間にか”を待ち続けていた私は、
急かすことなく、強いることなく、彼女のテンポに合わせて、
ゆったりとした気持ちで少しづつ少しづつ心の交流を図っていきました。
顔と顔を合わせて相手の息づかいや体温を感じる距離での関係性。
はじめこそ声すら発しなかった彼女が、次第にリラックスしていき、
“いつに間にか”心にかかっていたカーテンをあけてくれていくのが分かりました。
心が解放されたという高揚感。
心が誰かと通じ合ったという安心感。
そんな想いを少しづつ肌で感じていきました。
夏の始まりを思わせる、きらきらとした陽射しが照りつけるその日。
私は自然と玄関の扉を開けていました。
陽射しをさえぎるカーテンすらも“いつの間にか”開けたくなるような、
彼女の心のカーテンが開かれた瞬間を表現したかったから。
“いつの間にか”心を開いた彼女の優しい顔つきは、
そのきらきらとした陽射しはもちろん、彼女自身をさらに美しく見せてくれました。
私が限りある時間のなかで大切にしたいこと。
それは“いつの間にか”という自然な、意識しないうちに心を開く瞬間だ。
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