フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

Best of you

投稿日:2016/5/31

931 0




新横浜店で、たくさんの母と子の写真を撮ってきました。

以前にも書いた通り、Baby撮影店舗である新横浜店においては、『普遍的に美しいBabyの写真』を追求し続けることが、責任であると思っています。
1年半、その責任を果たすべく、人見知りBabyも場所見知りBabyも、暴れん坊でも泣き虫でも、みんなそれぞれに、大切な思い出になるような時間を過ごしてもらえるように、『美しい思い出の記録』として写真を残せるように、試行錯誤と悪戦苦闘をし続けてきました。
今年に入ってからは、『New Birth Baby』と銘打ち、生後半年未満〜新生児を対象とした撮影も行っています。過ぎ去ってしまう時間を大切に、成長の過程を大切に、変化の大きい時期の写真を残したいという想いから、『記憶の、記録』として、新横浜店はBaby写真を美しく残すこと、に全力を注いできました。

Babyの写真を、『可愛い』という切り口以外から説明することは、いつもとても難しく感じます。
私は、Babyに対して『可愛い』と思わずに撮影したことなど、今までに一度たりともありません。技術的な計算なんて二の次で、『か、かわいい!!!!』と思ってしまったらカメラを放り出して抱きしめてしまうかも知れない程(実際に何度かやってしまったこともあります)、その無垢な存在感や、きらきらした瞳や、まん丸いお腹やほっぺた、ちいさな手、おむつのお尻、眠くてぐずる泣き顔も、顔をくしゃくしゃにするあくびも、そういったBabyのBabyたる所以を表すような全ての要素を、ことごとく愛しています(こう書くとただの変態みたいですが)。
冷静に、ちゃんと論理的に撮影を遂行しなければならない、と言い聞かせながら、心はいつもBabyの可愛さに捕らわれてしまいます。
『可愛い』と思うそのこと自体は、別に悪いことではないのかも知れません。
可愛いと思う、その気持ちが観察を始めるきっかけになります。自分が何故そう思うのか、それを誰が見てもそう思うように表現できるか、そういうことを考えながら、『普遍的に美しいBabyの写真』となるように構成します。
しかし、シャッターを切る理由のすべてを、『可愛いから』を基準にすることは、撮影者としてあまりに浅はかであると言えるでしょう。
可愛い写真を撮るだけであれば、ライフスタジオである必要はありません。

この時、眠ってしまったBabyに優しく寄り添うママの表情を見て、私は『母親、とはこういう表情のことなんだ』と強く感じたことを覚えています。
それくらい、彼女の表情は私が思い描く抽象的で、ある意味では一般的な『母親』のイメージに、美しく合致しました。
眠っているBabyを起こさないようにそっと寝かせながら、その口元が綻んだその瞬間、その表情が、この3ヶ月でこの女性が『母親』として自らを顕わしてきた全てだと感じました。
彼女を母として顕わすのは、安心して眠るBabyの姿。Babyにピントを合わせながらレンズを解放にし、寄り添う『母親』という存在を柔らかく写しています。寄せた頬から伝わる熱、安心して眠るBabyの寝息まで感じられるかのような空気感を出したくて、ふたりの存在感に集中してフレーミングしました。
こういう写真を撮る時に、私は、そのBaby本人や、そのパパママにとって、価値ある写真を残したいと思っています。
生まれたばかりのBabyが加わり、新しい形になっていく『家族』の、始まりの姿。
まだひとりでは何もできないBabyが、ただそこにいてくれるだけで、パパとママの心に掛け替えのない気持ちをもたらしてくれるということ。
ひとりの男性や女性が、夫になり妻になり、父になり母になる、その姿。
自らの何もかもを置いて、我が子に心を注ぎ続ける愛情深い時間の、記録。
価値のあること、とは、もう二度と戻ることのない、過ぎ去ってしまうこの時間が、どれだけ寝不足で大変でてんやわんやだったとしても、大切な、本当に大切な時間だったということを、未来の「あなたたち」に思い出してもらえるような、そんな写真を残していくことなのではないでしょうか。

そして、それらを表現しようと試みた新横浜店の、ライフスタジオでの写真が、5年後、10年後、20年後に見返される時に、「価値ある写真」として「ひと」の心を揺さぶる瞬間を夢見て、私はカメラを持ち続けています。
いつだって、被写体を目の前にphotogenicの予感にわくわくし、自分の技術不足に絶望し、悔しさを経てまた写真から喜びを得ます。私自身にとっても、それは「写真」にまつわるかけがえのない「価値」であると思っています。


Life studio No,17
Shinyokohama
Photo by Reiri, / coodi by Yonezu
 

この記事をシェアする