フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
Emotion,
投稿日:2015/12/31
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あなたが大切だと思うものを、私も大切にとっておきたい。
私がシャッターを切る理由は、これに尽きるのかも知れません。
この瞬間、1/100秒のこの瞬間が、いつか遠い未来で宝物になるかも知れない。そんな可能性がちょっとでもあるなら、もう撮りに戻って来られないのだから、記録しておかなければならないと思うのです。
こんなに小さい新生児の姿も、ママの微笑みも、この日の光も、すべてはカメラを構えたその瞬間から過去になっていきます。
こんなに綺麗なもの、可愛いひと、その姿。
『生きている』からこそ、変化して、成長して、過ぎ去っていくのだけれど、その瞬間の記憶は印象だけが残り、上書きされ続けるうちにそれすら曖昧になっていきます。
だから、『思い出』という主観を『写真』という記録にしたくなるのです。
ライフスタジオの写真は、『美しい思い出の記録』です。
私たちは、写真を撮りに来たお客様に、商品としての写真を撮ってお金をいただいて終わるだけの撮影はしていません。『思い出』はその時過ごした空間のすべてが構成する記憶であり、その時の出来事、そこにいた人、その時の温度、匂い、感情…そういった様々なものを含んで作られる、客観的なものを受け取った自分自身の主観です。『美しい思い出』には、そこに共にいた人との共感や信頼、楽しみ、愛情、等の心が揺れるような感情の昂りが必要であり、私たち撮影者は、そこにおいてはお客様の『美しい思い出』を構成する一部でもあります。
『写真館に写真を撮りに行った』という、行事としての行為もまた一種の『思い出』ではあるでしょう。しかしそれが、『美しい思い出』になるかどうかは、そこで心が揺さぶられるような昂りあったかどうかではないでしょうか。
私たちは、ここに来た子どもたちに、そのパパやママに、『美しい思い出』としての時間を楽しんでいただけるように、関係性を構築します。『スタジオに来たお客様』と『スタジオのスタッフ』、ただそれだけで終わる商業的な関係では、そこに感情の昂りが生まれることはないでしょう。
私は『わたし』として、お客様として出会ったファミリーはその『ひと』として、その時一緒に過ごす時間を共に楽しめる関係性を作ること。それが、私たちの撮影をより自由にし、価値を作ることに繋がっていくのだと思っています。
私には子どもがいませんが、ライフスタジオでカメラを持って4年、毎年撮影させてもらっている女の子がいます。
初めて出会った時は、彼女は1歳でした。彼女はニコニコでご機嫌で、撮影をしているうちに彼女の生まれた時間を迎え、カメラを構えたままバースデーソングを歌っていました。
あの時は、つかまり立ちがやっとだった赤ちゃんの姿から、4歳になった彼女の姿を想像することはできませんでした。しかし、今こうして思い返す時に、この4年分の彼女と彼女のパパさんママさんとの撮影の思い出が、いつも鮮明に蘇ってきます。そして、1歳の時の写真がより価値を持つように感じます。
もう、彼女の歯は生えそろっているし、自分の足でしっかり立って走ることもできるし、私とお話もできます。もう、あのよちよち歩きだった頃の彼女に会うことはありません。その変化と成長を喜びながら、それでも昔一緒に過ごした時間を、その時の姿を、思い出を、確認して振り返ることができるのが写真であって、私はそれを残せていて良かったと、本当に思うことができます。
だからこそ今、毎日Babyたちの写真を『美しい思い出の記録』として残すことに、本当に真摯に向き合っています。
撮影が始まれば、今この瞬間に、このBabyの、この家族の思い出を残せるのが自分であることのプレッシャーを感じながら、それでも今自分が感じている写真の価値を、未来へ繋げたいと願っています。
変わっていくもの、留めおけないもの、その今だけの姿を、記憶と共に記録するという価値。それは、『美しい思い出』を『美しい記録』として残すということです。
『美しい記録』は、関係性によって作られたこの空間を、カメラという機械の様々な機能・効果を用いて、普遍的な意味を持って表現しなければなりません。『美しい記録』、それには唯一の正解はありませんが、少なくともそこに感情の昂りが感じられるものが、そうであるのではないかと思っています。
そして何より、『美しい思い出の記録』は、撮影者である私にとってもそうなのです。
この日の光も、この小さな赤ちゃんの姿も、ママの微笑みも。カメラを構えた私の感情の昂りも、その様子にパパさんもママさんもずっと笑ってくれていたことも、そのすべてが、この日の記憶を構成し、『美しい思い出』となります。
私は彼らの思い出の一部であり、彼らの撮影が私の思い出でもあります。
相互に感情の昂りを共有し、共感し、同じ時間を共に過ごした関係性が、『美しい思い出』という記憶になって、写真と共に残る。
あなたが大切だと思う、その存在を、私も大切にしながらシャッターを切ります。それは、とても幸せな時間であり、幸せな記録だと思うのです。
Life Studio No,17
Shinyokohama
Photo by Reiri, /coodi by Yonezu
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