フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
『写すために』
投稿日:2015/6/30
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photo by Ryo codi by Kaori in Yokohama Aoba
私たちは日々、カメラマンとして毎日お客様の前に立ち撮影を行います。
期待に応えるため、期待以上の物を提供するため。自分の思いを伝えるため。 理由は皆様々だと思います。
私個人としても写真を撮る理由は沢山あります。単純に写真が好きと言う気 持ちとそれに伴って出て来る向上心。
そして、提供する物である限り自己満足ではなく、相手の満足ももちろん大切に考えています。
知識や技術の共有は大変困難です。特に写真など感性の物は必ずこれが正しいと言う定義を持つ事が難しく 感じます。
しかし、私たちが写真館のプロカメラマンである以上、有る程度の正解を規定して行かなければいけません。 全てにルールを設けてしまえば、写真はたちまち命を失い、誰であろうと同じ結果物を生む事になります。 その結果、良い物への追求を諦めてしまいます。
私たちは何でお客様を喜ばせているのか、何で自分自身満足を得ているのか。 この単純であり、最も難しい問いを解いて行くために写真と言う技術を一度自分の中に落とし込む必要が有ると考えます。
『カメラマンは時に、気持ちに技術がおいて行かれてしまう』
こんな事を感じる事がカメラマンならば皆一度は有ると思います。 たとえば自分にとって、相手にとって大切な瞬間が、目に見た光景よりも美しく切り取る事が出来なかったり、もっと良く写せたのではないかと後から漠然と考えたり。
自分の想像を写し込む事が出来ないと言う現象。しかしこれには大きく分けて2パターンの原因が存在しま す。
一つはもっと良くしたいと言う気持ちから来るもの。 そしてもう一つはブレたり、ピントが外れたりといった写真として成り立たない技術面での失敗。
向上心は大切で、よりい良い物を求める気持ちは絶対的に大切な物ですが、明らかな技術的な失敗は最ももったいない結果です。
写せるはずの物が写せなかったと言う結果はカメラマンとして最もさけなければいけません。 これは確実に本人も相手も得をしない単純な失敗だからです。
したがってカメラマンに最も必要なのは向上心を常に持つ事と、基本的な技術、知識をしっかりと持つ事だ と私は考えています。
今回の写真については少し技術的な面を書いていきたいと思います。
S(Tv) 250/1
F(Av) 2.8
ISO 800記録画質Mファイン(約980万画素)
ピクチャースタイル ポートレート
使用レンズ:キャノンEF70-200
機体:5DMk3
ライト:室外からの自然光メインは逆光となる窓明かり。
上記がおおよそでありますが、この写真が撮影された時の環境です。
私たちは無意識にも、意識的にもカメラという機会の中にある幾つもの機能を使いその一枚を写しています。
そして本来は、写真そのものに意図があるように、設定の一つ一つにもその意図に向かうための理由が必要となる。
ただ単純に露出をあわせたいのであれば数値組み合わせ次第でいくらでもにたような明るさが撮影できるでしょう。
その瞬間をより美しく写しには細部に至るまでの細かい計算がが必要です。
S値は何故250/1なのか。
このシャッター速度はある程度の動きであれば被写体ぶれを起こさずに止めて写す事が可能です。
特に被写体である子供たちが座っている状態でのおおよその行動であればなおさら写しやすい状況となります。
この一枚のようにお互いに顔を寄せる早い動作の中でも、顔がくっついた瞬間の減速するタイミングをみれば十分に止める事ができる設定です。
写真のイメージを固めた瞬間から行動を想定した結果色味かボケ感との調和をみた結果この数値を選択しました。
F値は何故解放にしたのか。
望遠レンズの魅力の一つは長い焦点距離を利用したそのボケ味にあると思います。
2.8という数値は被写界深度が浅く、リスクはありますがこの写真のように150ミリ以上の距離感で被写体が奇麗に並んでいるときはさほどリスクは感じないで写す事が可能です。
自分のポジションから被写体までの距離にある程度余裕を持たす事により、被写界深度も少し深くかせぐことが可能だからです。
逆光での撮影の場合絞りを空ける事により、輪郭がボケて全体的に柔らかい雰囲気を演出する事が可能です。
窓から差し込む光などで写す場合の手法としては美しく見える方法の一つだと思います。
二人のイメージやシチュエーションから撮影者としてこの柔らかい雰囲気を選択した結果の設定です。
ISOについて。
今回は800で撮影された写真です。
感度は数値を上げすぎればノイズが発生し、写真が荒れてしまいます。
企画上、ノイズの発生無くハイキー部分ローキー部分ともに細部を美しく写すのは400までといわれていますが、実際の使用感だと5DMk3ではISO1000以上から少しノイズを感じます。
今回の設定に至る理由としてはその環境で得られる光量にたいして、上記シャッターの設定と絞りの設定を実現するために必要な感度だったと説明できます。
そしてここからは私自身の感想ではありますが、ピクチャースタイルをいずれかの設定にした際、カラーバランスの影響を受ける部分が高感度の方が強くでる傾向を感じます。
今回の写真のように強めの逆光での撮影の場合、ハイライトにその他の色が飲まれないようにポートレイトモードで撮影します。
その際にわずかにでもその効果をよく反映させるための感度設定でもあります。
室外と室内の露出差が激しく、窓の外が真っ白く飛んでしまえばこの写真は奥行きを無くします。
ポートレート設定にし、感度をやや上げる事でハイキーの中の外の緑をできるだけ濃く写しています。
記録画質については様々な観点から考える事ができるのですが、今回は画質が生む質感の部分を考えていきたいと思います。
一見記録画質と写真の質感はそんなに関係のない物のようにも思いますが、これは間違いなく関係があります。
例えば5DMk3の最高画素数は2210万画素です。しかしこの画素数で写真を写すには記録画質をLファインで写さなければいけません。
そして高画質という事は細部まで線めに写すため、写真の質感はややクリアになり、固めに写ります。
という事はそのようにクリアで高精細な写真を撮りたいときにはイメージが合っているといえます。
では今回の写真の設定であるMファインはどうなのでしょうか。
Mファインの画素数は980万画素となります。
これは機体の最高画素数の半分以下になる訳ですがイメージ的には少しリアルからはなれ『写真』としてみるにちょうどいい物となります。
プリントにも光沢やマットや半光沢の選択肢があるように、撮影段階でもある程写真にイメージをつける事が可能です。
記録画質のM以下は極端に解像度が落ちるため、写真間ではあまり使われる事が無い。
結果的な完成度を落とす事無く、カメラの機能がうむメリットでメリットをうまく利用できてこそ写したいものを初めて写せるのだと思います。
毎日のように私たちは写真を写しますが、その写真自体も奥が深く、対する被写体である人もまた奥が深い。
でもきっと、難しい物には難しい物がよく似合うのではないでしょうか。
だから私たちは写真で人を写したいのかもしれません。
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