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僕(ら)が写真を撮る理由

投稿日:2015/2/26

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Photo by Rolly.Coordi by Kazumi

僕らが写真を撮る理由はなんだろうか。

人が好きだから、写真が好きだから、子供が好きだから、カメラが好きだから、モテたいから、カッコいいから、誰かに近づきたいから、あなたに近づきたいから。
色々な理由があると思う。
カメラを握る人が100人いれば100通りの理由があるだろう。

じゃあ、自分が写真を撮る理由は一体何なのか。
それは、自分が写真と言うものが嫌いだからだ。正確に言うと、写真を撮られる事が嫌いだからだ。
嫌いと言うと語弊があるかも知れないが、未だに苦手な事に変わりは無い。

デジタル一眼レフが普及したからこその、第三世代の写真館としてライフスタジオが有るが、私が小さいころは当たり前のようにフィルムカメラしか無く、写真を撮るときにはかならず静止してカメラに向かって笑顔でなければいけなかったし、なるべく精細に写真が写っていなければならなかった。と思う。
小学校・中学校と、儀式の様に写真を撮るときにはカメラ目線で笑顔でなければならず、何を笑えば良いのか、対して面白くもないのに「はい笑って~!」なんて言葉に従わなければならず、とにかく写真と言うものが気づいたら苦痛でしかなかった。
もちろん、高校時代の写真なんて3年間で5枚も無いっていうレベルだと思う。
そして大人になって気づいた時には、青春時代の写真が欠落していた。

ではなぜ自分が職業としてカメラマンを、ライフスタジオを選んだのか。
笑ってない写真を撮り、カメラ目線じゃない写真を撮り、あまつさえ顔の写ってない写真を堂々と撮影する写真館だからだ。
こども写真館なのに顔が写ってないと言うのは衝撃的だった。
しかし、なんだか判らないけど自分が子供の時にこんな写真を撮ってもらっていたら、きっと写真を撮られる事に対する抵抗は今よりももっと少なかったんじゃないか。と思う。
もしも、笑顔じゃなくても良いんだ。顔が写ってなくても良いんだ。と思える人が増えたら、自分と同じように過去を振り返るときに写真が無く、ほんの少し悲しい気持ちになる人は減るんじゃないだろうか。
そんな理由で第三世代の営業写真館で働きたいと思ったのだ。


話は変わるが、写真撮影、特にポートレートに於ける一番大切な要素はなんだろうか。
光や構図など、写真の出来に左右するハード的な物だろうか。それとも、コミュニケーションや関係性などのソフト的な物だろうか。
人それぞれの答えがあると思うが、自分にとって大切なのは後者の方だ。

営業写真館と言う事業の社員である以上、綺麗な写真を撮る必要は絶対的に有るし、カメラマンとして、技術的に綺麗な写真を撮る技術と言うのは持って無ければならない。
しかし、綺麗な写真さえ撮れればそれでいいのかと言うとそうではない。
いつも自分がプライベートでモデルさんを捕まえて写真を撮るときに念頭に置くのは、「その写真を撮る」と言う行為を通して、被写体がより自分の事を好きになれるか。である。
極端な話、楽しく撮影出来たらオッケーなのだ。

技術は無くても良い写真は沢山ある。親の愛が詰まった一枚には、例え技術的には勝っていても他の部分ではきっと全敗なのだと思う。
だからこそ、撮影の時には被写体に向き合い、写真に向き合い、覚悟と信念を持ってローリーで居るのだと思う。


この写真は子供の顔がほとんど見えないし、明らかに笑ってないし、前ボケに光が乱反射を起こして明瞭な写真でもない。
彼女の75カットは沢山の笑顔があったが、それでも顔の写っていない写真は撮りたかった。
楽しい撮影で写真を撮られる事を好きになって貰えるように努力はしたけれど、いつか彼女が写真を撮られる事に抵抗を感じたりした時に、ふとアルバムを見返したタイミングでこの写真が目に入って、僕が写真を撮る理由と同じように、何かを感じてもらえたら。と言う思いを込めて。

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