フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
『心帰る場所』
投稿日:2015/1/28
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Photo by Ryo / Coordinate by Misato
in Yokohama Aoba
町の中であたりを見渡せば必ずと言っていいほど写真が目に入ります。
看板や広告、お店の中に展示されているものなどその存在は様々な方法で私たちの目に入ってきます。
少し意識してみるだけで、私たちの生活の中には写真があふれている事に気がつきます。
動画とは違い、音も無く、見た目にも動かないそれは何故、このように求められるのでしょうか。
モニターが無いとながせない動画に比べ、張り出すだけで何処でも見れる写真は確かに便利なため、需要が有るのも納得できるのですが、それだけの理由ではなく、見ている人に強くインパクトを与えるツールとしても効果が高いからだと考える事が出来ます。
動画は一連の流れを時間をかけてみなければその内容を理解するのは難しい。
しかし、写真はその一枚から短時間で強い印象を受けます。
従って見る者に対しても負担が少なく、動かないその条件から対象の想像力すらわかせてしまうのが写真の力だと思います。
写真は動画より歴史も長く、昔から使われてきた物です。古くから現在まで続く物は習慣となり、生活から切っても切り離せないものとなります。
写真館に訪れる事もまた、人々に写真を残す習慣が有ったからできた文化でもあります。
もちろん写真に興味が無く、写真館などいかないと言う人も多く居ますが、全体的に見れば何か記念の時に写真を残す人もかなりの割合で居ます。
広告にもなり、思い出を残すものとして使え、手軽で使いやすいから皆写真を必要とするのではないでしょうか。
最近ではデジタルカメラの普及により、更に写真が身近な物になりました。
大人から子供までがカメラを簡単に扱い、日常生活の中でも、旅行などでも皆がカメラを利用しその日を記録しています。
カメラの性能も日々発展し、一般ユーザー向けのカメラでさえ私たちが技術で表現している物を性能としてカバーしている物が増えています。
カメラの進化、それは使用しやすく機能的な発展はもちろん、結果物である写真自体が美しく写るように変わっていっています。
より美しく、それを条件として変わってきた写真。
プロが撮影していたような物が一般の人も撮影できるようになり、プロは今まで以上美しさにこだわり、表現の限界に挑戦し続けています。
私たちは写真館としてお客様の記念を記録し続けています。
しかし、写真館は人と人とのふれあいの場でも有るため、単純に写真の見た目の美しさを求めるべきではなく。
撮影環境はもちろん、一枚の写真に残す『記憶』も良い物を残さなくてはいけません。
写真の魅力の一つは、撮影された日の事を記憶の中から思い起こせる事です。
動画のように音、動きが無いため、その日の印象から見る人、一人一人がその日を思い返す事が出来ます。
見た目に素晴らしい写真であっても、撮影された日の記憶が最悪の物であった場合、その一枚は価値を無くしてしまうのです。
だから、写真館は記憶も大切にしなければいけません。
写真の美しさを残したいのであれば、その写真に残る記憶まで美しい物でなければ本当の意味で良い写真は残らないのだと感じます。
写真とは何故こんなにも不完全で、安定しない物なのだろうか。
この仕事についてから写真の事を考えるたびに思います。
たとえお客様が喜んでも、自らの向上心からか、自分自身はもっとこのように出来たのではないかとその一枚に満足しない事も有れば、自分自身が納得した写真でも、お客様は他の写真に感動していたりする物です。
でも、それが面白さだと私は感じます。価値観の違いを感じなければ写真も変化する事は無く、ある一定の物で自分自身が満足し、写真から外の感動に捕われ、写真単体の価値を無くしてしまう事にも繋がりかねません。
有る一定の技術を手に入れた瞬間、気持ちに走り、技術的な向上をおろそかにしてしまう。これがプロカメラマンとして最も有ってはいけない状態だと思います。
お客様と繋がって行くには人間関係も重要ですが、私たちとお客様は写真を媒体に繋がった訳ですから、提供できる物の質を常にあげて行く事は私たちの使命であると考える事も出来ます。
この考え方次第で白にも黒にもなる不完全で安定感の無い『写真』
形は有るのに無いようにも思えるこの存在は、私たちに幾度となく考える時間を与えてくれます。
写真とは人と繋がるコミュニケーションツールの一つでもあり、自分が社会と繋がるツールであり、人へ感動を提供するものでもあります。
この全ての要素は人に成長の機会を与えてくれます。
見つからない物を探し続ける楽しさ、だから写真は飽きないのかもしれません。
私が写真を撮る確かな理由は、今日出会う人に感動を与えたいから。この先の未来この一枚が良い思い出として残したいから。
今このように毎日素敵な人たちに出会える事に感謝の気持ちを忘れないように。
彼女は将来モデルになりたいと言っていました。
20年後この写真を見ている彼女は夢を叶えモデルなのか、それとも素晴らしい人生の中でまた新たな夢を手にしているのか、向かっているのか。
この写真は既に存在し変わらない物ですが、人の人生はいくらでも変化して行きます。
昔の写真を見返すとき、そんな時はだいたい思い出に心を休めたいときだったりするのかもしれません。
その時にまたこの写真が背中を押してあげられますように。
人の心の帰る場所、それが過去の記録であってもそんな場所を記録し、残せる事は私にとって幸せな事です。
撮るのも人、そして撮られるのも人。
あなたが欲しかったもの以上の一枚を。それを提供するのが私の写真でありたい。
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