フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

Classical Heroine

投稿日:2014/9/27

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瞳が印象的な小さな女優がやって来た。
しかも、往年の大女優のような、気品を感じさせる子だった。

兄のことが大好きで、見つめる眼差しが心の底から嬉しそう。
その雰囲気がとても微笑ましく、一通り仲睦まじい姿を収める。

「この2人に何を演じてもらうのがいいだろう。」
そんな風に考えを巡らし、最後のシーンに車を選んだ。


私の頭の中にあったのは、
ローマの休日の車のシーンである。
白黒の世界で、オードリーの目がキラキラと光る。

涙無くしては見られないあの名シーンに、
この2人との別れが近づく私のうら寂しい気持ちを重ね合わせた。


普段は元気な印象で登場することの多いミニクーパーが、
クラシックカーとしての持ち味を生かした舞台になる。

夕暮れが近づく時間に、後ろの窓から優しく射し込む光。
革張りのシート、エナメルの靴、パールのネックレス、
そして、兄と一緒に微笑む彼女の目がキラキラと輝いた。

これらのツヤ感が、もともとあった彼女の気品をさらに引き立て、
さらにモノクロ映画のワンシーンのような雰囲気を演出したように思う。


頭の中にあった、大人の儚く切ないシーンではなく
終わることのない2人の関係がここには描かれた。

そのほうがいい。


彼女は女優ではなく、まだ3歳の女の子で、照れる兄はまだ5歳。

そして私は映画監督ではなくて、ただのカメラマンなのだから。


私が用意できるものは限られている。
ほんのちょっとの妄想と、それにどう答えが返ってくるかを待つ時間だけだ。


Coordinate by Yuco
Photo by Nakaji
@tokorozawa

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