フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

経歴

投稿日:2014/9/17

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被写体を動かす力が大切だと誰かが言う。
被写体を動かすためにどんなアプローチをし、被写体をどう動かしたいのか、頭の中でぐるぐるぐるぐる考え組み立てる。
そしたら実際に動かし、顔の向き、目線、手足の位置を自分の意図に近づくように導いていく。

この写真は、一切そのように導いていない。

この写真は「男臭さ」をプンプンと匂わせている。それは撮影者の意図したものであり、説明が出来なければならない。

まず、その渋み溢れる顔つきに男らしさを感じずにはいられないだろう。

注目するは、上下身に着けているインディゴブルーのジーンズ&シャツ。

ジーンズってのは実用的で、リラックスとカジュアルの空気を持っていながら、主張と抑制とを併せ持っている。

またジーンズはその人の経歴であり、その人が歩んできた日常、それがその人にしかない人生観を主張させる。

彼は若干7歳、まだまだ人生歩みはじめたばかりの子どもに過ぎないかもしれない。

そうだとしても、この写真を見たとき、若干7歳の男の子には見えない。

それは、その色が落ちたジーンズとシワなどが感じさせるジーンズからの記号が、彼のこれまでの経歴を想像させる。



彼のまなざしは、どこへ向かっているのか。

撮影者の方を見つめているようで、そうではない。画面の外にある人物の何かを見つめているのか。

おそらく彼は何を見るわけでもなく、まなざしを何かに向けている。撮影者への意識はほとんどない瞬間だった。

そこに何となく置かれたアンプの上に浅く腰を下ろした被写体である彼の体勢はとても人間らしく、自然で少々けだるい雰囲気をかもし出している。

頭に違和感があった彼は右手を頭へ持ってゆき、掻き出した。けしてこちらの意図したものではない。

撮影も終盤になり、彼の集中力も切れてきた頃であった。息つく間も欲しい状態であったであろう。

その彼をどうにか会話や遊びで楽しく笑顔溢れる元気な写真を作ることもできただろう。しかし、そうはしなかった。

撮影をしながら、彼のふとした瞬間におこる無意識の仕草・表情の魅力を感じていた。

だからこそ、その瞬間を転機を消してしまわないように、遠くから静かに見守ることが必要であり、

さらにその渋み溢れる表情と仕草に見合う、コーディネートが必要であり、不適切な光や構図などで、被写体の魅力を損なってはならない。

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