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ストーリーメイキングは必要か。

投稿日:2018/3/4

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Shinyokohama
Photo:gomei
Codi:Yukika Hujimoto



 
 
ストーリーメイキングという言葉をまた使うとは私としては、不思議な話で20代前半に芝居に熱打っていた頃には毎日行っていました。即興演劇と聞くと何となくイメージはつくと思います、もう少し砕けて言うとエチュードです。
ストーリーメイキングを行うには大きく分けて2つのやり方があります。何もない空間で人間の感情だけを定めて作る方法が一つ、パントマイムなどがその例です。もう一つはシュチューションだけが決まっていて、感情を作っていくやり方が一つ、例えば笑福亭鶴瓶さんが行っているスジナシという番組がその例です。
この二つはスタートが異なるだけで、やっている事にそう大差はありません。物が決まっているのか、心が決まっているのかだけです。
どちらも決められた条件からのスタートで、演者の価値観から生み出される演技によって観客達は次第に魅了されて行きます。
初めての場所、初めての共演者と共に、無言の会話をするようにスムースなキャッチボールを行って行きながらストーリーが作っていくことが、即興のストーリーメイキングとなるのです。
 

はて、これはライフスタジオの撮影もそう変わらないのかな。と共通点を自然と感じてしまいます。ほとんどのお客様が初めましてですし、たくさんご利用いただいているお客様ともまだお会いした事が無い方もたくさんいらっしゃいます。
初めての場所、初めての撮影、初めての撮影者と被写体。何ら変わりはないのではないでしょうか。
 


「こんにちは、始めまして。」
だとしたらお互いに相手に対する情報が皆無の為、「この人は大丈夫かな~」と子供から視線を貰う事もあります。当たり前に緊張と警戒心から防衛本能が働くことは仕方のない事です。特に写真の彼は大変緊張しており、表情からいわゆるガチガチだという情報は伝わってきます。さてさて彼との撮影はどんなストーリーが作られていくのだろうか、それが即興ストーリーメイキングの楽しみの醍醐味のような気がします。
 
では話を戻すと、ライフスタジオの撮影は撮影条件がある程度決まった状態にあるところでスタートしますので、スジナシの様な形式に近い事が分かります。撮影の条件とはまずここでは、インテリアと小物。箱という事になります。
目に見える、必ず写真に写る要素です。この要素とうまく付き合っていくことができなければ、ストーリーメイキングとはいう事が出来ないと考えます。
こと写真撮影になるとこれが出来ない状態に陥りやすくなってしまいます。その結果の写真から見受けられるものは、形は綺麗なのだが、なんだか物足りないな…そんな印象の写真と出会ったことはあるのではないでしょうか。
インテリアと小物は、写真に必ず映し出される大きな要素の反面、被写体を活かすための道具であるという側面があります。つまりはこの道具をうまく使いたいから被写体をこのように配置するとしてしまった場合には、主役はどっちだ?と根底的な矛盾点が生じてしまいますね。
道具の適切な使用方法は、人の目的に対して可能にするために使うものです。例えば、喉を潤わしたいときにコップに水を汲む時もあれば、何十年前かにはベラ(淡水魚)を気軽に持って帰れるようにコップに入れて販売がされていたり、近所の公園に行くと子供たちが効率良く砂場を掘るのに使用していたりします。
つまりインテリアと小物も、目的に対して適切に使用されることが無いのであれば、使用価値を失った物体として写ってしまうのです。
 
 
まずストーリーメイキングに必ずなくてはならないものは、人の心の動きです。喜怒哀楽が見えない即興劇に、お金を払いたいとは思いませんね。
ライフスタジオで言う自然な流れというものが、ここに当てはまります。勿論被写体の彼はもちろん役者ではないので、よりリアルな感情が映し出されることは容易に想像がつきました。
 
 
まずは演じる場所をよく観察してみてから決めます。
私自身新横浜店在勤ではないので、インテリアも新鮮な要素です。ジーと20~30秒ほど観察し、光やなんやらの条件が良いところを選びます。すると新横浜店にはストーリーメイキングにもってこいのインテリアがありました。
2Fの海外のバスルームの様なインテリアです。シャワーがあって、タオルがあって、椅子があって。ここら辺で撮影シーンのイメージがぐっと固まる感覚になります。



「いたずらな水遊びのストーリーを作ってみよう。」

 
この時に使用レンズは24-70に切り替えておきます。いたずらな水遊びをしているというテーマを作るにあたって、望遠レンズの特性が一緒に遊んでいる雰囲気を撮るには少々難しいと感じたからです。彼だけの水遊びだと、本当のいたずらになってしまいますから。
共に遊ぶ仕掛けを考えておきます。
これは単純に水かけっこにしました、水遊びで一番楽しいのは相手を水浸しにさせる事だと思います。
本当の水は出せませんが、ストーリーを作るにあたって見えない水を出すことは出来ます。
まずは「服着たままでシャワーだ!」といって彼に蛇口をひねってもらいます。ひねった瞬間に高いテンションでわー!びしょびしょだ!なんて言いながら、見えない水の存在を現場に作る事が第一条件でした。
そこからシャワーノズルを持ってもらい、「お姉ちゃんにもかけちゃえ!」と促します。コーディネーターのユキちゃんも、ワー!やめてーー!なんて言いながら乗って来てくれます。ナイスユキちゃん。
最後は床に置いてあるバスタオルで、「早く拭かないと風邪ひいちゃう!」なんて言葉でまくし立ててみます。
水でびしゃびしゃ→シャワーで水かけっこ→タオルで大胆に拭く
この流れがストーリーメイキングの筋になりました。
 
写真にはシャワールームは写っていませんが、この写真の背景は以上になります。
写真奥の緑のエリアを庭と設定し、無機質な格子を大きく奥行きを感じるように写し込むことで、被写体の仕草と表情に目線が行くように設定し写真を撮りました。
構図は何かというと点構図に近いです。規律的な格子を前に、あえて小さめに動きをメインで撮る事により、写っている面積は少ないが写真に与える存在感を強く出すために、左側にポツンと配置しました。アップの写真になってしまうと、せっかくの動きや仕草を感じづらく、表情先行的な写真になってしまう可能性が高かったからです。
 
あくまでも道具とは、目的に対して適切に使用される事が大切です。
ここでは流れと共に楽しむために「「いたずらな水遊びのストーリー」を作る事が私の目的であり、単純に楽しみたいという感情が彼の目的だったのだと思います。
最後に私の要素をどこに入れようか、遊びながらも目は真剣に色々なものを探します。
爽やかな休日のような、ふわっと包み込んでくれる逆光に私の意図を、最後に込めました。
 


タイトルにある疑問にかえります。
ストーリーメイキングは必要か。
空間と人が一致された写真が良いとされるならば、必要だ。と思います。
そして私は、そこからにじみ出てくる感情は、物と人をくっつける接着剤のような物だと信じています。
 

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