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ノスタルジア -スタートライン[ライフスタジオ青山店 Kuroki Reiri] -189

投稿日:2022/9/6

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『初仕事』を覚えていますか?


私は、よく覚えています。

カメラを持って、ライフスタジオのインテリアの中を見渡して、ファインダーからお客様を見詰めながら写真を撮った、あの時のこと。当時はもちろん「カメラマンとして初めての撮影なんです」なんて言えません。言えませんでしたが、それから何年も経って、「実はあの時がデビューだったんです」と言ってその出会いを振り返ることができる、そんな関係性になりました。

ライフスタジオでの初めての出会いを振り返る


10年前の、3月のことでした。

今はもうないライフスタジオ浦安店での、忘れもしないその撮影。担当させてもらった1歳の赤ちゃんは、なーんか様子がおかしいなと思っていたら38度の熱を出していて、最初のシーンだけ撮って撮影は振替になり、私のデビューは未遂に終わりました(笑)。

当時は、カメラマンとしてのデビュー撮影は最終枠の1歳のBabyというのが定石だったので、改めて該当する予約を探していたら、通りがかった某先輩が「そんなのキリがないからもう明日の撮影に入れば良いじゃん〜」と言い放ち、あれよあれよと言う間に翌日の最終件、2歳の女の子の撮影に入ることになってしまいました。

一般的に言うならば、2歳=『魔のイヤイヤ期』……もちろん撮影においても、コントロールは容易ではない、そんな時期のお子様が私のデビュー戦の相手!!!!という訳でそりゃもう戦々恐々としていたものですが、いざ撮影が始まると、2歳の女の子はニコニコしながらずーっとご機嫌でいてくれました。

私の、カメラマンとして初仕事の75カット。時間は掛かりましたし、拙い荒削りな写真も多かったと思います。緊張しすぎて何を喋っていたのかはさっぱり覚えていませんが(笑)、ファインダーから見たその先の、彼女の笑顔をよく覚えています。狭い浦安店を楽しそうにあっちこっちへ駆け回る彼女を追いかけて、追いかけて、どきどきしながら写真を撮った、あの瞬間のあの熱が、私の『ライフスタジオのカメラマン』のスタートラインでした。
 

毎年撮影来てくれる彼女たちと私との関係


それから、彼女は毎年来てくれて、私は毎回自分から「撮影入ります!」と宣言して入っていました。

浦安店から異動になっても、彼女の撮影は毎年担当させてもらっていました。すくすく成長して、姉になり、彼女そっくりだけどやや気難しい妹と一緒に撮るようになり、そんな春を何度か繰り返しました。浦安店は今はもうありませんが、浦安店でデビューした私が最後に浦安店で撮影したのも、彼女たちでした。基本的には穏やかな彼女たちとの撮影ですが、来店前は毎回もの凄く緊張したものです。初めてカメラを持って75カットを撮りきった、あの日の緊張感と熱を、昂る感情を、否応なく思い出してしまう。でも、それが、自分にとっては悪くない感覚でした。

いろんな撮影をこなして経験を重ねていくと、だんだんと、予定調和になったり挑戦をしなくなったり、慣れに則ってそのまま撮ってしまったり、という悪い側面が出てくることがあります。そういう怠惰な私に、スタートラインに立ったあの日の緊張感を思い出させてくれる、それが彼女たちとの撮影でした。

 

ライフスタジオ浦安店がなくなったその翌年には、当時私が所属していた横浜青葉店に来てくれて、その時にも本当にとても緊張しながら、たくさんの話をしながら、いろんなことを思い出しながら撮影をしました。8回目にして初めての、浦安店以外でのその撮影を経て、そして私は何の疑いもなく、またその次の年の再会を楽しみにしていました。

でも、その翌年に、彼女たちは来ませんでした。毎年春に撮影をするのが当たり前すぎて、「あれ……??」と思ってるうちにまた次の春が来て、その年も予約はなくて、「ひょっとしてもう、ライフスタジオでの撮影は卒業してしまったのかな」と少し寂しく思っていました。

 

そんな彼女たちとの再会は、私が本社に勤務していた時にかかってきた、1本の電話から。

「黒木さん、いらっしゃいますか」と言う電話口でお名前をお伺いして、すぐにわかりました。わざわざ本社に電話を掛けて私の名前を呼んでくれた、ママさんのその声をとても懐かしく聴きました。

そして、撮影に来れなかったこの数年は本当にいろんなことがあって撮影に来れなかったことや、妹ちゃんが小学校に入学するので、また私に撮って欲しいと思ってくださっていることを、話してくれました。

その時の感情は、自分にとってなかなかの宝物です。もう会えないかも、と思っていた、私をライフスタジオのカメラマンにしてくれたひとたちとの再会が、叶おうとしている。また写真を撮って欲しい、そう言われることはカメラマンとして身に余る光栄で、嬉しくて幸せで、そしてあの日の熱を思い出して身震いをするような、そんな感じ。一種の緊張感にも似た背筋の伸びるようなあの感覚は、近年ではそう多く味わえるものではありませんでした。

あの日の『初仕事』から、まだ縁が続いていたことが、ただ、嬉しかった。

 

その電話から季節をひとつ跨いで、私たちは3年振りに再会しました。

その時は、まだ私の状況も流動的だったのもあり、彼女たちのお住まいのお近くで予約を取ってくださった店舗に私が行かせてもらっての撮影になりました。

久し振りに会った彼女たちは、姉は少し思春期に差し掛かっていて、妹はちょっと気難しかったのが嘘のようにひょうきんな表情を目まぐるしく見せてくれるようになっていて、私はそんな彼女たちを新鮮に感じながら、それでも毎年撮らせてもらっていた頃の幼い面影を見つけては泣きそうになるくらい感情的になりながら、シャッターを切っていました。もちろん、モニターの時には耐えられる訳もなく、泣きました。

「次は、れいりさんのいる店舗に行きますね」、そう言って笑うご家族を見送って、桜の咲く道を歩いて帰った、それが去年のこと。

 

そして、今年。

妹の7歳七五三と、姉の卒業記念撮影で、彼女たちは青山店に来てくれました。

ふたり揃っての着物姿を見るのは、浦安店での最後の撮影の時以来。あの時は、姉が7歳で妹が3歳の七五三でした。あの時には、あどけないまんまるなほっぺたを膨らませて何だかやたらとツンツンしていた妹ちゃんですが、今年は最初から大はしゃぎでしたし、姉は姉で思春期らしい『撮られること』への気恥ずかしさも見え隠れしていて、そんな彼女の横顔を見ながら10年前の3月の撮影のことを懐古しました。

どんな仕事でも、『初めて』という瞬間があります。新人なんです、なんて言い訳は通じない『仕事』という現場に於いて、いちスタッフとして先輩たちと遜色ないパフォーマンスを発揮しなければならない。初めてのことだらけでわからなくても、混乱しても、その仕事のゴールまで漕ぎ着かなければならない。

あの時、ゴールに辿り着けたのは間違いなく、彼女が導いてくれたからこそだった。カメラの向こうで笑う、2歳のあの女の子は、今はもうカメラの向こうで少し恥ずかしそうにはにかむ少女になっていて、その面影にまた、あの日の熱を思い出します。

私の『初仕事』からのご縁。ひょっとしたらもう会えないのかも、と思っていたし、それも仕方ないことだと言い聞かせていました。年賀状を送ろうかどうしようか、少し悩んでいたあの秋に掛かってきた1本の電話が、こうしてまた繋いでくれました。

カメラマンになって10年。あなたの写真を撮らせてもらったあの日から10年という年に、またあなたたちに会えて、本当に良かった。着物から着替えてからは、そりゃもう好き勝手にはしゃぎ転がって大笑いしながら、撮影は終わりました。頭の芯がクラクラするような、笑いすぎて楽しすぎて、目の前の人たちが愛しすぎて、昂りまくった自分の熱が心地良かった。

そして私は、そういう自分の気持ちを、このひとたちにはまっすぐお伝えすることができます。10年もの間、写真を撮り続けてこられたのも、彼女たちの撮影をさせてもらったあの日があって、そしてこういう再会があって、その度に私はまた、スタートラインに立ったあの日の熱を思い出させてもらえる。

ライフファミリー


「あなたに会えてよかった」
これはお客様と私たちとの宝物のような出会いの記録。

このかけがえのない関係がこれからも続くように願いを込めた、私たちからのラブレターです。


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