Photogenic
横浜青葉店
家族写真に対する一つの考察について
投稿日:2021/5/20     更新日:2021/5/22
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籾山家との撮影を振り返ります。
いつものように撮影前のカウンセリングを覗きに向かうと、まだ見ぬ子供達の元気な声が廊下まで聞こえてきました。
「スタープラチナ!」「クレイジーダイヤモンド!」「ゴールドエクスペリエンス!」
扉から入りかけていたのをやめて、その妙なワードをこっそりとスマホで検索してみると…
やっぱりそうだ。「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画に出てくる技の名前です。
挨拶をしながら部屋に入ってみると、すでに場の空気は温まっている様子。
子供達3人は楽しそうに遊んでいて、ママパパはその様子を絶妙な表情で見ながら、
コーディネーターのくまちゃんと衣装の相談をしています。
「ジョジョが好きなんですか?」僕が聞いてみると、ママさんが困ったような、でもどこか愛おしそうな顔で答えてくれました。
「そうなんです。私たちはそんなに詳しくないんですけど…」
ここで、ママさんが使った「詳しくない」という言葉が気になりました。
それは「興味がない」とは全くニュアンスの異なるもので…「理解したい」という思いが感じられる言葉でした。
愛する者が愛する物を、自分もまた愛そうと。そう、自然としているのを感じたのです。
それなら、僕たちも一緒に学んでみたい。
「そのポーズは何ていうキャラなの!?」
僕が食い気味に聞いてみると、3人は仲間を見つけたような、嬉しそうな顔で色々教えてくれました。
「これはね…!」
すっかり盛り上がっている間に衣装の相談は終わっています。
撮影についての希望を聞いてみると、「私たちらしい写真が撮りたい」との事。
それを聞いて、頭の中で浮かぶおしゃれなポーズ、おしゃれなインテリア、おしゃれなライティング…
Instagramに載せれば沢山のいいねがつきそうな写真の数々
しかしどれも違う。
大事なのは沢山の人からいいねをもらう為の写真ではなく、
たった一人の目の前の人間からいいねをもらう為の写真です。
私たちは普段から「その人らしい」写真を撮ることを心がけていますが、
「良い」写真を撮る上で「普遍性」を追求する事はその対極の概念となる「特殊性」を自動的に排除してしまうというジレンマを抱えています。
「普遍性」とは、誰にとっても良いとか価値があるという概念ですが、
家族写真とは、紛れもない唯一無二の「特殊性」の塊だからです。
誰かにいいねをもらう為の写真ではなく、その人自身がいいねをつける事で初めて価値を持つ写真です。
それは例えば、我が子が初めてクレヨンで描いてくれたパパやママの似顔絵に似ています。
誰もが陥りやすい、撮影者の技術や感性を披露する為だけの写真になってしまう事は、あってはならない事です。
もちろん、この対極する2つの概念は両方とも大事なもので、両方を捉え、残していく必要があります。
そこが、他のジャンルの写真とは決定的に異なるポイントなのです。
ならばと、私は提案します
「みんなでやりましょうよ!ジョジョ立ち!」
僕が提案すると、3人は大喜び。
「イェーイ!」「じゃあ俺キラやるね!」「俺ジョルノ!」「俺は?俺は?」
しかし当然、ママパパからは大反対…と思いきや、意外や意外。
よし、と自分でポージングを研究し始めるパパ。
じゃあ、と子供達にポージングを教わり始めるママ。
そしていつの間にか、子供達よりもママパパの方が乗り気になっています。
「もうちょっと等間隔で並んだ方がいいんじゃない?」
「みんなー!笑顔じゃなくてかっこいい顔でいくよ!」
慌ててカメラを構える僕たちをよそに、
みんなで話し合いながら一つの物を完成させようとする様子はなんだか美しく…
「ああ、きっと普段もこうやって家族で一致団結して物事を進めてるんだろうな」なんて
普段の様子が垣間見えた瞬間でした。
それは撮影者が決めた、どんなにおしゃれなポーズやおしゃれなインテリア、おしゃれなライティングでも表しきれないものでしょう。
僕はそんな家族の姿に少しだけ羨ましさを感じながら、シャッターを切りました。
初めのたった1枚だけ。
ジョジョ立ちポーズで写真を撮り、家族が一つになったのを確認してから改めて自己紹介をしました。
「改めて、カメラマンのほっしーです!」
「改めて、コーディネーターのくまちゃんです!」
「そんなわけで今日の撮影始めていきますー!よろしくお願いします!」
こうして今回の撮影はスタートを切りました。
撮影前の時間は、ご家族の観察と、相談、そして提案。この過程で信頼関係を深めていく為の時間です。
時には家族全員を巻き込むような話をしたり、家族全員が盛り上がるような遊びをしたり。
そうして家族が一つになった事を確認してからようやく撮影を始めます。
私にとって家族写真とは、来店された時からすでに始まっているのです。
◆
その後も様々なインテリア、衣装で撮影を進めましたが、
終了後、全ての写真をご覧いただいた上で、今年は最初の一枚を家に飾りたいと言ってくれました。
お帰り頂いた後のご連絡では、「私達らしい家族写真が撮れました。ありがとうございました。」というお言葉も。
それは表面的な、ただポージングがおもしろいとか、この時ハマっていたものだからとか、そういうものではなくて
もっと深い部分で家族が繋がった事に対する感傷なのでしょう
そして家族はこれからもこの写真を見て
あの時みんなで一つになったこと
笑い合ったこと、スタッフとのやり取りまで全て
この写真を見返しながら思い出すのかもしれません。
その時こそが、私たちが一番、幸せを感じる瞬間なのです。
Photo :Hisho Morohoshi
Coordi:Takuma Oto
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