Photogenic


横浜青葉店
scrollable

Thinking of you,

投稿日:2019/9/20

2126 2

 

Photo&Write by Reiri Kuroki

Coordi by Natsuko Takagawa

 

@Yokohama Aoba

 

 

 

モニターが始まるタイミングで、彼はいそいそとソファのセンターに陣取って、

「さ!みんな!!おれのカッコイイ写真見ようよ!!!!」とキラキラした笑顔で叫んでいました。

 

そんな彼は、撮影前のカウンセリング中に10歳の女の子用のドレスを着て(花まで持って)待ち構え、挨拶に来た私を膝から崩れ落ちさせた男なのです。

しかし勿論、もう小学5年生である彼にも幾らか社会的な立場があるでしょうから、そんなエピソードを披露させてもらった以上、私は彼の名誉回復の為にもそのカッコ良さについて語る責任があります。

 

そう、彼は、カッコイイ男なのです。

 

 

 

毎年、夏の暑い盛りに彼はやって来ます。

美男美女のパパさんママさん、体格的には彼に迫りつつある次男、そして最強無敵な末っ子妹と一緒に。

 

ここ数年、年に一度の撮影をご一緒させていただく中で、毎年彼を見ていました。

基本的にめちゃくちゃ明るくて、とても元気で、人を笑わせてくれるような、そんな男の子です。

初めて会った時は、とにかく妹Loveなお兄ちゃんでした。

そして今も、妹Loveなお兄ちゃんです(例え、その妹が兄たちをどつき倒しては辛口なツッコミでぎゃははと笑う最強無敵な末っ子女子として成長を遂げているとしても)。

年頃の男の子らしく、ふざけることも大好きだし、ひとりでゲームに熱中したりもしますが、ゲーム中でもスタジオに宅配便が届けばスタッフを呼びに来てくれるような、礼儀正しくて素直な少年。

多分彼は、周りをとてもよく見ていて、大人の会話もよく聞いていて、的確に状況把握をして動いているように見えます。

それはひょっとしたら、家族の中にいる時に彼が見せる『長男』という相対的な関係性における役割的なもの、なのかも知れません。

父を慕い、母を助け、年の近い弟とは男兄弟ならではの友情のような連帯感があって、妹へは無条件の愛情があって……このご家族と出会ってから4年、振り返ってみれば彼の印象は、年齢に関わらず常にそんな感じでした。

 

そして、ふと、気付きます。

私はこの4年間、今回で5回目になる撮影のこの時まで、彼ひとりの撮影をしたことがなかったってことに。

今まで私がカメラを通して見てきた彼は、家族と一緒に、弟と妹と一緒に、『兄』としてそこにいる彼の姿。

今回は彼のハーフ成人式の記念で、

「おれのカッコイイ写真、撮っちゃうよー!」と張り切ってスタンバイしている彼の様子は、私にとっては何だか新鮮でさえありました。

今年で5回目。でも、『兄』でも『長男』でもない、彼自身、彼ひとりに真っ直ぐ向き合うその撮影は、私がよく知る明るいご家族の中の長男、ではなく、ひとりの10歳の少年との、新たな出会いのようでした。

 

 

キーワードは、『カッコ良く』。

だってもう、10歳ですから。子ども扱いはしません。1対1で、向き合います。

ちょっと狭くて暗い場所から、その撮影を始めました。

『カッコ良く』のイメージは多岐に渡りますが、横浜青葉店の中でそのイメージを演出する光や影を求めた時に、この日のこの時間、条件を作り出せそうな場所は、ここでした。

光は限定的なスポットライト。暗い色の漆喰の壁は光の拡散を抑え、印象を操作します。

敢えて、彼自身には光が直接当たらないようにして、背景との露出比を作りました。表情がわかる程度にアンダーな露出設定は、スポットライトで照らされる背景から彼を浮き上がらせます。

スタンダードでいくならば、光はメインとなる被写体に注がれるものであるのかも知れません。しかし今回は、彼を『カッコ良く』表現する、という目的に於いて、光と影の与える印象を利用して、シルエットでその存在感を際立たせました。

カメラ位置は低く、カメラを見る彼の姿勢と表情は至極ニュートラルに、背景は広く、線を活かして構成します。

写真の中で、(面積的な意味で)彼自身の占める割合は、さほど大きくはありません。しかし、その光も、線も、ややアンダーな露出設定も、全ては彼の為にあります。

そこに、彼がいる。『長男』でも、『兄』でもない、ひとりの10歳の少年。

彼は、自分ひとりに向けられるカメラのレンズをしっかりと見詰め返してくれました。その眼差しは、カメラを持つ私に一定の信頼を寄せてくれているように、思えました。

ちゃんと、かっこ良く、撮ってくれるでしょ?

そう言われているようで、私は思わず笑いながら、ファインダーの中の彼に集中していきます。

 

もう5回目の撮影なのに、初めて出会うような『あなた』を、見付ける。

これだから、ひとの撮影は面白い。

 

彼は、とても、カッコイイのが似合う男なのです。

 

 

私が撮った写真は、『おれのカッコイイ写真』として無事認定されたようでした。

あなたが、『あなた』という存在を肯定できるような写真を撮りたい、というのが、私の撮影の命題です。いつも『長男』として、『兄』として頑張ってくれている彼自身が、『あなた』というシンプルなひとりのひととして『この写真の自分は、カッコイイ』と思ってくれること、は、正にその命題に、沿うのです。

 

あなたの為の、あなたの写真。

知っているようで、まだまだ知らない、新たな『あなた』を見付ける為に、私はカメラを持っていたいと思うのです。

 

 

 

 

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それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
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